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【国際】NATO首脳会議、戦略概念2022年決議。民主主義同盟強調。気候変動も安保リスク

 北大西洋条約機構(NATO)は6月29日と30日、スペインのマドリードで首脳会議を開催。NATOの戦略を刷新する「戦略概念2022」を決議した。また、ウクライナへの支援強化、NATOの二酸化炭素排出量削減目標設定、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟手続き開始も決定した。

 今回の会議では、NATO加盟を申請したフィンランド、スウェーデン、ジョージア、そしてNATO非加盟国からは、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国も初めて参加。日本の呼びかけで別途4カ国の首脳会議も実施された。日本はNATOに対し、今後の定期的な参加も提案した。
 
 「戦略概念2022」では、集団的自衛権と集団的安全保障を確保するため、「抑止力と防衛力」「危機の予防と管理」「協力的安全保障」を3つの中核的任務とすると表明。特に、個人の自由、人権、民主主義、法の支配という共通の価値観によって結ばれているという考えを強調した。また、イノベーションへの投資、気候変動、人間の安全保障、女性・平和・安全保障の各課題をすべての中核的任務に統合することも掲げた。これにより、国土防衛だけでなく、思想・アイデンティティの防衛という要素が色濃くなった形。

 まず、環境認識としては、ロシアが、NATO加盟国の利益、価値観、民主的な生活様式に挑戦し、加盟国の主権と領土の一体性を脅かしており、安定的で予測可能な欧州の安全保障秩序に貢献した規範と原則を破っていると非難。ロシアを「同盟国の安全保障および欧州・大西洋地域の平和と安定に対する最も重大かつ直接的な脅威」と言及した。但し、対策としては、対立ではなく、「抑止力と防衛力の大幅強化」で対抗するとした。

 また、NATOとしては、中国に初めて言及し、「中国が表明している野心と強圧的な政策は、NATOの利益、安全保障、価値観に挑戦している」と非難。背景には、日本政府の強力な働きかけがあったとみられている。中国は、幅広い政治、経済、軍事手段を組み合わせ、さらにロシアとの戦略的パートナーシップも深化させながら、ルールに基づく国際秩序を破壊しているとした。対策としては、中国に建設的な関与を呼びかけた。

 他にも、アフリカと中東における紛争、脆弱性、不安定性は、NATOの安全保障に直接影響を及ぼし、特に 中東、北アフリカ、サヘル地域の状況は、気候変動の影響、脆弱な制度、健康上の緊急事態、食糧不安によって悪化しているとした。テロリズムの脅威、サイバー攻撃、宇宙空間の安全保障、侵攻テクノロジーによる新たな脅威、大量破壊兵器のリスクの増大にも言及した。

 さらに今回新たに、気候変動に関する安全保障上の記述も盛り込んだ。気候変動は、現代における決定的な課題であり、NATOの安全保障に重大な影響を及ぼすと指摘。気候変動は、紛争、脆弱性、地政学的競争を悪化させる可能性があり、さらに海面上昇、山火事、より頻繁な異常気象により、社会を混乱させ 、安全を損ない、国民の生命と生活を脅かすとした。また、気候変動は、基地、軍事インフラ等にも影響を与え、厳しい気候条件での軍事行動や、災害救助のよう製造加藤、軍隊の運用方法にも影響を及ぼすとした。

 中核的任務については、まず「抑止力と防衛力」に関しては、大幅な強化を掲げた。統合防空・ミサイル防衛の強化を含め、陸・海・空で実質的かつ持続的なプレゼンスを確保しにいく。具体的には軍備や部隊配置を増加しにいくとみられる。また、ロシアや中国を念頭に核兵器を保有する相手に対する抑止力・防衛力でも危機対応の有効性を高めるとした。サイバー攻撃では、ハッキング等だけでなく、偽情報によるプロパガンダと戦うため、民主的価値と人権を反映した責任あるデジタル技術の使用を盛り込んだ。

 また、抑止力と防衛力では、エネルギー安全保障を強化するとともに、重要インフラ、サプライチェーン、医療システムを含む戦略的脆弱性と依存性を特定し、緩和することも掲げた。国家および非国家主体による政治、経済、エネルギー、情報等のハイブリッド戦術に備える。核抑止も重視する。但し、核不拡散条約にコミットし、核兵器のない世界のための安全保障環境の構築が最終的な目的とした。

 「危機の予防と管理」では、新たな専門知識の上に戦略を構築すると表明。気候変動、食糧不安、保健衛生の緊急事態が同盟国の安全保障に及ぼす影響に備え、軍事だけでなく、文民の領域まで含めた計画や対応能力が必要とした。そうした点で、文民の保護と文民の被害軽減を含む「人間の安全保障」の概念を強調し、危機予防と危機管理に対するアプローチを中心とするとしている。その一環として、二酸化炭素排出量の削減、エネルギー効率の向上、クリーンエネルギー源への移行への投資、グリーンテクノロジーの活用をNATOとしても進め、軍事的有効性と信頼できる抑止力・防衛態勢を確保するとした。

【参考】【国際】NATO、CO2を2030年に45%減、2050年カーボンニュートラル宣言。安全保障上のリスク(2022年6月29日)

 「協調的安全保障」では、北大西洋地域の国家の独立、主権、および領土の一体性を守る目的を共有する民主主義国家にNATO加盟の門戸を開くことを掲げた。具体的には、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ジョージア、ウクライナとのパートナーシップの発展、さらにはインド太平洋を中心とした北大西洋を超えた地域の巻き込みを謳った。今回のフィンランドとスウェーデンのNATO加盟手続きもその一環とみられる。前日に両国の加盟に反対していたトルコが賛成に転じ、事態が急速に進展した。

 NATO首脳会議は同日、前日にイェンス・ストルテンベルグ事務総長が発表した、軍事と事務の双方で、二酸化炭素排出量を2030年までに45%以上削減し、2050年までにカーボンニュートラルにする目標を最終決定した。

 また、22カ国で世界初の複数国政府系ベンチャーキャピタル「NATOイノベーションファンド」も正式に発足した。同ファンドは、NATOが優先するデュアルユースの新技術を開発する初期段階のスタートアップや、その他のベンチャーキャピタルファンドに10億ユーロを投資する予定。AI、ビッグデータ処理、量子コンピューター、自律性、バイオテクノロジー、新素材、エネルギー、宇宙等の分野が中心となる。NATOはすでに「北大西洋防衛イノベーション・アクセレレーター(DIANA)」プログラムを運営しているが、今回、プログラム参画企業が、欧州と北米にある9カ所以上のアクセラレーター施設と、63カ所以上のテストセンターのネットワークにアクセスできることに合意した。

【参照ページ】NATO leaders approve new Strategic Concept
【参照ページ】NATO leaders meet with key partners to address global challenges, Indo-Pacific partners participate in a NATO Summit for the first time
【参照ページ】NATO agrees new Strategic Concept, strengthened deterrence and defence, more support for Ukraine, invites for Finland and Sweden
【参照ページ】NATO launches Innovation Fund

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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