EU理事会は3月28日、ガス需要を自主的に15%削減する目標を1年間延長することで政治的合意に達した。同ルールを定めた同規則は2022年8月に採択されており、今回の合意で2024年3月31日まで延長する。今後、EU理事会で正式に採択し、4月1日に発効される予定。
【参考】【ロシア】ガスプロム、ノルドストリーム1の輸送量20%削減を通知。EU理事会は自主削減で合意(2022年7月27日)
同規則では、EU理事会が「EU警報」を発令した場合には、削減が自主努力から法定義務へと転換する。今回は同ルールも延長することが決まった。またEU警報発令時には、隔月の削減報告ではなく、毎月の報告へと頻度を上げることも決まった。削減のベースラインは、2017年4月1日から2022年3月までの年度平均。
同ルールの発動以来、15%削減目標に対し、2022年8月から2023年1月の間に19%削減を達成している。
またEU理事会は同日、従来のガス網に、水素や再生可能ガスを混入させるルールを定めるEU指令制定の方向性について、EU理事会としての見解をまとめた。同指令は、既存の天然ガスネットワークに水素や再生可能ガスを混入させることを義務付け、国境を越えた相互接続の関税撤廃、注入地点での関税引下げを規定しようとしている。今後、欧州委員会及び欧州議会との調整に入る。
【参考】【EU】欧州委、カーボンニュートラルに向け具体政策発表。農業、海洋、不動産、エネルギー、通商(2021年12月19日)
今回の決定では、ガスの品質を確保するため、天然ガスシステムへの水素の混合を体積比で最大2%許容するとし、欧州委員会が提案した5%から引き下げる立場を採った。天然ガス系統での関税の減税措置については、再生可能ガスで100%、低炭素ガスで75%と区別する方針を決定。水素についてはEU加盟国が柔軟に設定できるようにする。「低炭素ガス」は、同指令で確立しようとしている概念で、再生可能ガスも低炭素ガスも、サステナビリティ認証を創設した上で、取得が求められることになる。
水素供給に関しても、ガスと同様、水素供給と水素流通ネットワークを分離することを原則としつつ、一定の条件で、水素供給事業者が、子会社を通じて水素流通ネットワークを所有・運営できるスキームも許容する。また、電力市場と同様に、水素市場に関しても、緊急時には当局が価格介入できるようにする。
同指令は、天然ガスの長期契約を2049年以降に延長することを避けることも狙っている。欧州のガス長期契約に大きな影響を与えるとみられている。
[2023年4月5日追記]
EU理事会は3月30日、同ルールを正式に採択した。
【参照ページ】Member states agree to extend voluntary 15% gas demand reduction target
【参照ページ】Gas package: member states set their position on future gas and hydrogen market
【参照エージ】Council formally adopts 15% gas demand reduction target
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