米クレジットカード大手のマスターカードは12月3日、世界40都市による気候変動対応イニシアチブ、C40 Cities Climate Leadership Groupと提携すると発表した。「モビリティ・マネジメント」ネットワークにより、世界中の大都市をつなぐという世界初の取り組みに挑戦する。同ネットワークを通じて、深刻な大気汚染に苦しむ中国の都市などは、様々なアイデアやテクノロジーを活用して同じ問題を乗り越えてきた世界中の先進都市のデータや知見を得ることができるようになる。
モビリティ・マネジメントとは、都市における交通・移動システムを環境負荷の高い自動車中心から、公共交通機関や自転車などの低炭素な移動手段に自発的に移行させることで、環境や健康への悪影響、渋滞などを軽減するための一連の取り組みのことを指す。
新たな交通インフラ建設へ投資するよりも安価かつ迅速な効果が見込める手法として、現在では世界中の都市が地域の移動キャパシティや効率性、アクセシビリティを改善するためにモビリティ・マネジメントに取り組んでいる。ミラノの交通規制プログラム(規制区域に入る車は5ユーロかかる)「エリアC」や、ロンドンの非接触チケットシステム、サンフランシスコの「SFパーク(パーキング価格最適化システム)」、ニューヨークの「MTAバスタイム(携帯GPSを利用してバス到着時間を知らせるシステム)」プログラムなどが好事例だ。
今後、C40はマスターカードの技術および専門性を活用し、いかに多種多様な公共交通機関を統合・最適化し、都市のCO2排出を減らすかについてのベストプラクティスを世界中の都市間で共有する。
C40が11月に公表した報告書によると、C40に参画している都市の約3分の1のアクションは既にナレッジ共有されているという。マスターカードは、各都市のベストプラクティスや専門技術の共有を通じてCO2排出削減、コスト節約、そして市民の生活の質向上に向けたアクションを加速させることができるとしている。
C40の会長でリオデジャネイロ市長を務めるEduardo Paes氏は「パリのCOP21は、気候変動に対する国際的なアクションにおいて都市や非政府組織が中心的な役割を担うべきだという新たな見解を提示している。C40とマスターカードのパートナーシップは、都市と企業による革新的かつ協力的な取り組みの注目すべき事例であり、中国や米国、その他の国々が高い温室効果ガス排出削減目標を実現し、超える手助けとなるだろう」と語った。
また、同氏は「公共交通機関を大規模に拡大しているリオデジャネイロにおいて我々が見てきたように、交通システムは正しい方向に進みたい都市にとって極めて重要だ。モビリティ・マネジメントにおける新たなネットワークの構築に向けたC40とマスターカードの協働は、リオのような都市が取り組みを拡大する手助けとなるだろう」と付け加えた。
現在世界人口の半分以上が都市部に居住しており、2030年には都市人口比率が60%以上に達すると予想されるなか、都市の交通システムをいかに最適化するかは世界のCO2排出量を削減する上で大きな鍵を握っている。特に大気汚染が深刻化している中国の都市にとっては世界の先進都市の取り組み事例が大いに参考になるはずだ。マスターカードの取り組みが官民連携の成功事例としてどのように世界中の都市に広がっていくのか、今後の展開に期待したい。
【参照リリース】MasterCard and C40 Partner to Rally Megacities Around Sustainable Mobility
【企業サイト】MasterCard
【団体サイト】C40 Cities Climate Leadership Group
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