今回ご紹介するのは、今やサステナビリティ報告の世界標準となるガイドラインの発行機関として有名なGRI(Global Reporting Initiative)の生みの親、Bob Massie氏のインタビュー。
GRIは、UNEP(United Nations Environment Programme)の協力のもと、アメリカに本拠を置く2つのNPO、Ceres(Coalition for Environmentally Responsible Economies)とTellus Insutituteによって1997年に設立された。Bob Massie氏は、1996年~2002年までCeresのエグゼクティブ・ディレクターとしてGRIの設立に携わった人物だ。
GRIは1999年にサステナビリティ報告に関するガイドラインの草案を公開し、2000年6月にはGRIガイドライン第1版を発行、その後もガイドラインのバージョンアップは続き、最新版は2013年5月に発行されたGRIガイドライン第4版(G4)となっている。
今回は、GRIが生まれるまでの経緯とエピソードについて、同氏のインタビューをもとにご紹介する。
Origins of GRI(GRIが生まれたきっかけ)
Bob Massie氏がCeresのトップを務めていた1996年~97年頃は、多くの企業が自社の企業活動が環境にもたらす影響を測定する方法について考えていた。しかし当時は統一された測定基準もなく、NGOと企業では異なった考えを持っていたので、人々はそれらをまとめあげることに苦心していた。
同氏は投資家やNGO活動家、企業など様々なステークホルダーからヒアリングをした結果、求められているのは環境への影響測定や持続可能性の開示のための普遍的で優れた仕組みだと分かった。そしてこの考えが後のGRIへとつながっていく。
GRI Takes Off(GRIの立ち上げ)
CeresのGRIへの取り組みは、まずITT Industries(アメリカの国際電話通信会社)との対話から始まった。同社は「サステナビリティに関する重要な原則や報告はアメリカに集中しているため、もしあなた方がグローバルに適用できる共通の情報開示フォーマット作成に取り組んでくれるのなら、とても高く評価するだろう」と述べたという。
そのため、最初のアイデアは"Global Report Initiative(グローバルな報告に関するイニシアティブ)"の作成に取り組むというものだったが、"Report"という響きはとても静的なものに聞こえたため、"Reporting"という名前にすることにしたという。現在進行形の”ing”が、このイニシアティブは常に進化し、発展し続けるというものだということを示しているとのことだ。
そしてGRIは、”Global”というその名を体現するべく、アメリカからだけではなく世界中から人権活動家や環境リーダーなど様々な人を集めて組織された。その後、Ceresにおける5年間の立ち上げ期間を経てGRIは独立した組織としてスピンオフし、現在はオランダのアムステルダムに本拠を置いている。
こうして生まれたGRIは、現在では世界60ヶ国以上で4000以上の企業が活用する国際的なサステナビリティ報告ガイドラインへと発展した。オーストラリア、ブラジル、中国、コロンビア、インド、南アフリカ、そしてアメリカにローカル事務局を設置しており、70名近いスタッフを抱えるまでになっている。
GRI's Impact(GRIがもたらしたもの)
GRIが世界にもたらしたインパクトは非常に大きい。Bob Massie氏がCeresのトップとなった約20年前は、現在のようにグローバルで統一された報告基準を多くの企業が当然のものとして活用する時代が来るとは到底考えられない状況にあった。
同氏の言葉にもある通り、当時は"The whole idea of having an environmental ethic, or measuring your performance above and beyond your legal requirements was considered completely insane.(環境に対する倫理的な価値観を持つことや、法的な要求を超えて企業のパフォーマンスを測定しようという考えは全くもって非常識なことだと考えられていた)"のであり、"Sustainability was considered to be a shockingly difficult thing that no company would ever voluntarily take on as a goal.(サステナビリティは非常に難しいことだと考えられていたので、どの企業も自らそれを目標として進んで引き受けようとは決して思わなかった)" のだ。
しかし、GRIの登場により状況は変わった。GRIによって、企業は自社のサプライチェーンやエネルギー消費、水消費にとってサステナビリティがどのような意味を持つかについてブレイクダウンすることができるようになった。企業は自分達もサステナビリティに取り組むことができ、目標を設定することができ、そして自身を変革することができるということに気づき始めたのだ。
今日では、多くの企業がGRIのフレームワークを採用した結果として「報告」だけではなく実際の「行動」の変革を実現している。Ecomagination(エコマジネーション)というビジョンを掲げ、エネルギー効率上昇や環境負荷低減を経営戦略の中心に据えたことで大きな成長を果たしたGE(ゼネラル・エレクトリック)の例など、GRIは既に数多くの企業に成功事例をもたらしている。
多くの企業がサステナビリティをどのように企業経営に取り込んでいけばよいのかが分からずに試行錯誤していた時代にいち早くグローバルで標準化されたフレームワークを生み出し、計画・行動・評価・報告という明確なサステナビリティ戦略サイクルを数多くの企業経営に取り入れることに成功したGRIは、まさにその名の通りの理念を体現したといえるだろう。”Reporting”という名前に込められた意味の通り、さらなる進化と発展を期待したい。
【GRIについて】Global Reporting Initiative
【関連サイト】Ceres
【関連サイト】Tellus Insutitute
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