金融情報世界大手ブルームバーグ創業者マイケル・ブルームバーグ氏が個人として2004年に設立した慈善財団ブルームバーグ・フィランソロピーズは12月5日、世界で各地での喫煙率低下活動に新たに3億6,000万米ドルを資金拠出することを発表した。根拠に基づく禁煙政策と低・中所得国でのたばこの危険性認知キャンペーンに資金を無償で提供する。同財団は、過去10年に渡り健康分野への助成金を実施しており、今回新たに発表したプログラムを含めた助成金総額は10億米ドルに及ぶ。また、たばこ分野での活動も10年間展開しており、同基金のイニシアチブ「Bloomberg Initiative to Reduce Tobacco Use」を通して世界各国の喫煙率低下政策に関与してきている。このイニシアチブには、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏が設立したビル&メリンダ・ゲイツ財団も2008年から参画している。
同基金が10年間実施してきた喫煙率低下プログラムは、すでに多くの国で政策として採用されている。プログラムを通じトルコなど39ヶ国が禁煙法を制定。また、インドなど32ヶ国ではたばこパッケージに健康への警告を表示することが法定義務とされている。さらにブラジルなど22ヶ国ではたばこ公告およびたばこ会社のスポンサー活動が禁止されている。北京や上海などではこのほど禁煙スペースの設置を義務化する条例が制定された。
しかし、ブルームバーグ氏はより多くの取組が必要だと話す。現在、喫煙者の75%が低・中所得国に集中しており、タバコ会社もこれらの市場における新規顧客開拓に躍起になっているためだ。今回のプログラムでは、禁煙活動団体や政府を対象とした「MPOWER政策」を展開していく。MPOWERとは、たばこ利用の監視(M)、禁煙法を制定することによる市民の健康保護(P)、喫煙者の禁煙支援(O)、たばこパッケージと公告を用いたたばこの危険性認知キャンペーンの展開(W)、公告禁止活動の展開(E)、たばこ価格の引き上げ(R)の6つの取組の頭文字を合わせたものだ。とりわけ、喫煙率が高い中国、インド、インドネシア、バングラデシュなどを重点国とし、110か国以上で活動を実施する。
たばこの健康被害については、世界保健機関(WHO)も大きな声で呼びかけている。ブルームバーグ氏は、WHOの「世界非感染性疾患大使」にも任命され、同財団が展開する「Bloomberg Initiative to Reduce Tobacco Use」にもビル&メリンダ・ゲイツ財団の他に、WHOもパートナーとして参加している。それ以外のパートナーには、The Campaign For Tobacco-Free Kids、CDC財団(Centers for Disease control and Prevention Foundation)、国際結核肺疾患連合(International Union against Tuberculosis and Lung Disease)、Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health、Vital Strategiesなど有力なNGOや研究機関が名を連ねる。WHOやNGOなどと協力することで、ファンドレイジング(寄付金集め)の効率化や、活動インパクトの最大化を実現している。
ブルームバーグ・フィランソロピーズとパートナー団体は、各国の医療担当大臣や金融担当大臣に対したばこ税の導入を促す活動も展開している。たばこ税によるたばこ価格を引き上げは、たばこ消費を抑える効果があることが立証されてきているためだ。2015年にはブルームバーグ・フィランソロピーズとビル&メリンダ・ゲイツ財団は400万米ドルの「反たばこ・貿易訴訟基金(Anti-Tobacco Trade Litigation Fund)」を共同設立し、たばこ産業と法廷闘争を行っていくための資金収集も行っている。
ブルームバーグ氏は、ニューヨーク市長時代にも数多くの禁煙政策を実施しており、2003年には禁煙条例(New York City Smoke-Free Air Act)を導入し、バーやレストランでの喫煙を禁止。さらにその後、たばこ税増税や反喫煙広告キャンペーンの展開、ニコチンパッチの無料配布なども行った。その結果、ニューヨーク市の喫煙率は同氏が市長に就任した2002年には21.5%だったものが、2014年には13.9%にまで低下している。
【参照ページ】Michael R. Bloomberg Commits $360 Million to Reduce Tobacco Use – Raising Total Giving on Tobacco Control Efforts to Nearly $1 Billion
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