今回ご紹介するのは、米国ホワイトハウスが制作した気候変動と山火事の現状を伝える動画だ。ナレーターを務めているのはオバマ大統領の科学技術補佐官John Holdren氏。気候変動と山火事がどのように我々の生活を危機にさらすのかを3分間で非常にコンパクトに分かりやすく説明してくれている。
同氏によれば、近年では気候変動の影響により米国の山火事の発生期間がより長期化しており、生態系に対する破壊力を増しているという。つい最近も米国北西部とカナダを襲った大量の山火事により多くの人々が被害を受けたばかりとのことだ。
気候変動がなぜ山火事を悪化させるのかが分からない方も多いと思うが、気候変動は気温の上昇や土壌水分量の低下にとどまらず、温暖な環境を好む病原体や害虫の増殖をもたらし、それらが蝕んだ枯木の増加が、結果として山火事の焚き付けになってしまうのだという。
2014年の5月に発表された全米気候評価報告書によれば、これから夏期はより長く、より暑くなり、更なる乾燥化に伴って米国の山火事頻度と規模は引き続き増すと予想されているとのことだ。実際に米国西部で山火事により焼失した年間の平均面積はここ数十年で数倍に増大しており、気候変動が山火事の増加に影響している可能性が極めて高いという。
また、山火事の被害を受けているのは米国西部だけではない。現在米国で最も山火事が起きている地域は南東部で、その数は年間45,000回にものぼり、現在も増えている一方だ。そして、過去で年間焼失面積が最も多かった8年は全て2000年以降に記録されている。
山火事は直接的に人々の生活や健康を危険にさらす上、森林や野生動物など生態系にも大きな害をもたらす。また、生態系だけではなく住宅などのインフラなども破壊してしまう。そしてHoldren氏によれば、山火事による被害は発生場所だけにとどまらないのだという。
山火事は土壌浸食や洪水、土砂崩れの危険性を高めるのに加えて、山火事により発生する大量の煙は風下の大気質を大きく悪化させ、山から剥ぎ取られた土はシルトになって河川下流の漁場に流れ込み、生息している魚を窒息させてしまうというと同氏は語る。
こうした現状を踏まえ、Holdren氏は「気候変動の影響による山火事の増加は人命、社会、健康、職業、そして貴重な天然資源を危険にさらしている」と語り、現状に警鐘を鳴らしている。
気候変動はグローバル全体で解決するべきサステナビリティ課題の中でも最重要テーマの一つだが、具体的にその悪影響がどのような自然現象となって現れているのかはリアルにイメージできないという方も多いのではないだろうか。
今回の動画はそうした我々の想像にリアリティを与え、気候変動対策が喫緊の課題であることを改めて理解させてくれる。ホワイトハウスは上記以外にも自社サイト内で気候変動対策関連の情報をとても分かりやすく掲載してくれているので、ぜひ一度は見て頂きたい。
気候変動の現状として具体的に今何が起こっているのか、そしてそれは米国に対してどのような経済的損失をもたらすのか、その損失を減らすために米国はどのような計画に基づき何に取り組んでいるのか、全てがインフォグラフィックを用いて見やすく1ページにまとめられている。
同ページ内に掲載されているClimate Summit 2014の演説動画の中で、オバマ大統領は「We are the first generation to feel the impact of climate change, and the last generation they can do something about it(我々は気候変動がもたらすインパクトを感じる最初の世代であり、その問題に対して何らかの対策ができる最後の世代だ)」という言葉と共に、早急に世界全体が一丸となり気候変動問題に取り組んでいく必要性を強く訴えかけている。
国、企業、そして個人として、気候変動に対して今何ができるのか、一人一人が真剣に考えるときが来ている。
【参考サイト】Climate Change And President Obama's Action Plan
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