コンピュータネットワーク世界最大手のシスコ、国際電気通信連合(ITU)および国連ICT専門機関は1月29日、昨年9月に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の達成、そして目標を超えるために、いかにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を活用できるかについてまとめた報告書、"Harnessing the Internet of Things for Global Development"を公表した。
同報告書によると、先進諸国におけるIoT技術の進展や需要増加によりIoTの入手可能性や経済性、拡張性が高まることで、IoTは開発途上国の経済発展をも加速させ、最小限の投資で人々の生活の質を大きく向上させるプラットフォームになるという。
シスコは、先進諸国がIoTを活用して自宅や職場などあらゆる場所のものをインターネットで接続していくことで、そこには「つながっている世界」と「つながっていない世界」という新たな格差が再び生まれる恐れがあるとしつつも、この問題に早く取り組むことで、IoTは開発途上国においてむしろこの格差を埋めるためのイノベーションツールとして機能させることができるとしている。
同社は、IoTは実際に既にヘルスケアや教育分野などのプログラムなどでインパクトを生み始めているとしており、開発途上国のけるIoTの進展を加速させるドライバーとして"Availability(入手しやすさ)"、"Affordability(価格の手頃さ)"、"Scalability(拡張性)"の3つを挙げている。
"Availability"については、IoT機器は既に一般に普及しており価格も手頃になってきており、開発途上国においても容易に代替可能な状況まで来ているという。開発途上国にも既にWifiなどIoT端末を活用するための基本的なインフラ環境は整いつつあり、加えてモバイル端末を利用する文化が浸透している点も後押しとなるという。ITUの調査によると、現在の世界の通信環境は2Gが人口の95%、3Gが人口の65%を既にカバーしているとのことだ。
また、"Affordability"については、先進国市場の投資によりIoTの研究開発コストは下がり続けており、開発途上国用にIoT機器をカスタマイズするコストもほとんどかからないという。シスコは、開発途上国の市場においては先進国市場の複雑なインフラは必要不可欠なものではなく、IoTのコア技術そのものはかなり手に入れやすくなっているとしている。
そして"Scalability"については、IoT機器はそもそも拡張性が高い形で設計されており、多くの機器が簡単な接続作業で機能し、インストールやその維持にそれほど高い技術的素養を必要としないという。また、太陽光のような代替エネルギーを活用することで、安定的な電力供給がない地域においてもセンサーやネットワークの稼働が可能であるほか、IoTは柔軟性も高く、各国の発展スピードに合わせて短期・長期のソリューションや浸透を進めていくことができるとのことだ。
シスコは、これらの要因が合わさることでヘルスケアや教育、生活の質はすぐに改善され、数百万もの人々の運命を急速に変えることができるとしたうえで、開発途上国の政府や産業界らに対してこの新たに生まれつつあるデジタル格差を防ぐための機会を逃さないように指摘している。具体的には、グローバル基準を開発し、起業家のエコシステムを育成するための積極的な政策や枠組みに早急に投資すること、最新のセキュリティ技術を設計、運用することで「高度につながっている世界」の中で信用を獲得することなどを挙げている。
シスコらが報告書の中で主張しているように、IoTをはじめとする最先端のITテクノロジーはSDGsの中に含まれる様々なサステナビリティ目標の実現に向けて活用可能だ。テクノロジーの力で格差を広げるのではなく、格差を解消し、世界全体でインクルーシブな発展を遂げていくことがテクノロジー企業らに課せられた社会的使命だと言える。
【レポートダウンロード】Harnessing the Internet of Things for Global Development
【参照リリース】IoT Unique Opportunity for Developing World
【企業サイト】Cisco the Network
(※写真提供:photogearch / Shutterstock.com)
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