WWF(世界自然保護基金)は8月4日、持続可能な森林に関する国際認証のFSC認証が経済的利益とサステナビリティにもたらす影響について分析した報告書、"The Profitability and Sustainability in Responsible Forestry: Economic impacts of FSC certification on forest operators(責任ある森林事業における利益と持続可能性:FSC森林認証の影響力)"を公表した。
同報告書は幅広い森林事業者に対してFSC認証がもたらす費用対効果分析を実施したもので、報告書によると、熱帯雨林関連事業者および中小企業は地理的条件に関係なく、FSC認証により大きな利益を得ていることが明らかになった。
調査対象企業においては、FSC認証済の丸太および同等製品はそうでないものと比較して平均して1㎥あたり1.8米ドルの利益を得ており、認証取得に要する費用を上回っていることが分かった。FSC認証取得を目指すという意思決定の正味現在価値は丸太および同等品1㎥あたり平均6.69米ドルで、FSC認証の取得には高い経済合理性があることが分かった。
FSC認証がもたらすこれらの利益は、プレミアム価格や効率性の向上などによるものだ。利益の大きさは企業規模や地理的条件により大きく異なっていた。熱帯雨林関連事業者や中小企業に対しては地域に関わらず経済的利益をもたらしている一方で、温帯地域の大手企業では小額の損失となっていた。また、FSC認証への投資が損益分岐点を迎えるまでに平均して6年を要していた。
WWFグローバル森林プログラムの責任者を務めるRod Taylor氏は「WWFの新たな報告書の結果は、FSC認証は特に熱帯雨林に関しては利益よりもコストが大きいという推測に反するものだ。今回の調査は、FSC認証プロセスにかかる投資コストは特に熱帯雨林関連事業者や中小企業にとってはかなりのものである一方、その投資はボトムラインにとって良いものでありうることを示している。これは将来に向けて森林を守る上でのこれらの企業らが担っている重大な役割を考慮するととても重要な発見だ」と語った。
さらに同氏は「今回の方法論は、各企業が自社の事業においてFSC認証から得られる利益を実用的な形で計算する際にも適用できる。責任ある森林の推進者らは、認証が最も多くの利益がもたらす場所を測定するツールとともに森林管理者や投資家を支援することが必要だ。WWFはそのようなツールの開発に取り組み始めているが、それらをスタンダードな慣行にするためには幅広いパートナーとの連携が必要だ」と語った。
FSC認証の取得は森林のサステナビリティだけではなく企業に対して経済的なメリットももたらすということが示された今回の結果。サステナビリティの推進が価格プレミアムや安定的な調達、調達の効率化などを通じて利益を生み出すことが明確になれば、企業はそれらの活動に取り組む大きなインセンティブが生まれる。森林保護に限らず、「サステナビリティはコストではなく投資」だという考え方がどこまで一般的に受け入れられるかが重要だ。
【レポートダウンロード】FSC certification yields financial benefits for tropical forest businesses, shows new WWF report
【参照リリース】FSC certification yields financial benefits for tropical forest businesses, shows new WWF report
【団体サイト】WWF
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