今、世界では個人間が自身の資産などをシェアするCtoC(個人間取引)ビジネスが急速に普及している。自宅の空き部屋を貸し出すことができるAirbnbや、配車アプリのUberなどがその代表例だ。こうした新しい事業形態は「シェアリング・エコノミー」と呼ばれ、資源やエネルギーの無駄削減につながることから新たなサステナブル・ビジネスの一つとして注目を集めている。
このシェアビジネスに、新たな分野が誕生しようとしている。それは、太陽光発電のCtoC事業だ。この新しい事業を開始したのは米国ボストンに本拠を置くスタートアップ企業のYelohaで、同社はピア・ツー・ピア通信ネットワークシステムを活用して全ての住宅に通常の電力より低価格の太陽光電力を提供しようと、新しいビジネスモデルの構築に取り組んでいる。
近年太陽光発電パネルの設置価格は低減傾向にあるものの、未だ多くの住宅所有者にとってパネル設置コストはそう簡単に負担できるものではない。そのため、せっかく太陽光発電に適した好立地に住宅を構えていながらコストの問題で発電を始めていない住宅が数多くある。一方で、太陽光発電パネルの設置を望んでいるものの、立地条件により多くの発電量が期待できないため、パネルの設置を諦めている住宅も数多くある。Yelohaが目をつけたのは、このギャップだ。
同社は、太陽光発電に適した住宅を保有していながらパネル設置のコスト負担ができない人々(ホスト)と、その逆に太陽光発電を望んでいるものの、条件に適した住宅を保有していない人々(パートナー)をピア・ツー・ピア通信ネットワークシステムを活用して結びつけ、両者がともに太陽光発電のメリットを受けられるサービスを開発した。
Yelohaは、ホストの住宅に対しては自社負担で太陽光発電パネルを設置し、かつパネル発電量の約3分の1を提供する。そうすることでホストは初期費用負担がゼロで太陽光パネルを設置することができ、かつ月々の光熱費を削減することができるようになる。一方でパートナーは他のどの種類の電力よりも安いYelohaの「太陽光クレジット」を購入することができ、3年以上利用見込みがあるパートナーであれば年間の光熱費を約1割程度節約することができるという。
パートナーとホストはネットワーク内で自由に相手を選ぶことができるほか、全ての利用者が発電と消費を測るオンラインツールを通じて、コミュニティ意識を育むことができるように設計されている。ネットワーク上におけるYelohaの役割は全体のシステム管理、クレジット販売、外部系統への電力販売などに限定されており、Yeloha自体は太陽光発電により生まれた電力をやりとりするC to Cのマーケットプレイスとして機能する形になっている。
Yelohaのサービス利用者が増えていけば、太陽光発電を取り巻く市場の構造は今後大きく変わる可能性もある。シェアリング・エコノミーを代表する新たなビジネスモデルとしてどのように普及していくのか、今後のサービスの成長が楽しみだ。
【企業サイト】Yeloha
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