米環境保護庁(EPA)は、農薬クロルピリホスを食品栽培で使用することを全面的に禁止すると発表した。同日、最終規則を発行し、これまで容認していた「許容量」を撤廃。また、連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法に基づき、従来の許容量に基づき当局登録されていた使用用途も取消すと通知した。
クロルピリホスは、有機リン系の殺虫剤。大豆、果樹、ナッツ類、ブロッコリー、カリフラワー等の栽培で幅広く使用されている。但し、体内酵素分泌を阻害し、神経毒性をもたらすことが確認されており、農家への健康被害が懸念されていた。子どもの神経系への影響の可能性も指摘されている。
今回の措置は、2021年に連邦第9巡回区控訴裁判所が、Pesticide Action Network North AmericaとNatural Resources Defense Councilが提出した使用禁止の請願書に対応した最終規則の発行をEPAに命じたことことによるもの。クロルピリポスの使用禁止は、EUやカナダ等ですでに食品栽培での使用が禁止されており、カリフォルニア州、ハワイ州、ニューヨーク州、メリーランド州、オレゴン州等でも同様の措置がとられていた。日本では、シックハウス症候群対策で住居内での使用が制限されているのみで、その他の使用禁止の法令はない。
前トランプ政権は、クロルピリポスの食品栽培での使用禁止に関し、2017年に申立を却下し、2019年には再審請求も却下。その後、2019年に第9巡回区控訴裁判所に、農業労働者やNGOが合同で提訴。同裁判所は、政府の状況を、連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法違反と判断。EPAに対し、クロルピリホスの許容範囲を安全性の裏付けを持って修正するか、許容範囲を取り消す最終規則を発行し、クロルピリホスの食品用途登録を修正または取り消すことを命じた。
米国では、すでに複数の州でクロルピリホスの食品栽培使用が禁止されていたため、全米での使用量は減少傾向にあった。すでに代替農薬も開発され流通している。
EPAは今回、クロルピリホスの代替品をさらに検討することにも言及。その上で、非食品栽培でのクロルピリホスの使用制限についても検討を開始することを表明した。
【参照ページ】EPA Takes Action to Address Risk from Chlorpyrifos and Protect Children’s Health
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