国際労働機関(ILO)は8月17日、低所得者層向けのスキル開発及び生涯学習の支援制度の在り方に関する分析報告書を発表。社会全体に薄く広く展開する制度は効果が薄く、低所得者向けにフォーカスした資金支援制度の在り方が必要と提唱した。
同報告書は、政府やNGOに向けて作成されたが、サプライチェーンの人権デューデリジェンスやジャスト・トランジション(公正な移行)のアクションプランを掲げる企業にとっても参考になるものが多い。
低所得者には、農村地域の人々、女性、障害者、少数民族、若者、高齢者、インフォーマル経済労働者等があるが、同報告書によると、公的機関や非営利団体が展開しているスキル開発の資金支援制度にそもそもアクセスできない独自の課題を抱えている。そのため、資金支援制度へのアクセス難易度が、賃金格差が縮まらない要因となっている。
特に、低所得者層は、スキル開発そのものにかかるる直接費用だけでなく、通学費用や機会コスト等の間接費用を負担する障壁が高く、間接費用までを視野に入れた制度設計が必要とした。
施策の良し悪しでは、同報告書は、各国での制度分析を踏まえ、適切に設計された助成金、対象を絞った研修バウチャー、補助金、手当、授業料補助は有効と指摘。また、教育ローンを提供する場合は、負債を忌避する低所得者を支援し、一定の所得が得られるまで返済が猶予される「所得条件付きローン」等の施策が有効とした。さらに最も有効な手段としては、学習成果に応じて資金条件が良くなる制度や、学習後に就労機会を提供するところまでをセットにする制度を挙げた。
低所得者向けのスキル開発を企業に促進するインセンティブとしては、対象を絞った助成金、税制優遇措置、公共調達での条件付け等が有効とした。また、企業が従業員にスキル開発の一部を支給する場合にも、低所得者向けの特別制度を設けることを推奨した。
反対に、対象を絞らない無償の技術・職業教育訓練(TVET)、減税措置、間接・直接コストの両方をカバーしない公共機関による協調融資等は、効果がない可能性があると強調した。
【参照ページ】Employing effective financing mechanisms for skills development can tackle inequality woes, says a new ILO report
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