原単位(Intensity)とは、一定量の生産物をつくるために使用する、または排出するモノや時間などの量のことを言います。例えば、一定量の生産物をつくるのに必要とするエネルギーのことをエネルギー原単位、一定量の生産物をつくる過程で排出する二酸化炭素排出量を排出原単位と呼びます。原単位の対義語として最近よく用いられるのは「総量(Absolute Volume)」です。総量は、一定量ではなく、ある主体(企業等)が使用する、または排出するモノや時間の全体量のことを指します。
原単位の中でも、気候変動対策や省エネ、省資源に関連する「エネルギー原単位(Energy Intensity)」や「二酸化炭素排出原単位(Carbon Intensity)」は、昨今のガイドラインや法令、企業の自主目標で頻出しているキーワードです。
エネルギー原単位の算出方法
エネルギー原単位は次のように算出されます。
「エネルギー原単位」 =「エネルギー使用量」/「経済活動量」
数式の分子には、電気(kWh)やガス(m3N)、重油(l)、熱量(J)、原油換算量(l)などが用いられます。
一方分母には、製品個数、売上金額、付加価値金額、重量(t)、体積(m3)、面積(m2)などが用いられます。
排出源単位の算出方法
排出原単位は次のように算出されます。
「排出原単位」 = 「排出量」/「経済活動量」
数式の分子には、重量(t)や体積(m3)などが用いられます。
分母には同様に、製品個数、売上金額、付加価値金額、重量(t)、体積(m3)、面積(m2)などが用いられます。
原単位と総量
気候変動対策や省エネ、省資源、環境汚染物質の削減などにおいて目標設定や実績評価をする場合、原単位で計算するか、総量で計算するかは常に議論となる問題です。原単位のメリットは、エネルギー効率や排出効率というものに着目できるわかりやすさです。1個当たりや売上金額当たり等の経済活動量に対した使用量や排出量を削減する活動は、まさに効率改善に向けた取組を意味しており、誰もが活用できるものです。しかし、原単位のデメリットは、効率を改善しても生産量などの経済活動量そのものが増えてしまえば、全体として使用量や排出量が増加してしまうことにあります。そのため、気候変動や廃棄物削減、リサイクルに関する国際的な舞台では、近年、原単位よりも総量で削減目標を設定することのほうが一般的となりました。
このような国際的な動向を受け、海外のグローバル企業の目標設定においても、原単位より総量が使われるようになっています。すなわち、売上や販売個数は拡大しつつも、総量のエネルギー使用量や二酸化炭素排出量を削減しようというものです。原単位の考え方では、効率さえ改善できれば、総量は増えても「仕方がない」という風潮がありました。昨今海外のグローバル企業は、総量削減というさらに高い目標を掲げてきています。
一方、日本では、以前、原単位の考え方が主流です。世界に先駆けて省エネ、省資源に取り組んできた日本企業は、原単位の考え方が馴染んでおり、また他国に対して原単位での努力を続けてきたためです。例えば、2007年に経済産業省が発表した「エネルギー効率の世界比較」では、各国のエネルギー原単位(単位GDP当たりの一次エネルギー供給量)が比較されています。そこでは、日本を1.0とした時、世界平均は3.0。EUは1.9、米国は2.0、中国は8.7、インドは9.1でした。すでに大幅に効率改善を行った日本にとって、他国に対して原単位ではなく総量で目標を設定することが不公平に見えているようです。
参考文献
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