米ジョー・バイデン大統領は1月5日、トランプ前政権時代の公衆衛生命令タイトル42の即時撤回を連邦裁判所が反対していることを踏まえ、新たな国境警備強化政策を発表した。
今回の発表は、すでにベネズエラ国籍からの移民に対して発動している「ベネズエラ・イニシアチブ」を、ニカラグア、ハイチ、キューバの国籍者に対しても拡大適用するもの。同イニシアチブでは、法的根拠なく違法に米国に入国しようする場合、出身国への迅速な移送の対象となり、5年間再入国禁止となる。これにより、該当者に対しては、越境元のメキシコに追放し、メキシコ政府が出身国に移送することになる。米連邦政府は、同装置についてすでにメキシコ政府とも協議済みとしている。国土安全保障省は、タイトル42が撤回された後も、すべての非移民をタイトル8の権限で同様の処置をする考え。該当者は毎月最大3万人程度。
また同イニシアチブでは、支援策として、米国内の経済的スポンサーを獲得でき、有効なパスポートを保持し、航空券を購入できる場合には、飛行機での米国への渡航許可を申請できる臨時入国許可(Parole)プログラムも用意。2年間の期間限定で米国に入国し、就労許可を得ることができる。こちらも現在ベネズエラ国籍者に対して適用している措置をニカラグア、ハイチ、キューバにも適用する。入国後は連邦政府が調整したルートで送られ、国境州の負担を軽減する措置も導入する。適用者は同様に毎月最大3万人程度という。
また、バイデン政権は今回、2024年度までに中南米からの難民を最大2万人受け入れる方針も表明。現状の3倍に引き揚げる。これは、「移民と保護に関するロサンゼルス宣言」に基づく措置という。
さらに、メキシコと中米諸国に対し、約2,300万米ドルの人道的支援の追加も発表。各国での移民や難民の保護、社会福祉の拡充を支援する。
今回の政策は、野党共和党からの反発の一部に応えるもの。メキシコとの国境に近い州からの反発が強く、連邦議会の審議が滞る要因ともなっていた。今回バイデン政権は、「政治的な駆け引きをし、破綻した移民制度を修復するための真の解決策を妨害する一部の共和党議員とは異なり、バイデン大統領には計画があり、行動を起こしている」と声明を出した。
移民を利用した密輸犯罪に対しては、国境警備に当たっている捜査官や警官2万3,000人以上からさらに追加雇用し、配備する考え。さらに、国家安全保障省は、空輸・陸上輸送能力を大幅に増強し、必要な場合には移民を迅速に追放し、あるいは移民を混雑していない国境地帯に移送して、さらなる移民取締りの手続きを行うことができるようにするという。同時に、密輸組織の掃討作戦も敢行し、すでに7,300人以上を逮捕したという。
今回の発表に関し、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は批判。合法な手段では逃げられない難民や亡命へのアクセスが閉ざされるとし、移民や難民を積極的に受け入れるべきとした。
【参照ページ】FACT SHEET: Biden-Harris Administration Announces New Border Enforcement Actions
【参照ページ】Biden Expands Trump-era Border Restrictions Once Again
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