ブラジル政府とブラジル中央銀行は7月9日、アマゾンでの火入れ行為を120日間禁止する措置を計画していることを明らかにした。同国のジャイール・ボルソナーロ大統領は、農業振興のためアマゾンの焼畑行為を容認する姿勢を示しきたが、今回海外機関投資からのエンゲージメントを受け、ブラジル政府が翻意を迫られる形となった。
【参考】【ブラジル】アマゾンの大規模火災、現政権の環境軽視政策が原因か。欧州主要国も支援停止(2019年8月24日)
【参考】【ブラジル】1年間のアマゾン森林消失面積が過去10年間で最大。違法経済活動が原因(2019年11月23日)
【参考】【ブラジル】ボルソナロ大統領、先住民保護区での資源開発・水力ダム開発を許可する法案発表(2020年2月12日)
ブラジル政府に対するエンゲージメントを率いたのは、ノルウェー金融大手ストアブランド。ブラジル政府に対する集団的エンゲージメントを立ち上げ、すでに34の機関投資家、運用資産総額で4.6兆米ドル(約490兆円)が参加している。今回のブラジル政府の発表は、この機関投資家らが、ブラジル政府に対し環境破壊を停止するよう求めた書簡を送付し、その返答として開かれたオンライン対話会議の中で表明された。オンライン会議には、ストアブランド、ノルウェー年金基金KLP等、約10機関が参加した模様。
ストアブランド等がブラジル政府に対し要求した事項は主に5つ。まず、ブラジル刑法19条に基づき森林破壊を防止する政策措置を実施し、森林破壊率を著しく低減させること。そして、ブラジル森林規範を導入すること。3つ目は、環境破壊及び人権侵害に対応するための法律を制定し、中央政府の実行力を上げること。4つ目は、2019年のようなアマゾン熱帯雨林火災の再来を防ぐため熱帯雨林地域での火入れを抑制すること。最後は、森林破壊率、森林カバー率、コモディティ・サプライチェーンの所有及びトレーサビリティに関するデータを公表すること。
同書簡では、ブラジル政府が要求に従わない場合、ブラジルへの新たな投資の停止や、投資引揚げ(ダイベストメント)にも言及した。ブラジル政府にとって、機関投資家は国債の販売先でもあり、機関投資家の動向は無視しづらい。
ブラジルでは、昨年の大規模熱帯雨林で国際非難を受け、火入れを禁止するとともに軍による現地巡回を実施。2019年9月と10月は、火災の数が前年比で減少した。今年は5月から軍の巡回が開始されている。しかし、2020年の1月から5月までの森林破壊率は前年比を34%も上回り、過去11年間で最悪の状態となっている。関係者の間では、8月から11月に再び大規模な熱帯雨林火災に発展するのではいかと危惧する声もある。
今回はブラジル政府は、火入れ行為の禁止の考えを表明したが、ブラジル政府は心から翻意したとは思っていない関係者も多い。機関投資家は、引き続きブラジル政府の動きを注視していく模様。
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら