日本政府は3月31日、「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定した。2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を受け、日本政府として対応方針をまとめた。2012年に策定された第5次戦略「生物多様性国家戦略2012-2020」に続く、第6次戦略となる。
【参考】【国際】生物多様性条約COP15、昆明-モントリオール生物多様性枠組を採択。ポスト愛知目標も確定(2022年12月20日)
日本の生物多様性国家戦略は、環境省が所管し、生物多様性国家戦略関係省庁連絡会議等での調整を経て、まとめられている。連絡会議の構成は、環境省が事務局で、内閣官房、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省。2012年に策定した第5次戦略では、従来から掲げていた「生物多様性を社会に浸透させる」「地域における人と自然の関係を見直し、再構築する」「森・里・川・海のつながりを確保する」「地球規模の視野を持って行動する」に加え、「科学的基盤を強化し、政策に結びつける」を盛り込み、5つの基本戦略としていた。その中では、経済・金融は変革の対象としては位置づけられいても、イネイブラー(実現者)としては想定されていなかった。
一方、今回の第6次戦略では、金融機関・投資家を重要なアクターと位置づけた。その上で新たな5つの基本戦略として「生態系の健全性の回復」「自然を活用した社会課題の解決(NbS)」「ネイチャーポジティブ経済の実現」「生活・消費活動における生物多様性の価値の認識と行動」「生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携の推進」を掲げた。各々について状態目標を3つ、行動目標を4から5個定めた。各目標に対しては、チェックしていく主な指標が定められているが、各指標レベルでの目標値はない。また指標は、アウトカムレベルではなく、アウトプットレベルのものも多い。そのため実際には「目標」と呼べるものになっていない。
2020年度までの第5次戦略では、目標数値が設定されており、2021年に点検結果が発表された。環境省は「概ね順調」としている項目が多いが、実際には大きな変革を伴う指標での未達成が目立つ。
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)開示については、「TNFDやSBTs for Nature 等の民間主導の国際枠組の動向を踏まえつつ、サプライチェーンを含む事業活動全体による生物多様性への影響及び生物多様性の損失による事業活動への影響の定量的な評価や重要性、事業活動にとってのリスクや機会、イノベーション等の可能性の分析、並びにこれらの分析に基づく目標設定や対外的な情報開示の手法について、実証事業や企業等への支援を通じて知見を集積し、技術的助言としてガイドライン等により提示・発信し、事業者の取組を促す」とした。
【参照ページ】「生物多様性国家戦略2023-2030」の閣議決定について
【参照ページ】「生物多様性国家戦略2012-2020」の実施状況の点検結果及びそれに対する意見募集(パブリックコメント)の結果について
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