東京に本拠を置く国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は8月28日、中国・新疆ウイグル自治区での人権侵害問題に関し、日本企業への質問状への回答をまとめた報告書「新疆ウイグル自治区に関連する強制労働と日本企業の関与について」を、日本ウイグル協会と共同発表した。「日本企業の受け止め方は、人権侵害の深刻さに見合うものではない」とし、日本の大企業の人権対応を厳しく批判した。
今回の質問状送付は、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が3月に発表した調査報告書で言及された日本企業を対象に実施。具体的には、日立製作所、東芝、三菱電機、パナソニック、ソニー、シャープ、ジャパンディスプレイ(JDI)、TDK、任天堂、ミツミ電機、ファーストリテイリングの11社。質問状は4月に送られた。
【参考】【国際】中国ウイグルでの強制労働、各業界が対策声明発表。日本大手11社も関与可能性(2020年3月13日)
質問状への回答では、パナソニックはそもそも未回答だったが、残りの10社は回答し、その点については「ステークホルダーとのダイアログを尊重する姿勢として評価できる」とした。
しかし、日立製作所、ソニー、TDK、ソニーの3社は、ASPIの報告書で言及された内容に対する回答は何らなく、一般的な自社の人権方針、調達方針について回答したのみだった。またそれ以外の企業についても、対策の内容が「1次サプライヤーでの非関与の確認」にとどまっており、サプライチェーン上の全ての人権侵害に対する確認をしていないことを強く批判。また調査手法に置いても、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)では、外部専門家による調査を推奨しているものの、どの企業も調査手法を明らかにしておらず、不十分な情報開示と指摘した。
一方、先進事例としては、パタゴニアを例に上げ、米人権NGOの公正労働協会(FLA)と協議した結果、素材調達を行っていた新疆ウイグル自治区内からの撤退を発表し、同社の世界中のサプライヤーに対しても、同様に新疆ウイグル自治区内からの原材料調達及び製造を禁止したことを高く評価した。
【参考】【国際】機関投資家の人権イニシアチブIAHR、新疆ウイグル自治区問題で人権リスク・ガイダンス発行(2020年8月15日)
HRNは今回、企業、投資家、日本政府に対し提言を発表。企業に対し、徹底した人権デューデリジェンスを求めるとともに、機関投資家に対しても投資先企業が人権デューデリジェンスを実施するよう促した。また、企業に要請する人権デューデリジェンスのガイドライン作成や、中国政府に対する国際人権条約の遵守を求めた。
【参照ページ】【報告書】新疆ウイグル自治区に関連する強制労働と日本企業の関与について
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