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【国際】気候変動関連の災害は80年代の約2倍に増加。食糧確保の大きな脅威に

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 国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization、以下FAO)は11月26日、気候変動が食糧にもたらす影響に関する報告書、"The impact of disasters on agriculture and food security"を公表した。FAOは同報告書の中で、過去30年間に渡って気候変動に誘発された干ばつ、洪水、嵐・荒天等の災害は頻度とその深刻さを増しており、多くの開発途上国において特に農業分野の被害が増大し、食糧確保に困難を強いられていると警告している。

 FAOの分析によると、2003年から2015年の間における世界中の気候関連も含むすべての自然災害の年間発生数は1980年代と比較して約2倍になっており、この期間の被害総額は推定1.5兆米ドルに達しているという。特に、開発途上国における影響だけに焦点を合わせた場合、作物、家畜、漁業、林業の分野だけでマイナスの経済効果の約25%が生じているとのことだ。

 今回の報告書は、開発途上国で実施された78件のPost Disaster Needs Assessment(災害復興支援ニーズ調査)および、少なくとも25万人の人々に影響を及ぼした140件の中・大規模災害による製造ロス、貿易の変動、農業分野の(マイナス)成長に関する統計的な分析を基にしたものだ。

 報告書が明示しているのは、自然災害、特に異常気象が定期的に農業に甚大な影響を及ぼし、飢えや貧困の撲滅と持続可能な発展の達成を妨げているという点だ。FAOは、農業分野のレジリエンス強化、食糧確保と生産性促進に向けた投資の促進、そして気候変動による弊害を阻止する方策を実施しない限り、状況はさらに悪くなると指摘している。

 例えばサハラ以南のアフリカ地域では干ばつにより約90%の生産物が失われる等、農業に深刻な影響を及ぼしている。この地域ではGDPの4分の1を農業が占めており、アグリビジネスも含めると50%に達する。1991年から2013年までの間に同地域で発生した大規模な干ばつが作物生産や家畜に及ぼした被害は少なくとも300億米ドルに相当するという。

 また、洪水および嵐・荒天についてはアジア諸国の脆弱さが際立っている。例えば2010年にパキスタンで発生した洪水は綿繰りや米の加工、製粉などに直接的に影響し、綿と米の輸入の急増を引き起こした。被害総額100億米ドルのうち、約50%が農業分野で生じたとのことだ。

 災害に対する効果的な政策を立案・実施するためには、異なる災害は異なる影響をもたらすという理解が不可欠だ。津波やハリケーン、サイクロンは漁業に多大な被害を及ぼし、嵐・荒天や洪水は林業に大きなマイナス経済効果をもたらす。さらに、災害は生産物への被害だけでなく失業や貧困の原因となる点も忘れてはならない。

 FAOの事務局長を務めるJosé Graziano da Silva氏は、近年、国際社会が持続可能性や「仙台防災枠組み2015-2030(Sendai Framework for Disaster Risk Reduction)」にコミットしていることに期待しつつ、目標の達成には災害に関する最新情報が必要だと語った。特に農業分野におけるレジリエンス強化のための効果的な政策や実践には各分野の被害状況に関するデータが必要であり、FAOは今後、包括的なデータ収集とモニタリングを進展させていくとしている。

 現在世界では約25億人が農業で生計を立てているものの、2003年から2012年までの公的な開発援助の総額のうち農業への支援はわずか4.2%に過ぎず、国連の目標である10%の半分にも満たなかった。災害リスクへの投資も非常に少なく、2010年と2011年には公的な開発援助の約0.4%となっている。FAOは、援助が特に農業分野での災害に効果的に反映されることを強く要請している。

 気候変動の影響を最も強く受けるのは、言うまでもなく開発途上国だ。そしてその影響は干ばつや異常気象など様々な形で人々の生活の前に立ち現れ、貧困の原因を作り出している。気候変動対応においては災害レジリエンス強化、特に農業セクターへの支援の重要性を理解する必要がある。

【報告書ダウンロード】The impact of disasters on agriculture and food security
【参照リリース】Surge in climate change-related disasters poses growing threat to food security
【団体サイト】Food and Agriculture Organization

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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