インドネシア政府の「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」事務局は8月16日、公表予定期限だったプロジェクトの青写真となる「包括的投資・政策計画(CIPP)」文書の発表を延期した。支援国との間で支援プロジェクトの決定作業が難航しており、最終決定は2024年にまでずれ込む可能性もある。
先進国が一体となって新興国のエネルギー転換を支援するJETPは、南アフリカが第1号で誕生し、インドネシアが2カ国目。2022年のG20サミットに合わせ、2022年11月に発足。日本と米国が発足を主導し、EU、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、英国も参画する形で、今後3年から5年で合計200億米ドル(約2.8兆円)の資金を動員することが決まった。
【参考】【国際】日米欧、インドネシアの脱炭素化に2.8兆円資金動員。石炭火力15GW廃止。2030年再エネ34%(2022年11月16日)
JETPの事務局は2月、インドネシアのエネルギー鉱物資源省(MEMR)に設置。アジア開発銀行の支援を受け、支援国グループ「国際パートナーズグループ(IPG)」との調整役も担っている。IPGの代表は、アレクシア・ラトルチュ米財務省国際貿易開発担当次官補、リック・デューク米国務省気候問題担当副特使)、日本の矢作友良・財務省大臣官房審議官が担っている。グラスゴー金融同盟(GFANZ)との対話も積極的に行っている。
現在、難航しているのは、支援プロジェクト決定の前提となる「技術的に信頼できるロードマップ」の策定。インドネシアとIPGは1年以上をかけ内容を詰めてきたが、特に、提供される資金の種別や、石炭火力発電から再生可能エネルギーへの転換を確実に進めるための技術的課題を巡る意見の相違が大きいという。今回、インドネシアとIPGの双方に草案が示されたが、インドネシア側は決定を保留。今後慎重に固めていくという。
JETPインドネシアでは、2030年までにインドネシアの電力部門の二酸化炭素排出量を最大2.9億tに抑えつつピークアウトさせ、同部門のカーボンニュートラル目標を10年前倒しして2050年までに達成し、再生可能エネルギーの導入を加速して2030年までに全発電量の34%以上にまで引き上げることを目標としている。このロードマップは、国際エネルギー機関(IEA)が2022年9月に発表したインドネシア向けのエネルギー転換ロードマップ「An Energy Sector Roadmap to Net Zero Emissions in Indonesia」がベースとなった。
一方、インドネシアの石炭火力発電は平均して稼働開始から9年しか経っておらず、廃止に向けたハードルも高い。さらに、IEAのロードマップには、「キャプティブ発電所(工場の自家消費用発電所)」が分析対象に含まれておらず、キャプティブ発電所も対象とのすべきとの声が上がったことも調整課題となっている。インドネシアでは、金属製錬プラントでのキャプティブ発電所建設計画があり、NGOは批判を強めている。
資金提供形態では、100億米ドルが支援国から、100億米ドルがGFANZ加盟機関から拠出することを想定。しかし、無償援助と有利子融資の割合や、融資条件等についても調整が続いている模様。南アフリカのJETPでは、無償援助の割合が3%だったが、インドネシアでは1.6億米ドルという1%にも満たない案を提示されたことを不満に思っているという報道もされている。
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