違法業業の取締を強化する国際条約が6月5日発効した。今回発効したのは、「違法・無報告・無規制(IUU)漁業の防止、抑制、廃絶のための寄港国措置協定(PSMA協定)」。国連食糧農業機関(FAO)の主導で2009年に成立したが、発効に必要な25ヶ国以上の批准がようやく集まり、発効されることとなった。PSMA協定では、違法漁業の取締に関して、漁船が上陸する寄港地国の責任を強化し、流通を防止するのが主な内容。これまでは、船舶管理の法的責任は「旗国」と呼ばれる船舶登録国に限定されていたが、寄港国にも責任を持つようにしたのがポイントだ。
発効時の批准国となるのは全部で29ヶ国。オーストラリア、チリ、コスタリカ、キューバ、EU、ギニア、アイスランド、モーリシャス、ミャンマー、ニュージーランド、ノルウェー、パラオ、韓国、ソマリア、南アフリカ、スリランカ、タイ、米国、ウルグアイなど、主要な漁業国も多く含まれている。特に、違法漁業に関してはタイが問題視されることが多く、タイ政府は加盟することで大きな国際責任が課せられる。日本は批准していない。
協定では、IUU漁業の対象魚を海洋生物という非常に高範囲の定義を設定。これにより漁業で扱われるほぼ全ての種が対象となった。寄港国に対しては、入港を希望する船舶に対し海洋生物捕獲の漁業記録や水産物情報を入港許可を出す前に提供することを求めることを義務付ける。寄港国は、IUUの疑いがある場合には漁船に対して臨検を実施することもできる。IUU漁業が発覚した漁船に対しては、入港を拒否することができ、その事実を旗国に対して通知しなければならない。入港を拒否せず、IUU漁業に対する取り調べを行うこともできる。
入港拒否された漁船の情報は加盟国間で共有し、IUU漁業の抑止を連携して進める。対応能力が乏しい発展途上国に対しては、先進国がキャパシティビルディングに協力することも盛り込まれた。
PSMA協定の発効により、サプライチェーン上でIUU漁業に関与している企業にとっては、漁業資源供給が滞るリスクが高まる。日本やヨーロッパには、東南アジアの違法漁業からの魚介類がたくさん仕入れられており、日本政府の批准の有無にかかわらず、日本の食品企業や小売・流通企業には対応が求められる。
【参照ページ】World's first illegal fishing treaty now in force
【条約文】PSMA協定(英語)
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