航空分野の国際機関である国際民間航空機関(ICAO)は10月6日、加盟各国が集う第39回年次総会を開催、国際線の分野に、市場メカニズムを活用した世界的な温室効果ガス排出削減制度(GMBM)を導入することで合意。航空業界の持続可能な未来の実現に向けた包括的なロードマップを公表した。これまでICAOでは、(1)燃料効率を毎年2%改善、(2)2020 年以降総排出量を増加させない、の2つを基本原則とした検討を進めてきており、今回その具体策が固まった。
二酸化炭素排出量の算出においては、これまで国際機関や各国政府の努力により、各業界や製品ごとの二酸化炭素排出量の算出方法が徐々に固まってきているが、これまで二国間に跨がる国際線の分野では算出方法が定まっておらず、各国の二酸化炭素排出量の算出や規制の対象がとなっていた。国際線は航空業界の中でも燃料消費量が多く、気候変動における需要な温室効果ガス削減対象でもあったことから、国際線分野のルールを確立する必要性が長年提唱されており、ついに今回国際線分野でのルールの大枠が固まった。
今回合意されたGMBM制度は「CORSIA」と名付けられて、二段階で導入される。まず2021年から2026年の間、自発的に参加を表明する国の航空会社に対して、二酸化炭素排出量が割り当てられ、割当量より多くの温室効果ガスを排出した場合、排出権を購入する義務が課せられる。そのうち、2021年2023年の間は試験導入機関と位置づけられている。すでにこの制度に自発的参加を表明している国は、日本の他、中国、米国、ヨーロッパ諸国、韓国、カナダなどロシアを除くほとんどの主要国を含む64ヶ国で、これらの国の国際線輸送量は世界全体の84%をカバーする。各航空会社への割当量は、2020年の実績が割当量となる。すなわち、2021年以降、2020年実績を上回る量に関して排出権を購入しなければならなくなる。
2027年から2035年の第2段階では、小規模排出国や後発開発途上国などを除く全ICAO加盟国が、GMBM制度への参加を義務付けられる。2030年からは、割当量の算出において、各社の個別の削減努力が段階的に反映される仕組みに移行する。
国際線の運航量は今後も年々増加していくと思われるが、各航空会社への二酸化炭素排出割当量が2020年実績にキャップをはめられたことで、以後の排出量増加については全て排出権購入という経済的な追加費用を負うことになる。そのため各航空会社には、燃費の良い新型機材の導入、排出量を減らすための最適な運航ルートの構築、バイオ燃料の活用が迫られていく。国土交通省の試算では、日本の航空会社合計での負担額は、制度開始当初で年間十数億円、2035年には年間数百億円程度となるという。今回のICAOの発表では、いわゆるコードシェア便の扱いについては明らかにされていないが、今後コードシェア便についても細かいルールが整備されていくと見られる。
ICAO総会はその他、数多くの決議を行っている。その中には、未来の飛行機と呼ばれる超音速型航空機の騒音・振動規制を2020年から2025年にかけて行っていくこともあり、航空会社の持続可能性向上のために、気候変動、事故防止、期待の安全性、国連持続可能な開発目標(SDGs)への寄与など、幅広い取組をしていくことを表明した。
【参照ページ】Historic agreement reached to mitigate international aviation emissions
【参照ページ】ICAO Assembly achieves historic consensus on sustainable future for global civil aviation
【参照ページ】国際航空分野の温室効果ガス排出削減制度への参加を決定
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