国際環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、豪環境NGOマーケット・フォー・チェンジ、スイス環境NGOブルーノ・マンサー・ファンドは7月24日、2020年東京オリンピック・パラリンピックの新国立競技場建設に環境破壊や人権侵害の疑いのある熱帯材を使用されることについて、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と国際オリンピック委員会(IOC)を非難する声明を出した。
環境NGOが問題視しているのは、マレーシア・サラワク州で熱帯原生林の違法伐採や人権侵害の実態が報告されている木材会社シンヤンの熱帯材が、新国立競技場の建設現場で発見されたことにある。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、その後シンヤン製木材を使用していることを認めたが、対象の木材がPEFC認証を取得していることを理由に問題性はないとホームページで声明を発していた。PEFC認証は、各国の森林認証制度を相互承認する国際認証プログラムで、最近注目されているFSC認証と比べると管理が緩いとも言われている。環境NGOも今回その点に言及し、「PEFC認証システムは合法性および社会的・環境的責任を保証できていないというかなりの証拠があるにもかかわらず、東京大会の木材コードがこの認証を取得したすべての木材にゴーサインを出すことで、これらの欠陥品も混入させてしまっている」と指摘した。
環境NGOの矛先はIOCにも向けられてた。NGOは、IOCが、「東京の新国立競技場の建設に、その由来が不明または不審な大量の熱帯材を使用されることがわかっていながら認めていた」としている。
東京オリンピック・パラリンピックでの木材については、調達基準に問題があると国際的な関心が高まっている。2016年12月には、国際的な環境NGO等44団体が結集し、新国立競技場や他の会場に予定されている施設の建設に、環境破壊や人権侵害に関与している熱帯雨林木材が使われる可能性が高いと警告する書簡をIOCに提出している。それを受け、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は今年5月17日、「持続可能性に配慮した木材の調達基準」を制定したが、使用木材については、「基準は[...]実現可能性を確保するために木材貿易の実際のビジネス慣行を考慮」すると説明。認証の信頼性やサプライチェーンに対する責任よりも、現状のビジネス慣行を尊重するともとれる回答をしたことが、NGOの大きな不評を買っている。
昨今、欧米の企業や団体は、認証を取得していたとしても現地での実際の運用にまで責任を持とうとする姿勢が生まれてきている。世界的な祭典である東京オリンピック・パラリンピックにも高い視点での事業運営が望まれている。
【参照ページ】IOC、無計画で持続不可能な東京オリンピック競技場建設に加担、東京オリンピック当局の弱い基準を受け入れる
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