国連責任投資原則(PRI)は4月6日、2020年に開始した債券投資家と信用格付機関の対話第2フェーズに関する報告書を発表した。株式投資と債券投資でESG評価のポイントが大きく異ることが明確になった。今後対話を継続する。
PRIは2016年に、ESG要素が信用リスクに与える影響を透明にしていく共同声明「Statement of ESG in Credit Ratings」を発表。第1フェーズの活動として2017年から2019年まで3つの分析報告書を発行。2020年からは第2フェーズとして、PRIが投資家、発行体、信用格付機関(CRA)の対話の場を提供。さらにESG評価機関や投資コンサルタントも加わり、深堀り作業を進めている。
【参考】【国際】PRI、格付会社と機関投資家の信用リスク評価とESGの関係を分析したレポート発表(2017年7月21日)
【参考】【国際】PRI、信用格付とESGリスクに関する第2弾レポート発表。検討課題を整理し進捗報告(2018年6月22日)
【参考】【国際】PRI、信用格付とESGリスクに関する第3弾レポート発表。投資家と格付機関にアクション提示(2019年2月6日)
第2フェーズの対話では、投資家の中で、信用格付評価とESG評価の違いに関する混乱もみられたため、3月6日に違いを説明したウェブサイトを公表。信用格付機関は、各国で規制対象事業者になっていることや、評価の時間軸が比較的短・中期となる傾向にあること、またビジネスモデルが発行体課金であること等が記載されている。
また、信用リスクは、ESG評価よりもさらに相対的な尺度で測定されるため、同業他社比較を行うためには、依然として発行体の開示の量と質に課題があることも確認。さらに、ESGのうちSリスク評価は発展途上であり、Eの議論のほうが多いという記載もある。さらに、EとSが長期的に発行体の信用力に与えるインパクトは依然として不透明であり、アナリストが投資判断に反映させる上ではシナリオ分析が重要になることも確認された。
「Statement of ESG in Credit Ratings」の署名機関は、発足当初はS&Pグローバル・レーティング、ムーディーズ等6社のみだったが、今では日本格付研究所(JCR)、格付投資情報センター(R&I)、フィッチ、イスラム国際格付機関(IIRA)や、中国大手も多数署名し、28社にまで増えた。PRIは今後も対話を促進していく。
【参照ページ】ESG, credit risk and ratings: part 4 - deepening the dialogue between investors, issuers, and CRAs
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