米国の石油・ガスの大規模拠点であるテキサス州で、再生可能エネルギーの新設が大規模に進展している。特にシェールオイルの拠点となっている同州西武のパーミアン盆地で太陽光発電の大規模建設プロジェクトが複数進んでおり、テキサス州は米国の再生可能エネルギー建設を牽引する存在になってきている。
テキサス州で再生可能エネルギー発電需要が高まった当初の背景は、シェールオイル開発のために用いる水圧破砕技術での電力需要の増加。すなわちシェールオイル開発の進展とともに電力需要が高まり、太陽光に恵まれたテキサス州では同時に太陽光発電への期待が高まった。
しかし、新型コロナウイルス・パンデミックで、石油・ガス価格が下落し、シェールオイル開発は採算割れのプロジェクトが出てきたため熱がやや冷めており、さらに石油・ガス価格競争力が高まったことで、太陽光発電の相対的な立場が弱くなるなど、ここ数ヶ月で状況は大きく変化している。その中、日本のエネルギー大手企業が複数、テキサス州の太陽光発電プロジェクトの権益を確保する情勢が生まれている。
東京ガス100%子会社の東京ガスアメリカは8月5日、テキサス州で開発が進められている「アクティナ太陽光発電事業」の権益を取得した。設備容量は630MW。シカゴに本社を置くヘカテエナジーが権益をもって開発を進めていたが、今回東京ガスアメリカに権益を売却した。同事業は2020年度上期に着工し、2021年度中の商業運転開始を目指している。発電電力は同州の電力卸売市場「ERCOT」に販売する予定。東京ガスグループが、建設から運転開始後の事業運営までを担う海外の太陽光発電事業は今回が初めて。
関西電力100%子会社のケーピック・ユーエスエーも7月10日、テキサス州ヒューストン北西の「アビエータ風力発電事業」の権益48.5%を取得した。設備容量は525MW。同事業はアビエータ・ウィンドの建設事業で、エイリス・キャピタルが権益を保有していたがだったが、今回、関西電力が48.5%、ミシガン州の電力会社CMSエナジーが51%、をエイリス・キャピタルから取得した形。日本の電力会社が単独で現地企業と米国の風力発電事業に参画したのは今回が発。また関西電力が米国での再生可能エネルギー事業に参画したのも今回が初となった。2020年8月に商業運転を開始する予定。
電源開発(Jパワー)100%子会社のJパワー・USAデベロップメントも4月30日、同州ヒューストン南西のウォートン地区で、設備容量350MWの太陽光発電プロジェクトを、同州の太陽光発電デベロッパーAP Solarと共同で開始。これが同社にって米国での再生可能エネルギー案件第1号となった。2022年前半の運転開始を目指している。また、8月5日も、同じくAP Solarと共同でウォートン地区からさらに南西のレフュージオ地区で設備容量400MWの太陽光発電プロジェクトを開始。こちらは2023年の運転開始を目指す。
パンデミックの影響で、同州の再生可能エネルギープロジェクトを取り巻く環境は複雑さを増している。プラスの材料としては、石油・ガス価格が低迷したことによる業界の再生可能エネルギーへのシフト。また気候変動対策のための脱炭素の動きも追い風となっている。シェールオイル・プロジェクトが頓挫したことにより、雇用の確保もしやすくなっている模様。一方マイナスの材料としては、大需要家であったシェールオイル事業者の需要低下と、卸売市場であるERCOTでの卸売価格の低下。需要減と供給増の状況となり、再生可能エネルギー事業者の収益性は悪化するとみられている。だが、テキサス州は、石油・ガス以外でも、近年ヒューストンなどでは大きな経済発展を記録している。それが新たな電力需要増の要因となる可能性も高い。
日本のエネルギー大手は、脱炭素化のプレッシャーを受け、再生可能エネルギー電源比率を高めようとしているが、日本国内で再生可能エネルギーをプロジェクトを進めるより、収益性の高い海外案件に活路を見出そうとしている。
【参照ページ】米国での大規模太陽光発電事業の取得について
【参照ページ】米国テキサス州陸上風力発電事業への参画について
【参照ページ】米国テキサス州での太陽光発電開発への着手について
【参照ページ】米国テキサス州で2地点目の太陽光発電開発への着手について
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