世界銀行は11月8日、気候変動は人々が貧困から脱出する妨げとなっており、CO2排出削減に向けた努力に加えて早急かつインクルーシブな開発に取り組まなければ、2030年までに更に世界で1億人以上が貧困に陥る可能性が高いとする報告書、"Shock Waves: Managing the Impacts of Climate Change on Poverty"を公表した。
同報告書は、貧困層の人々は既に食糧価格の高騰や雨量の減少による不作、天然災害の発生率増加などの気候変動による悪影響を被っており、このまま気候変動が進むとこれまで取り組んできた貧困問題の進展が水の泡になりかねないとしたうえで、とりわけアフリカおよび南アジアにおいて貧困問題が悪化する可能性が高いと指摘している。
また、同報告書は、貧困層ほど洪水や干ばつ、熱波といった気候変動による災害リスクが高く、災害に見舞われた際の損失も大きいと指摘している。貧困層はより高温で気候変動による食糧生産の減少可能性が高い国に在住しているという。報告書のモデル分析によると、食糧生産は2030年と2080年までにそれぞれ最大5%、30%減少し、それによってアフリカの食糧価格は2030年には12%、2080年には70%増加するという。
世界銀行は報告書の中で、貧困撲滅と気候変動への取り組みを連動させる重要性を挙げており、国際開発にあたっては保険や自然災害の早期警戒システムといった気候変動への回復力を上げるための施策を盛り込むよう呼びかけている。
貧困層ほど気候変動に脆弱であり、その影響を受けやすいという点はこれまでにも度々指摘されてきた。気候変動問題は貧困の問題でもあるのだ。今年の9月にニューヨークで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)においても貧困の撲滅は一つの目標に掲げられているが、そのためには気候変動対応と合わせた解決策が求められる。
【レポートダウンロード】Shock Waves: Managing the Impacts of Climate Change on Poverty
【参照リリース】Immediate Push on Climate-Smart Development Can Keep More than 100 Million People Out of Poverty
【機関サイト】The World Bank
(※写真提供:Left-Handed Photography / Shutterstock.com)
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