国際オリンピック委員会(IOC)は7月3日、アスリート向けの「メンタルヘルス行動計画」を策定した。アスリートにとって身体的な健康だけでなく、健全なメンタルヘルスとウェルビーイングが重要と捉え、2026年末までに達成すべきゴールを定めた。
IOCは今回、世界保健機関(WHO)憲章の定義を参照し、「健康とは、病気(disease)ではないとか、弱っていない(infirmity)ということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること」と言及。各国際競技連盟(IF)や各国の国内オリンピック委員会(NOC)等を通じ、スポーツ組織全体に向けたガイドとして、今回の行動計画を定めた。策定は、IOCメンタルヘルス・ワーキンググループと、WHOメンタルヘルス・ワーキンググループ、アスリート随行団委員会からの情報提供を受け、IOCの医療・科学部門が担当した。
IOCがメンタルヘルスに言及するのは今回が初めてではない。2019年にIOCメンタルヘルス・ワーキンググループが設置され、2020年7月から施行された新しいオリンピック憲章や、2022年に施行された「グッドガバナンス基礎的普遍原則」の中でメンタルヘルスは言及されている。2021年3月に承認された「オリンピック・アジェンダ2020+5」でも、メンタルヘルス対策の強化が勧告されていた。
IOCは、組織として4つ責任領域があると掲げている。1つ目が組織としてのIOC。2つ目がオリンピック大会のオーナーとしてのIOC。3つ目がオリンピック・ムーブメントのリーダーとしてのIOC。4つ目が社会におけるオリンピズム(オリンピックの精神)としてのIOC。そのため、メンタルヘルスも4つの責任領域各々にアクションを掲げた。アプローチとして、人権、科学的根拠、協働、公平の4つを重視した。
注目すべきは、競技での心理的安全を確保するため、2024年パリ五輪や2026年ミラノ・コルティナ五輪で、アスリート・ウェルフェア・オフィサーの選任数が増加することや、各NOCにメンタルヘルスの専門家を育成することや、メンタルヘルス専門家への連絡窓口を設置することを推奨。IF及びNOのセーフガーディング・オフィサーの選任率を2026年までに90%にすることを掲げた。サイバー暴力からの保護フレームワークも策定する。チェックツール「The International Olympic Committee Sport Mental Health Recognition Tool(SMHRT)」や、評価ツール「The International Olympic Committee Sport Mental Health Assessment Tool(SMHAT)」の使用数増加もKPIに置いた。
また、スポーツ団体をメンタルヘルスの擁護者としての存在になり、幅広いコミュニティにとってスポーツへのアクセスを確保していくことを目標として設定した。そのため、各国の国内オリンピック委員会(NOC)や各国の国内競技連盟(NF)に対し、社会のスポーツ参加を向上していくことを促した。
【参照ページ】New IOC Mental Health Action Plan to further focus on well-being of athletes and promoting psychologically safe environments
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