米エネルギー・シンクタンクは7月7日、液化天然ガス(LNG)関連インフラの将来性に警鐘を鳴らす分析レポートを発表した。気候変動、社会運動、新型コロナウイルス・パンデミックによる遅延等の影響を受け、LNG輸出インフラのプロジェクトへの熱が、世界的に一斉に冷めていることがわかった。特に日本の官民を上げて推進する液化天然ガスインフラについては、「数百億ドルに及ぶ支援はもはや理にかなわない」と極めて厳しい見方を示した。
今回のレポートを発表したのは、米独立系シンクタンクのグローバルエナジーモニター。環境系のジャーナリストやアクティビストが2008年に発足したシンクタンクCoalSwarmが前身で、2019年に現在の組織名に名称を変えた。
天然ガスについては、化石燃料の中でも二酸化炭素排出量が少ないことが関心を集め、2019年のLNGターミナル設備への建設投資額は、前年の828億米ドルから、1,961億米ドルにまで約2倍に伸長。大幅な成長を記録していた。しかしパンデミックでの燃料価格の下落やプロジェクトの遅延、プロジェクト事業主の最終投資意思決定(FID)の遅れ等があり、2020年6月までに建設計画が進行していた大規模プロジェクト45件のうち、すでに11件が深刻な課題に直面。さらに計画の初期段階にある建設プロジェクトでは、すでにプロジェクトの中止が内定しており、合計20件以上が頓挫する見込みとなった。2014年から2020年までのプロジェクト頓挫率は61%にも及ぶという。
天然ガスは、エネルギー源が再生可能エネルギーにシフトするまでの「つなぎ燃料」として価値が期待されていたが、2014年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告書では、メタガンスによる気候変動影響が以前の想定よりも25%積み上げられ、さらに再生可能エネルギーの発電コストが大きく下がったことにより、「つなぎ燃料」としての地位も危うくなっている模様。
同レポートでは、LNGインフラ投資のうち数千億米ドル分が、30年から40年のマインライフを全うする前に座礁資産化すると警告した。インフラ建設計画では、輸出施設はシェールガスに湧いた北米が圧倒的多数を占め、輸入は中国や欧州が多数を占める。一方、日本に対しては、特別レポートを発行し、過去3年間で天然ガス・インフラに関する100億米ドル規模の海外支援を2度も表明しており、合計200億米ドルの投資が高いリスクにさらされると警鐘を鳴らした。
【参照ページ】Gas Bubble
【参照ページ】天然ガスへの賭け
【参照ページ】GAMBLING ON GAS
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