日本政府は6月11日、4月にパリ協定長期成長戦略懇談会が提出した「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定した。2050年までに二酸化炭素排出量を80%削減(基準年は未定)し、2070年までに二酸化炭素ネット排出量をゼロにする方針を政府として決定した。
【参考】【日本】官邸のパリ協定長期成長戦略懇談会、提言発表。2070年までにCO2ゼロ目指す(2019年4月5日)
閣議決定と同時に公表された同懇談会提言に寄せられた意見と政府回答の文書では、「再生可能エネルギーを主にするべき」「石炭火力発電を廃止すべき」「石炭火力発電を活用すべき」「化石燃料の利用を抑えるべき」「化石燃料をバランスよく活用すべき」「CCS・CCU を進めるべき」「CCS・CCU を見直すべき」「水素エネルギーを活用すべき」「水素エネルギーの活用を見直すべき」「原発を廃止すべき」「原子力発電を活用すべき」と多様な意見が提出されたことが伺える。しかし、閣議では、提言書の修正は行わず、原案のまま決議した。
また、経済産業省と文部科学省は6月10日、二酸化炭素排出量を大幅削減するための技術について、ポテンシャル・実用化の観点から、現在の研究開発・実用化状況を確認し、課題を抽出した報告書を発表した。両省で「エネルギー・環境技術のポテンシャル・実用化評価検討会」を運営し、議論していた。
同報告書では、二酸化炭素排出量の大きい「電力」「自動車」「鉄鋼」「化学」「セメント」の5業種それぞれについて、研究が進められている代替技術を列挙。いずれの分野でも最終的に「水素」「炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)」「再生可能エネルギー・バッテリー」「パワーエレクトロニクス」の4つが不可欠な技術と位置づけられた。
また、CCUSについては、経済産業省が別途6月7日、回収した炭素を活用する「カーボンリサイクル」の技術ロードマップを提示。CCUのためにも二酸化炭素排出量フリーで生産する水素が必要となる見解を示している。二酸化炭素排出量フリー水素を生産するためには、再生可能エネルギー、原子力発電、もしくは化石燃料火力発電にCCUSを組み合わせた3つの方法が考えられる。そのうち、政府は再生可能エネルギーの拡大は難しいという見方をすでに示しており、CCUに必要な水素生成でCCUSを活用すると本末転倒になってしまうことから、原子力発電を用いた水素生成を推進したい意向が見えてくる。
一方で、国際的には、CCUS技術はコストが高すぎ、実用化できないため、CCUSに頼るべきではなという意見も、機関投資家やNGOの間で根強い。
【参考】【日本】経産省、CCUSの一環でカーボンリサイクルの技術ロードマップ策定。コスト削減が最大の壁(2019年6月10日)
【参照ページ】「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の閣議決定について
【参照ページ】「エネルギー・環境技術のポテンシャル・実用化評価検討会」の報告書を取りまとめました
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