米環境保護庁(EPA)は7月25日、航空機からの温室効果ガス排出規制を制定することを最終決定した。航空機からの温室効果ガス排出が、すでに規制が設けられている車やトラックなどと同様に、環境や人体に悪影響を及ぼしているという判断を下した。今後、EPAは、大気浄化法(CAA)23条(a)(2)(A)に基づき、温室効果ガス6ガス(二酸化炭素、メタン等)の排出基準を定めていく。排出基準設定に当たっては、産業界やNGOなど幅広い関係者からパブリックコメントを募る予定。
米国航空機の温室効果ガス排出量は、同国の輸送・交通分野で3番目に多い約12%を占め、これは米国全体の排出量の3%に及ぶ。また、全世界の航空機からの排出量では29%を占める巨大な割合。欧州ではすでに2012年1月より、EU域内の航空会社に温室効果ガスの排出枠を割り当て、枠を超えた企業にはその分の排出量の購入を義務化する排出量取引制度(EU-ETS)をEU法によって導入されている。この制度はEU域内の発着便全てに一律適用されるため、導入前には米国の主要航空会社が猛反発し、欧州司法裁判所での裁判闘争のもとで導入問題なしとの最終決着をした経緯があった。今回EPAが航空環境規制の強化に乗り出すことで、航空機からの温室効果ガス排出量割合が高い米国での排出削減が進むと期待されている。
EPAが規制強化に乗り出した背景には、航空機の温室効果ガス排出規制を定めようという機運が国際的に高まっていることがある。今年2月には、国際民間航空機関(ICAO)の航空環境保全会議(CAEP)で、国際的な排出基準設定及び関連規定を定めることを決定。今年10月に開かれるICAO総会で承認される見込み。先立って今年5月のG7伊勢志摩サミットでも、首脳宣言の中に国際航空便の温室効果ガス排出量を削減する国際ルール作りをG7諸国先導するという内容が盛り込まれていた。航空の分野でも国際線に関するルール作りは難易度が高い。国際線は、出発地、経由地、到着地と複数の国をまたがって運航されているため、温室効果ガス排出量を国単位で算定することが難しいためだ。現段階でも各国が算出する温室効果ガス排出量の中に国際線は含まれていない。また各国が制定するの温室効果ガス削減対象の中にも国際線は入っていない。ICAOで国際線のルール作りが進むと、航空会社にとっての「言い訳」が封じられ、国内線の環境規制も追い風になる。
EPAは、基準設定にあたっては、米連邦航空局(FAA)と連携していく。規制の対象となる航空機は、国際航空機の排出基準値に則り、最大離陸重量(MTOM)が5,700kg以上の亜音速(音速以下)のもの、及び最大離陸重量が8,618kg以上の(ターボプロップ機のような)亜音速プロペラ機とされている。具体的には、小型ジェット機のセスナ・サイテーションCJBやエンブラエルE170から、民間最大のジェット機、エアバス380やボーイング747など。ターボプロップ機としては、ATR72、ボンバルディアQ400などが該当する。一方で、小型のターボプロット機やジェット機、ピストンエンジン機、ヘリコプター、軍用機等、対象となるエンジンを使用してないものについては今回の規制から外れる見込み。それでも、規制の対象となる全米航空機は、航空機からの温室効果ガス排出量の89%をカバーする。
【参照ページ】EPA Determines that Aircraft Emissions Contribute to Climate Change Endangering Public Health and the Environment
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