【環境】COP22マラケシュ会議いよいよ開幕 〜締約国会議論点とパリ協定未批准の日本の対応〜

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 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)パリ会議に世界が注目した昨年12月。それから1年が経ち、次の締約国会議であるCOP22マラケシュ会議が、本日11月7日から18日までかけて、アフリカのモロッコで開催されます。パリ会議で国際合意に至った「パリ協定」は、先週11月4日に無事に発効し、締約国会議にはパリ協定に規定された権利と義務が発生することになりました。それを受け、COP22マラケシュ会議では、パリ協定の第1回締約国会議も合わせて開催されることが決まっています。一方、パリ協定が発効するギリギリのタイミングの11月4日、日本政府は衆議院での審議を経て、パリ協定を国として批准する手はずを整えていましたが、国会運営に失敗し審議ができず、批准もなりませんでした。日本は未批准のまま、COP22の開催に臨むことにとなり、パリ協定第1回締約国会議にも議決権を持たないオブザーバー参加しかできないこととなりました。  このような事態となったことに、日本のメディアも批判していますが、パリ協定締約国会合にオブザーバー参加しかできないことが、一体どんな不利益があるのか、はっきりとしたことはあまり伝わってきてはいません。そもそも、パリ協定第1回締約国会議に締約国として参加するには、10月19日までに批准書を提出することが期限となっていたため、批准を11月4日までに終えていたとしてもオブザーバー参加が確定していた日本は、いまさら11月4日に批准を間に合わせる必要がなかったという言い分もありうるでしょう。また、パリ協定は、世界の気温上昇を産業革命前から2度未満に抑える、いわゆる「2℃目標」を掲げ、各国はそれに向けた自発的な温室効果ガス削減目標を国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に対して提出する義務を負うというものと理解している人からすると、すでに日本政府も、2030年度の温室効果ガス削減目標を、2013年度比で26.0%減(2005年度比で25.4%減)とするという目標を同事務局に提出済み。さらに、パリ協定の締約国会議で何を話し合い、日本は何に参加できないのかが、いまいちピンと来ないかもしれません。  しかし、全文29条からなるパリ協定は、2℃目標以外の内容が実際には書かれており、パリ協定締約国会合でも重要な案件が議論されることが決まっています。さらに、パリ協定の条文には、今回のパリ協定第1回締約国会議で審議する内容も定められており、オブザーバー参加の日本政府には、その議決に参加できないことが決まっています。今回、COP22マラケシュ開催前に、パリ協定の内容をあらためておさらいし、日本にとっての意味も整理していきます。 国連気候変動枠組条約締約国会議とは  まず、そもそも国連気候変動枠組条約締約国会議とは何かからおさらいしておきましょう。ここでのポイントは「国連気候変動枠組条約の加盟国であり、COP21にも締約国として参加していた日本は、なぜパリ協定に未批准という理由だけでCOP22にオブザーバー参加しかできないのか?」という素朴な質問に正確に答えていくことにあります。この質問に対する答えを先に言ってしまうと「いいえ、日本はCOP22に締約国として正式参加できます。」が答えとなります。すると、さきほどの「日本はオブザーバー参加しかできない」という話と矛盾するではないかと思うかもしれません。ここに、そもそも国連気候変動枠組条約締約国会議の運営の複雑さがあります。  これを理解するために、前のパリ会議に遡って考えてみましょう。パリ会議の正式名称は実は、「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)及び京都議定書第11回締約国会合(CMP11)」と言います。すなわち、COP21とCMP11という二つの会議を含んでいますよという意味です。国連気候変動枠組条約締約国会議は、国連気候変動枠組条約に締約している国の会議です。国連気候変動枠組条約は1992年に国際合意に至り、1993年に発効した条約で、日本も発効前に同条約を批准しています。その後毎年締約国会議が開かれており、昨年のパリ会議が21回目の会議でした。一方、京都議定書締約国会議は、京都議定書を締約している国の会議です。京都議定書は、1997年にCOP3で国際合意に至り、2005年に発効した条約で、日本も発効前の2002年に同条約を批准しています。その後、京都議定書の締約国だけの会議(CMP)も、毎年COPと同時に開催されており、昨年のパリ会議が11回目の会議でした。COPが気候変動という枠組みの基礎的なフレームワークを検討し、長期的な国際合意を定めるのに対し、京都議定書のCMPは京都議定書で規定された仕組みや手続きに関する詳細ルールを決定しています。日本政府は、両条約の締約国であるため、COPにもCMPにも締約国として参加しています。  この状況は、パリ協定が誕生したことにより、さらに複雑になります。今回のマラケシュ会議の正式名称は、「国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)及び京都議定書第12回締約国会合(CMP12)及びパリ協定第1回締約国会合(CMA1)」となります。11月7日から18日の間に、この3つの会議がまとめて開かれ、それぞれの条約で定められた枠内で、各会議体が様々な決議を行っていきます。この3つの中でとりわけ注目されているのが、パリ協定第1回締約国会合(CMA1)。パリ協定が誕生したことにより、実質的な意味がなくなった京都議定書締約国会議(CMP)に替わり、新たにCMAが実質的な詳細ルールの検討舞台となっていきます。パリ協定未批准の日本は、COP22とCMP12には締約国として参加できますが、パリ協定第1回締約国会合(CMA1)には締約国ではないオブザーバー参加しかできないのです。 パリ協定に書かれている内容とは    ではパリ協定第1回会合では何が話し合われるのでしょうか。これを知るためには、パリ協定の内容を見ていく必要があります。パリ協定は全文29条で、外務省の日本語仮訳では全40ページ。パリ協定で非常に有名な2℃目標については、第2条1項(a)に、 世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも2℃高い水準を十分に下回るものに抑えること並びに世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも1.5℃高い水準までのものに制限するための努力を、この努力が気候変動のリスク及び影響を著しく減少させることとなるものであることを認識しつつ、継続する とあります、この内容は条文の中のごく一部にすぎません。パリ協定には他にも様々な義務や努力義務、権利について記載されています。ちなみに、パリ協定の英語名は「Paris Agreement」。日本語に直訳すると「パリ合意」ですが、名称にかかわらず、れっきとした条約です。英語メディアなどでは、他にも「Paris Accord」「Paris Pact」などと呼ばれたりもしています。条約を意味する名称が様々使い分けられている背景には、「国連気候変動枠組条約(Convention)」、「京都議定書(Protocol)」、「パリ協定(Agreement)」と英文で、それぞれの条約を明確かつ容易に記載分けできるということがあるのではと、私自身は理解しています。 パリ協定の概要  パリ協定の全29条の内容は、大きく10のパートから構成されています。 (出所)筆者作成  簡単に概要を解説しましょう。まず、条約の目的のパートでは、2℃目標や低炭素社会分野へ資金をシフトさせることなどが書かれています。また、各国政府に対して自国の気候変動を緩和する義務を課す内容(第4条〜第5条)と、気候変動を見越した適応策を自国で実施することを課す内容(第7条〜第8条)があります。自国ではなく他国での温室効果ガス削減を自国の成果とする制度「市場メカニズム等」は第6条に書かれています。また、発展途上国に対する資金援助(第9条)、技術・能力開発援助(第10条〜第12条)があります。そして、遵守状況を明確にするため、各国の報告義務(第13条)や2023年に最初の各国実施状況レビュー会合を開くこと(第14条)、専門家委員会を設立すること(第15条)などがあります。また、締約国会議の役割、事務局の役割などを定めた組織的・手続的事項を定めた条項がその後に続きます。ちなみに、第21条は条約の発効条件に関する規定で、世界の温室効果ガス排出量合計55%以上を占め、かつ55ヶ国以上が批准(または受託)をした日から30日目の日に発効するとあります。そのため、10月5日にEUが加盟国28カ国を束ねて批准書を提出し、排出量合計56.87%、批准国数73ヶ国となった時点で、30日目の11月4日に発効することが決まりました。  パリ協定の中で、今後の交渉における論点となるのは、第6条「市場メカニズム等」です。今後各国は、自主的に定めた削減目標の達成ため、エネルギー変換や効率の向上など様々な施策を余儀なくされるのですが、実は別のオプションも残されています。それは、他国での削減実績を自国の成果に換算するという道です。この道は、京都議定書中でも、「排出量取引」「共同実施(JI)」「クリーン開発メカニズム(CDM)」を内容とする「市場メカニズム」という制度が導入されました。この3つの制度の中で、一番浸透してきたのが「クリーン開発メカニズム(CDM)」。先進国が発展途上国に対して技術・資金等の支援を行い、温室効果ガス排出量の削減または吸収量を増加する事業を実施した結果、成果の一定量を支援元の先進国の温室効果ガス排出量削減分に充当することができるというものです。この制度のもとで実施された削減量(クレジット)は「認証排出削減量(CER)」と呼ばれ、企業等も活用していましたが、厳しい審査が必要で、申請から登録まで2年ほどかかるという使い勝手の悪さが忌避され、日本以外ではあまり実績が出ていませんでした。海外では、企業が企業単位の自主目標達成のために、国の削減実績としては換算されないが、企業の実績には換算できる、審査が簡便な「VER」という制度が普及していました。そのため、CERのもととなっていた「クリーン開発メカニズム(CDM)」は今日、あまり機能しなくなっています。  パリ会議でも、市場メカニズムをあらためてどうするのかが大きな争点となりました。なかでも、他国での成果を自国での成果として取り込めるこの制度に着目をしている国が日本です。以前から、日本政府には、自国での削減努力もさることながら、自国の目標を他国での成果で達成しようとしている雰囲気がどうもあります。日本政府は、2010年頃から京都議定書の枠外で「二国間クレジット制度(JCM)」という制度を開始し、すでに複数国との間でJCMプロジェクトを締結する実績を挙げています。JCMは、支援受入国と支援実施国の二国間が合意すれば、支援受入国から支援実施国に対して削減クレジットを移す(すなわち、支援実施国の削減成果とする)ことを認める制度。CDMが条約事務局が適格性審査を行う中央管理的な制度なのに対し、各国が適格性審査を行う分散管理的な制度です。日本政府は、JCMの活用を見据え、この分散管理型の市場メカニズム制度を「協力アプローチ」という概念でパリ協定に盛り込むことに成功しました。 (出所)経済産業省「COP21の結果と今後の課題」  また、パリ協定には、「協力アプローチ」の他、従来のCDMを踏襲する「国連管理型メカニズム」も制度して盛り込まれています。さらに、市場メカニズムではなく、国が開発援助をし持続可能な発展に資する取組をした場合に認められるクレジット「非市場アプローチ」も盛り込まれましたが、「協力アプローチ」「国連管理型メカニズム」「非市場アプローチ」のいずれも、詳細なルール整備は、パリ協定締約国会合(CMA)で検討することとなっています。したがって、パリ協定締約国会合での議論が、これら「市場メカニズム等」の帰趨を、すなわち日本政府の「対外成果重視」政策を左右していくことになります。 パリ協定第1回締約国会合のアジェンダ  ここまで整理してくると、パリ協定締約国会合の重要性が透けて見えてくるかと思います。本日から始まるCOP22マラケシュ会議の一部を構成するパリ協定第1回締約国会合(CMA1)。このCMA1で最低限何を審議するかは、パリ協定の中にすでに規定があります。 第4条10項 :パリ協定での国の目標達成の共通期間について検討する 第6条7項 :「国連管理型メカニズム」制度の規定に関する規則、方法及び手続を採択する 第7条3項 :発展途上国の気候変動適応努力の確認方法を採択する 第9条7項 :先進国が発展途上国へ資金援助した際に報告する報告指針、手続を採択する 第11条5項 :発展途上国への能力開発制度実現に向けた最初の措置を採択する 第13条13項:締約国の行動及び支援の透明性確保のための方法、手続及び指針を採択する 第15条3項 :専門家委員会の運営方法及び運営手続を採択する 第16条6項 :第1回会合は、パリ協定発効日の最初のCOPの場で併せて開催する  また、「協力アプローチ」についても、第1回会合でとの明記はないものの、第6条2項に「パリ協定締約国会合は、二重計上(ダブルカウント)の回避を含む削減量計算方法指針を採択する」とあり、第1回会合の中でも具体的な審議が行われる可能性があります。「協力アプローチ」として認められる可能性があるJCMは、二国間でルールを作成することが基本。そのため、相手国毎に詳細ルールが異なっていたり、削減量の計算方法が複雑で多様になっていたりとすでに課題も指摘されています。二重計上(ダブルカウント)を防ぐ国際的なルール作りも未だ整備されていません。したがって、JCMが正式に「協力アプローチ」として扱われるかはまだ完全にはっきりとはしていませんが、日本政府はなんとかJCMを「協力アプローチ」として認めさせたいと目論んでいます。  しかし、批准が遅れた日本は、第1回会合にはオブザーバー参加しかできず、審議には加われますが、決議に加われないこととなってしまいました。すなわち、ルール交渉の場で、票を武器とした交渉力を持てないということになります。日本が渇望し盛り込んだ制度のルールに関する決議に、日本がスタートから関われないというのは、とても皮肉な結果です。 なぜ日本の批准は間に合わなかったのか  現時点でパリ協定批准状況は、署名197カ国のうち、すでに100ヶ国が批准済み。G7諸国の中での未批准なのは日本のみ。温室効果ガス排出量トップ20ヶ国(総排出量で世界の80%)の中で未批准なのは、4位ロシア、5位日本、8位イラン、16位オーストラリア、18位トルコのみの5カ国のみです。経済影響から国際合意入りを渋ってきた新興国でも、排出量トップ20のうち、1位中国、3位インド、7位韓国、9位サウジアラビア、10位インドネシア、12位ブラジル、13位メキシコ、15位南アフリカ、20位タイはすでに批准済み。どうしても先進国の中で未批准の日本の存在が目立ちます。  昨年の伊勢志摩サミットの場で、気候変動分野でのイニシアチブを発揮したと成果を誇った日本は、なぜ批准が間に合わなかったのでしょうか。原因は、パリ協定が持つ意義と海外諸国の本気度を、首相官邸と与野党が完全に見誤ったとしか言いようがありません。国会審議の時間は十分にあったからです。日本政府がパリ協定に署名したのは、4月22日の各国合同署名会の場で、その時点では他国と並んでいました。そのとき日本国内では、6月30日までの今年度通常国会の真っ最中。国会で審議しようと思えばできる状況でした。その後、衆議院は、8月1日から8月3日まで第191回臨時国会が、9月26日から今日も開会中の第192回臨時国会があり、いずれも審議のチャンスがありました。しかし、首相官邸と与野党がパリ協定批准審議の優先順位を高くしなかった結果、いつまでもたっても審議入りがなされませんでした。  確かに、各国の批准スピードは当初は速くはありませんでした。4月22日の合同署名式の後、8月末までに批准したのは、太平洋やカリブ海の小国の他、8月1日に北朝鮮が批准しているぐらい。流れが変わったのは9月3日に、米国と中国の二大経済大国が協議し、この日に同時に批准したことでした。正式には、米国は国会での批准というプロセスを必要としない「受諾」という対応を取り、国会審議をすっ飛ばしてのスピード批准を行いました。米国は京都議定書の批准を渋り、議定書の発効そのものを大幅に遅らせた大国。中国は世界最大の排出国。この両国が批准したことで、COP22開始までにパリ協定が発効し、COP22でパリ協定第1回締約国会合が開催される可能性が見えてきたため、各国は批准手続きを急いでいきます。米中批准から9月末までに新たに35ヶ国が批准。そして、10月2日には排出量世界3位のインドが、10月5日にはEUが一括批准をしたことにより、発効条件を達成。11月4日の発効が決まりました。その後、駆け込み批准でなんとか発効前の批准に漕ぎつけた国に、インドネシア、韓国、サウジアラビア、南アフリカ、ベトナムなどがあります。  米中批准後、日本も批准を急ぎ始めてはいました。三権分立を是とする日本では、政府の優先案件でも、行政府である内閣は国会での審議日程を決めることはできません。それは国会が決定します。国会の審議日程のカギを握るのは、与野党の国会対策委員会、通称国対。とりわけ与党国対は、限られた日数内で必要な審議を終えられるよう、審議案件の優先順位を検討し、案件の審議スケジュールを組み立てていきます。一方、野党国対は審議に時間をかけることを求めるため、与党国対は野党国対に対し、スムーズに案件を処理していけるように働きかけていきます。また、実際に国会の審議日程を最終的に固めていくのは衆議院と参議院に置かれた議院運営委員会。議院運営委員会の委員長や理事には与野党の国会議員が就任し、各党の国対の意向を受け、スケジュールを決めていきます。そして、最終的に開会の合図ができる、すなわち開会できる権限は、本会議は衆参議院議長、各委員会は委員会委員長が持っています。  現在開会中の臨時国会で、与党国対にとっての最優先事項は、環太平洋経済連携協定(TPP)の批准と関連法案の成立。TPP法案は審議難航が予想されていた案件でしたが、山本有二農相の失言事件が重なり野党の追及がヒートアップし、審議は停滞。なんとか今国会中に成立させたい国対と衆議院TPP特別委員会は焦りを募らせていきます。そんな中、与党国対は、衆議院先議の通例ではなく参議院で先に審議する判断を下し、パリ協定はなんとか10月28日参議院本会議を全会一致で通過。焦点は衆議院で可決できるかに絞られていきます。与党国対は衆議院本会議と各委員会の審議日程を調整しながら、ぎりぎりのタイミング、11月4日午後に衆議院本会議にかけるというスケジュールをなんとか組み立てます。こうして、COP22までに間に合うのではという希望的観測が生まれました。  しかし11月4日に不測の事態が起こります。毎日新聞の報道によると、この日、竹下亘・自民党国対委員長、大島理森・衆議院議長、佐藤勉・衆議院議院運営委員長の計画では、午後に衆議院本会議でのパリ協定を批准する手続きを行い、衆議院TPP特別委員会でのTPP承認・関連法案の採決は11月7日遅らせる予定でした。しかし、農相失言を機にTPP関連法案の審議日程が野党と折り合わなくなっていたことに焦った自民党の塩谷立・衆議院TPP特別委員会委員長は、午後になって急遽同委員会の開会を告げ審議を開始してしまいます。衆議院議員全員に出席が要請される本会議は、委員会開会中は開けないないため、この時点で本会議を開催できない事態となり、結果パリ協定の批准審議も不可能に。突如開かれたTPP特別委員会では、与党が採決を強行し、同法案が委員会を通過することとなりましたが、パリ協定が犠牲となりました。毎日新聞の報道では、塩谷立・TPP特別委員会委員長は、同じく自民党の佐藤勉・衆議院議院運営委員長に連絡しないまま委員会開会を決めた模様。特別委員会開会の報を受けた佐藤氏は激怒したと言います。  TPPは、日本政府としては、対中国交渉力を強化するための国際的な経済連携として何としても実現させたい枠組み。しかし、肝心な米国では、明日に大統領選挙を迎える2人の候補者、クリントン氏もトランプ氏も当選したら廃案にすると息巻いています。特別委員会での採決を急いだ背景には、少しでも早くTPPを批准し、他の交渉参加国に働きかけて米国の離脱を止めたいという想いがあるのでしょう。しかし、COP22を目前に、TPP批准が1日遅くなる事態より、パリ協定批准が1日遅れる事態のほうが、デメリットは大きかったと言えるのではないでしょうか。 COP22マラケシュ会議に向けて  11月4日に批准できなかったパリ協定の衆議院での批准は、11月8日に予定されているようです。しかし、それが実現できたとしても、11月7日のCOP22開幕には間に合わず、会合でもオブザーバー参加しかできないことには変わりがありません。日本は、歴史的な国際合意となったパリ協定を先導するつもりがないのではという印象を世界に与えてしまっています。パリ協定には「先進国がパリ協定目標達成を先導すべき」と記されているのにです。これでは、環境立国と自認してきた日本と、海外からの味方は食い違っていくばかりです。  この事態を招いたのは、首相官邸と与野党の認識の甘さだけではないのかもしれません。国会議員が国民の代表である以上、国会審議に影響を及ぼしている各団体や経済界、ひいては国民の認識の甘さだったとも言えるかもしれません。  COP22マラケシュ会議では、日本も公式参加できる国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)の場で、先進国から途上国への資金援助年間1,000億ドルの具体的な実施方法についても話し合わせる予定です。この支援金額は、先進国の要請により「パリ協定」本体には盛り込まれず、別文書に「2025年までに最低限、年間1,000億ドルの支援目標額を定める」と書くことで妥協が図られたためです。  世界全体の各界がCOP22マラケシュ会議の動向を見守る今週。気候変動に向き合う国際的なムードに日本政府が真摯に耳を傾けることと同時に、日本企業や日本国民にも、それに関心を寄せ続ける責務があるのではないでしょうか。 【パリ協定】外務省による日本語仮訳 【パリ協定】英語原文 【パリ協定批准状況】Paris Agreement - Status of Ratification 【参考ページ】経済産業省「COP21の結果と今後の課題」 【参考ページ】環境省「COP21の成果と今後」 【参考ページ】東京大学公共政策大学院「二国間クレジット(JCM)制度の課題と対応の方向」 【参考ページ】毎日新聞「TPP採決 自民内調整に不手際 「パリ協定」に波及」

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【北米】米国・カナダ首脳会談、気候変動や再エネ分野で共同宣言発表、幅広い合意

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 オバマ米大統領とトルドー・カナダ首相は3月10日米国ワシントンで会談し、北米全体の持続可能な経済の構築に向けた共同見解を発表した。昨年末の気候変動枠組み条約パリ会議(COP21)でまとめられたパリ協定が、気候変動対応に向けての世界的なターニングポイントとなると認識。両国がエネルギー開発や環境保護、北極地域課題の分野で協力してきた歴史を踏まえ、今後も世界規模の低炭素社会構築に向けて国際社会をリードしていく姿勢を示した。また、気候変動に係る議論に先住民の声も反映させることでも一致。メキシコへの支援を含む北米全体の気候変動対策に関する内容も盛り込んだ。  今回の共同宣言には、気候変動対策における広範囲の内容が盛り込まれた。パリ協定の履行に当っては、各国が自発的に温室効果ガス排出量削減目標を定めた約束草案(INDCs)の達成に向け、両国は詳細計画を2016年までに制定することで合意、さらに気候変動分野における途上国支援を協調させるために設立された「NAP Global Network」を通じた共同歩調を強化していく。炭素市場を活性化させることでも一致、炭素会計や削減量算出の「二重会計」を防止するための仕組みを構築する。環境規制でも連携する。石油・天然ガス産業からのメタンガス排出量を2025年までに対2012年比で40から45%削減させるため、米国環境保護庁(EPA)は来月までに同産業のメタンガス排出量削減に向けた設備導入を義務付け、カナダ環境・気候変動省は2017年早期に新たなメタンガス環境規制を開始させる。さらに、両国は、1991年の米加大気環境協定に基づく連邦政府レベルの政策連携強化、メタンガスデータ測定方法の向上でも協力すると同時に、世界銀行が進める油田・ガス田でのルーティーン・ガスフレアリングを撲滅させるイニシアチブ「Zero Routine Flaring by 2030」にも参加することも発表した。  パリ協定での内容を超える分野については、今年開催される「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」締約国会合で、HFC(ハイドロフルオロカーボン)規制強化の採択を目指すことや、採択に向け財政支援の仕組みを強化することで合意した。また、今年秋の国際民間航空機関(ICAO)会議では航空機の炭素規制やカーボンオフセットの導入を目指す。G20の場を通じて各国国内の燃費効率化や温室効果ガス排出に関する規制強化を求めることでも合意した。再生可能エネルギーの分野では、米加を越境する再生可能エネルギー送電網の促進、共通の省エネラベル「Energy Star」プログラムの拡大で合意に至った。  環境懸念が強まる北極圏地域での保護についても前進した。まず、科学的根拠に基づく生物多様性保護に向けて、2020年までに陸地の17%、海洋の10%を保全する共通目標を掲げる。環境保護への取組内容を決める上では、現地政府や先住民の伝統的な知見も採り入れていく。また、北極圏での持続可能な発展に向け、低炭素型航路の北極圏整備、漁獲高規制に向けた国際協定の制定、効果的な油田管理と非常時対応を含む分野で科学的根拠に基づく基準への遵守を実現していくことでも共同していく。    2015年12月のCOP21におけるパリ協定後、各国では具体的な政策や規制強化に向けた動きが進んでいるが、米国では対策強化に向けた意見が割れている。任期満了まで1年を切ったオバマ政権は環境規制に躍起になっており、カナダ政府を巻き込む形で政策を確たるものにしたい思いがある。米国との間で 共通の経済圏を形成するカナダの対応が今後、どのように米国に影響を与えていくか。注目が集まる。 【参照プレスリリース】U.S.-Canada Joint Statement on Climate, Energy, and Arctic Leadership

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【アメリカ】Gap、2020年までに2015年比で温室効果ガス排出を50%削減へ

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 米アパレル大手のGapは1月21日、2020年までに世界中の自社工場および施設から排出される温室効果ガス排出量を2015年比で50%削減するという野心的な新目標を公表した。これは、昨年12月に気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ合意を踏まえてのものだ。  この新たな目標は同社のグローバルサステナビリティ報告書、"Our Futures are Woven Together"の中で公表されたものだ。同報告書の中では環境面の目標以外にも労働条件の向上や機会と平等など、幅広い分野における同社の取り組みの進捗状況がまとめられている。  報告書の冒頭で、同社CEOのArt Peck氏は「変化は起こすことができる、ではなく、起こさなければならないものだ。我々の未来はつながっており、行動を起こすしかない」と述べ、自社としての決意を明確に示した。  また、Sustainable Innovation部門のシニアディレクターを務めるMelissa Fifield氏は「当社では環境問題は根源的には人権問題であると考えている。そしてより持続可能な環境作りは当社の事業成功に必要不可欠な要素であるとも考えている。持続可能な環境作りへの取り組みを事業戦略や企業方針と融合させていくにつれ、事業に関わる人々へ良い影響があるだけでなく、当社が企業としてさらに進化する為にも非常に有効だと気がついた。今後我々が取り組まなければならない事は多くある。確固たる信念を持ち、より平等で持続可能な社会作りを目指し、当社の衣料品作りに携わる人々の安全と安心を守っていきたいと考えている」と述べた。  Gapはアパレル業界の中でもいち早く2003年からCSRに関する包括的な報告書を公表し、以降は継続してバリューチェーン全体における環境や社会面への影響改善に取り組んできた。同社は2008年、2015年までに米国の事業運営における温室効果ガス排出絶対量を20%削減するという目標を掲げ、結果として目標を大幅に上回る37%の削減に成功したという実績を持つ。これらの経緯も踏まえると、今回の新たな目標の達成にも大いに期待がかかるところだ。  また、同社は温室効果ガス排出の削減以外にも、環境面における目標として2020年末までに米国内の自社施設から出る廃棄物転換(資源化)を80%まで高める、2020年までに製造時の有害化学物質の使用を撤廃するなどの目標を掲げている。  Global LogisticsのExecutive Vice PresidentでありEnvironmental CouncilのExecutive SponsorであるShawn Curran氏は、「今回掲げた目標は前例のないレベルの高い目標だが、我々は皆限りある資源に依存し、それを共有している。温室効果ガス削減や廃棄物再利用の目標を企業活動における優先事項として事業に組み込むことは社会的に正しいというだけでなく、イノベーションや費用削減の新しいアイデアを生むものでもあるとも考えている」と述べた。  サステナビリティ先進企業として知られるGapは、常に高い目標を掲げ続けることで業界全体を鼓舞しながらイノベーションを促進してきた。2020年までの5年間で同社の事業やサステナビリティ戦略がどのような進化を遂げるのか、引き続き注目したい。 【レポートダウンロード】Gap Inc. Global Sustainability 【企業サイト】Gap Inc. (※写真提供:Ken Wolter / Shutterstock.com)

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【国際】COP21が企業の気候変動対応方針強化のきっかけに。InfluenceMap調査

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 気候変動対応を推進する英国のNPO、InfluenceMapは1月、昨年12月にパリで開催されたCOP21が、開催前および開催期間中においてグローバル企業らの気候変動対応に関する目標や方針にどの程度の影響を及ぼしていたか("Paris Effect"、以下「パリ効果」)についての分析結果を公表した。  その結果、大手グローバル企業100社のうち半数以上にあたる53%が、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が指摘している地球の温度上昇を2℃以内に抑える上で必要とされる温室効果ガス排出削減量に沿った削減方針および目標を掲げていることが分かった。また、31%の企業は炭素税や排出権取引といった炭素価格制度に関する規制強化を求めていることが分かった。  InfluenceMapは、We Mean BusinessキャンペーンやAmerican Business Act on Climate Change などの影響により、COP21開催までの3ヶ月間でグローバル企業各社の気候変動対応方針が大きく改善されたことを受け、COP21の存在は明らかに企業の行動を変えるきっかけとなったと分析している。  具体的には、グーグルやアップルなどを含む数多くの企業が米国のクリーン・パワー・プランの実施などを含めたより強い規制の推進を支持する企業らによる誓約、American Business Act on Climate Changeにコミットメントした点や、ネスレやドイツテレコムなどリーディングカンパニーのCEOらが、世界経済フォーラムが世界中のビジネスリーダーらに送付した、炭素価格やグローバル及び国家レベルにおける科学的根拠に基づく排出削減目標の設定などに関する国際基準の策定に向けた議論を進めるよう求める書面を支持した点を挙げている。  また、アップルのティム・クック氏やユニリーバのポール・ポールマン氏などをはじめとする世界中の数多くのCEOが、COP21に向けてより野心的かつ早急な気候変動対応に向けた合意を求めた点もその表れだとしている。  InfluenceMapは、気候変動方針および対応状況に応じて、グローバル企業各社を「True Leader(真のリーダー):積極的な気候変動対応を支持し、実際にその動きに関わっている」「Silent Leader(静かなリーダー):化石燃料との関わりには消極的だが、気候変動規制の強化に向けた活動の優先順位はそれほど高くない」「Occasional Laggards(ラガード予備軍):気候変動規制の強化から恩恵もデメリットもないものの、事業活動の一部が気候変動対応を進める妨げとなっている」「Active Laggards(アクティブ・ラガード):事業を化石燃料に高く依存している」の4タイプに分類している。  Ture Leaderにはユニリーバやナショナル・グリッド、Silent Leaderにはグーグルやアップル、テスラ、ネスレ、Occasional Laggardsにはフォックスコンや三菱、三井、Active Laggardsにはエクソン・モービル、ダウ、BSAFなどが分類されている。  なお、InfluenceMapはCOP21が開催される前の2015年10月と、開催後の2016年1月という2つの時点における企業の気候変動方針・エンゲージメントスコアのランキングを公表している。この結果もCOP21の開催前と開催後では大きく変化しており、2015年10月時点のTOP5はユニリーバ(B)、グーグル(B)、グラクソ・スミスクライン(B-)、ドイツテレコム(B-)、シスコ・システムズ(B-)だったが、2016年1月にはドイツテレコム(B+)、グラクソ・スミスクライン(B+)、ユニリーバ(B+)、ナショナル・グリッド(B+)、アンハイザー・ブッシュ(B)に入れ替わり、全体の評価自体もB-中心からB+中心へと大きく変化した。  InfluenceMapのレポートにある通り、COP21が大手グローバル企業に限らず世界中の多くの企業にとって一つの大きな転換点になったことは間違いない。世界全体として目指すべき目標の方向性が定まった今、企業が自社の事業の持続的成長を実現するためにはこの方針に沿った戦略の策定が必須となる。  2016年は具体的な行動の年となる。COP21の影響も受けて野心的な目標を掲げた企業らが具体的にどのような野心的な行動に取り組んでいくのか、引き続き注目したい。 【レポートダウンロード】A tipping point in corporate attitudes to climate policy An InfluenceMap Update 【参照リリース】A tipping point in corporate attitudes to climate policy An InfluenceMap Update 【団体サイト】InfluenceMap (※写真提供:Petr Kovalenkov / Shutterstock.com)

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【国際】気候変動対応と経済成長に関するポジティブな投稿が過去3年で700%増

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 COP21が開催された2015年は、気候変動への対応は経済成長を妨げるものではなく、むしろ促進するものだという考えが世界中に広まった年となったようだ。気候変動と経済成長の関係について分析している国際イニシアチブのNew Climate Economy(以下、NCE)の調査によると、ソーシャルメディア上における気候変動対応と経済成長に関するポジティブなメッセージ発信は過去3年間で7倍に増加したことが分かった。  NCEはコロンビア、エチオピア、インドネシア、ノルウェー、韓国、スウェーデン、英国の7カ国によるイニシアチブで、今回NCEの調査チームはソーシャルメディアデータ分析大手のクリムゾン・ヘキサゴン社のソフトウェアを活用してソーシャルメディア上のモニタリングを実施した。  調査チームが2013年1月から2015年12月の間に世界中でツイッターやフェイスブック、ブログなどに投稿された43万の投稿を分析した結果、2014年6月以前の1年半と以降の1年半で、気候変動対応と経済成長に関するポジティブな投稿は約700%増加していることが分かった。また、気候変動対応と経済成長の両立可能性を支持するユーザーのメッセージは約1500%増加し、なお、気候変動はコストがかかるなどのネガティブなメッセージは約15%減少した。 Volume of Posts about Climate Action and Economic Growth up to 13 December 2015 (※New Climate Economy より引用) Proportion of Posts about Climate Action and Economic Growth to 13 December 2015 (※New Climate Economy より引用)  これらの変化は、世界の産業界や投資家ら、政府らが気候変動と経済成長の関連性を認識し、双方の目標は互いに両立しうるという考えが世界中に広まったことを示唆している。気候変動への対応は大きな経済機会であり、逆に対応を怠ることは大きな経済上のリスクであるという認識が一般化すればするほど、より多くの資金が気候変動対策に流入し、結果として機会がさらに拡大するという好循環が生まれる。COP21でパリ合意が実現した今、2016年はソーシャルメディア上での発信を実際の行動へと変えていく年だ。  なお、今回モニタリングソフトウェアを提供したクリムゾン・ヘキサゴンも今回の結果に関する洞察レポートを公表している。 【レポートダウンロード】Social Analytics Supports New Climate Economy's Perception Initiative 【参照リリース】Positive social media discussion on climate action and economic growth up by 700% in last 3 years, analysis finds 【参考URL】New Climate Economy

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【オランダ】ユニリーバ、2030年までに「カーボン・ポジティブ」を実現へ

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 消費財大手のユニリーバは11月27日、同社の気候変動目標として2030年までに「カーボン・ポジティブ」を達成すると発表した。2020年までにエネルギーミックスから石炭を排除し、送電網から購入するエネルギーの全てを再生可能エネルギーに切り替え、2030年までに事業運営を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す。  さらに、2030年までに自社で使用する以上の再生可能エネルギー創出を直接的に支援し、余剰分については事業を展開する市場や地域に提供することで「カーボン・ポジティブ」の実現を目指す。  事業成長と共に環境負荷を削減するというコミットメントは同社が5年前に公表したサステナビリティ戦略のUnilever Sustainable Living Plan(ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン)にも記載されているものの、事業運営を100%再生可能エネルギーで賄うという目標に対して具体的な期限を設定したのは今回が初めてとなる。  ユニリーバは今年の2月、サステナビリティを推進するグローバル企業のCEOらによるイニシアチブ、B Teamの一員として世界のリーダーらに「2050年までにネット・ゼロ・カーボンの実現」を呼びかけるキャンペーンに参加したほか、再生可能エネルギー100%を目指す企業らによるRE100イニシアチブにも名を連ねている。  また、同社はCDPや国連グローバルコンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)らとの協働イニシアチブで、科学的根拠に基づくCO2排出削減目標の設定を推進するScience Based Targetsにも参加するなど、気候変動対応の分野において常にリーダーシップを発揮してきた。  ユニリーバは、今回の新たな目標はあくまで同社のサステナビリティ戦略の一部に過ぎず、今後も引き続きグローバルサプライチェーンにおける森林破壊の撲滅、持続可能な農業の支援、気候変動政策に関するアドボカシー活動、消費者の水・エネルギー使用量削減やリサイクル支援などを通じて事業変革を推進していくとしている。  今回の目標公表にあたり、ユニリーバのCEOを務めるPaul Polman氏は「パリの気候変動会議(COP21)は絶好の機会だ。しかしそれらは終着点ではなく出発点だ。我々全員が野心を実際の解決策に変えることで今すぐに行動を起こす責任がある。それこそが今日、事業から化石燃料を取り除き、消費する以上の再生可能エネルギーを生み出すことで2030年までにカーボン・ポジティブを実現すると表明し、我々の取り組みをさらに前進させる理由でもある。我々が成し遂げたことを次世代が誇れるようにしようではないか」と語った。  積極的に気候変動対応に取り組む企業らが「CO2排出を数十%削減」「カーボン・ニュートラルを実現」など次々と野心的な目標を掲げる中、ユニリーバはそれよりも更に高い「カーボン・ポジティブ」を実現するというコミットメントを公表した。同社が自主的に高いコミットメントを掲げる背景には、気候変動への対応はリスク管理であると同時に、コスト削減やエネルギー調達のレジリエンス強化、顧客との関係強化など、様々な利益をもたらす戦略的な機会だという認識がある。常に高い目標を掲げることでイノベーションのきっかけを創り出し、リーダーシップを発揮している同社の姿勢から学ぶべき点は多い。 【参照リリース】Unilever to become ‘carbon positive’ by 2030 【企業サイト】Uniliver 【参考サイト】B Team 【参考サイト】RE100 【参考サイト】Science-Based Targets 【参考サイト】Unilever Sustainable Living Plan (※写真提供:Casper1774 Studio / Shutterstock.com)

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【国際】マスターカード、世界中の都市のCO2排出削減に向けてモビリティ・マネジメント・ネットワークを構築へ

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 米クレジットカード大手のマスターカードは12月3日、世界40都市による気候変動対応イニシアチブ、C40 Cities Climate Leadership Groupと提携すると発表した。「モビリティ・マネジメント」ネットワークにより、世界中の大都市をつなぐという世界初の取り組みに挑戦する。同ネットワークを通じて、深刻な大気汚染に苦しむ中国の都市などは、様々なアイデアやテクノロジーを活用して同じ問題を乗り越えてきた世界中の先進都市のデータや知見を得ることができるようになる。  モビリティ・マネジメントとは、都市における交通・移動システムを環境負荷の高い自動車中心から、公共交通機関や自転車などの低炭素な移動手段に自発的に移行させることで、環境や健康への悪影響、渋滞などを軽減するための一連の取り組みのことを指す。  新たな交通インフラ建設へ投資するよりも安価かつ迅速な効果が見込める手法として、現在では世界中の都市が地域の移動キャパシティや効率性、アクセシビリティを改善するためにモビリティ・マネジメントに取り組んでいる。ミラノの交通規制プログラム(規制区域に入る車は5ユーロかかる)「エリアC」や、ロンドンの非接触チケットシステム、サンフランシスコの「SFパーク(パーキング価格最適化システム)」、ニューヨークの「MTAバスタイム(携帯GPSを利用してバス到着時間を知らせるシステム)」プログラムなどが好事例だ。  今後、C40はマスターカードの技術および専門性を活用し、いかに多種多様な公共交通機関を統合・最適化し、都市のCO2排出を減らすかについてのベストプラクティスを世界中の都市間で共有する。  C40が11月に公表した報告書によると、C40に参画している都市の約3分の1のアクションは既にナレッジ共有されているという。マスターカードは、各都市のベストプラクティスや専門技術の共有を通じてCO2排出削減、コスト節約、そして市民の生活の質向上に向けたアクションを加速させることができるとしている。  C40の会長でリオデジャネイロ市長を務めるEduardo Paes氏は「パリのCOP21は、気候変動に対する国際的なアクションにおいて都市や非政府組織が中心的な役割を担うべきだという新たな見解を提示している。C40とマスターカードのパートナーシップは、都市と企業による革新的かつ協力的な取り組みの注目すべき事例であり、中国や米国、その他の国々が高い温室効果ガス排出削減目標を実現し、超える手助けとなるだろう」と語った。  また、同氏は「公共交通機関を大規模に拡大しているリオデジャネイロにおいて我々が見てきたように、交通システムは正しい方向に進みたい都市にとって極めて重要だ。モビリティ・マネジメントにおける新たなネットワークの構築に向けたC40とマスターカードの協働は、リオのような都市が取り組みを拡大する手助けとなるだろう」と付け加えた。  現在世界人口の半分以上が都市部に居住しており、2030年には都市人口比率が60%以上に達すると予想されるなか、都市の交通システムをいかに最適化するかは世界のCO2排出量を削減する上で大きな鍵を握っている。特に大気汚染が深刻化している中国の都市にとっては世界の先進都市の取り組み事例が大いに参考になるはずだ。マスターカードの取り組みが官民連携の成功事例としてどのように世界中の都市に広がっていくのか、今後の展開に期待したい。 【参照リリース】MasterCard and C40 Partner to Rally Megacities Around Sustainable Mobility 【企業サイト】MasterCard 【団体サイト】C40 Cities Climate Leadership Group

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【国際】大手建設企業ら11社、2030年までにエネルギー使用量を50%削減へ

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 建設業界の大手企業ら11社は12月3日、持続可能な開発を目指すグローバル企業ら約200社で構成されるWBCSD(World Business Council for Sustainable Board:持続可能な発展のための世界経済人会議)の支援のもと、エネルギー効率化などを通じて建設時のエネルギー使用量を2030年までに50%削減するというアクションプランを公表した。    参加企業はアクゾノーベル、アルカディス、エンジー、インフォシス、ラファージュホルシム、レクセル、シュナイダーエレクトリック、SGS、シーメンス、スカンスカ、ユナイテッド・テクノロジーズの11社。同プランはWBCSDが150以上の企業および70以上のパートナーと協働して低炭素技術の開発、展開、拡大を推進しているLow Carbon Technology Partnerships initiative(LCTPi)の活動の一環だ。  今回のプランは、COP21の中で行われたLima Paris Action Agenda(リマ・パリ行動アジェンダ)の建設に関するテーマセッションの中で公表されたもので、同日には併せて世界20ヶ国による建設業界の気候変動対応イニシアチブ、Global Alliance for Buildings and Constructionの設立も発表された。同イニシアチブにはアルメニア、オーストリア、ブラジル、カメルーン、カナダ、フィンランド、フランス、ドイツ、インドネシア、日本、メキシコ、モロッコ、ノルウェー、セネガル、シンガポール、スウェーデン、チュニジア、ウクライナ、UAE、米国、ベトナム、および60以上の団体が参加しており、地球の気温上昇を産業革命以前と比較して2℃未満に抑えるという目標の達成に向け、建設業界における温室効果ガス排出削減および気候変動にレジリエントな都市およびインフラの開発を推進する。  建設業界においてエネルギー効率を大規模に改善する上で一番の障壁となっているのは、複雑に細分化された業界特有のバリューチェーンだ。今後、LCTPi on Energy Efficiency in Buildings(LCTPi-EEB)の参加企業11社はローカル市場のステークホルダーらと協働しながらこの障壁に対する共通理解を深め、問題解決に向けたアクションを主導していく。  WBCSDのCEOを務めるPeter Bakker氏はアクションプランの公表に際し、「世界中の建築分野でのエネルギー効率化に向けたローカルアクションの明快な手法を示している。このようなプランの進展にはパートナーシップが鍵となる。Global Alliance for Buildings and Constructionのような連携が建築分野での地域レベル、国際レベルでの協働に極めて重要だ」と語った。  LCTPi-EEBプログラムは、WBCSDがラファージュホルシムおよびユナイテッド・テクノロジーズと共同で展開してきた建設業界のエネルギー効率化推進プロジェクト、Energy Efficiency in Buildings 2.0 projectをベースとしている。2013年以降、同プロジェクトは「問題意識の醸成とリーダーシップ」「ワークフォース・キャパシティ(研修および技術向上)」「資金援助」「政策・規制」という4分野にフォーカスし、エネルギー効率化に向けた障壁を取り除くための地域レベルのアクションプランを提供する10のイニシアチブを試験運用してきた。  また、EEB 2.0プロジェクトは同日、自社施設のエネルギー効率化に投資をする企業のための手引き、Energy Efficiency Toolkit for Buildingsも公表した。同ツールキットにはEDF、インフォシス、ノバルティス、SGS、スカンスカらの事例も含まれている。 【参照リリース】Building sector steps up to reduce energy use in buildings by 50% by 2030 【参照リリース】Unprecedented Global Alliance for Buildings and Construction to Combat Climate Change 【参考サイト】Low Carbon Technology Partnerships initiative (LCTPi) 【参考サイト】Global Alliance for Buildings and Construction 【団体サイト】WBCSD

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【国際】気候変動対応の鍵を握るカーボン・プライシング ~COP21パネルディスカッションより

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 企業や国家による気候変動対応を加速させるためのツールとして期待されているのが「カーボン・プライシング(炭素価格制度)」だ。カーボン・プライシングとは、排出権取引制度や炭素税など、炭素排出に価格(コスト)を設定することで排出削減に対する経済的インセンティブを創出し、気候変動対応を促す仕組みのことを指す。  パリで開催されたCOP21においても、サイドイベントとして12月4日にカーボン・プライシングに関するパネルディスカッションが開催された。当日は会場の参加者から「炭素に価格を付けることは気候変動の国際的な取り組みの成功に不可欠だ」という声が聞かれるなど、その重要性が話し合われた。  世界銀行グループの気候変動特使を務めるRachel Kyte氏は「カーボン・プライシングは唯一の方法ではない。ただし、必要不可欠な方法だ。我々は成長モデルから炭素汚染を取り除く必要があり、それにはエネルギー政策、エネルギー補助金の改革、そしてカーボン・プライシングの導入が伴う」と話す。  カーボン・プライシングに関する取り組みは世界各国で進んでいる。中国では排出量取引制度について7つのパイロットが行われており、これを2017年までに国家レベルに引き上げることを表明した。中国の気候変動戦略および国際協力国立センター(National Center for Climate Change Strategy and International Cooperation)の副長官を務めるQimin Chai氏は、排出量取引制度における炭素価格が十分確保されれば、国の開発を促し、再投資を通じて景気の刺激になるとしたうえで、鍵となるのは気候変動を招く行動に「費用と効果」の概念を導入することだと説明した。  また、カナダのケベック州は2013年に排出量のキャップ・アンド・トレードを導入、翌年には米国カリフォルニア州の同制度と連携した。同州の1トンあたりの炭素価格は安定的に上昇し、景気を損なうことなく緩やかな移行が継続されている。カナダのオンタリオ州やマニトバ州もキャップ・アンド・トレードによる排出量取引に取り組む意思を発表しており、ブリティッシュコロンビア州は7年間にわたり炭素税を導入、アルバータ州も炭素税を計画している。ケベック州開発・環境・気候変動局長官を務めるDavid Heurtel氏は「国や地域は統合的な(炭素の)価格付けを行い、その制度に立脚することが重要だ」と述べた。  民間企業から唯一のパネリストとして参加した欧州のセメント会社、LafargeHolcimのBruno Lafont氏は、一部地域だけで炭素価格が設定されると競争が不公平になる可能性があり、カーボン・プライシングはグローバル全体で適用されることが重要だと主張した。同氏は、産業界は安定性と予測可能性を必要としており、あらゆるカーボン・プライシングシステムも企業競争に歪みを生むことは避けなければならない、と語った。  世界銀行の調査によると、現在世界では約40カ国、20以上の自治体が排出権取引や税制などの炭素価格制度を既に試験運用中か導入予定で、2014年時点で排出権取引の市場規模は世界全体で約300億米ドルに達しているという。今回のCOP21では国際的な目標および枠組み作りについて話し合われたが、これから大事になるのはカーボン・プライシングをはじめとする目標達成に向けた具体的な取り組みや制度設計だ。COP21のパリ協定にて気候変動に対する世界全体の方向性が定まった今、カーボン・プライシングも更に裾野が広がることを期待したい。 【参照リリース】Carbon Price Needed for Climate Change Success International Panel Discussion at COP 21  【関連サイト】気候変動枠組条約(UNFCCC)

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【国際】開発途上国、再エネと効率化で2020年までに1.7ギガトンの温室効果ガス削減が可能

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 各国の再生可能エネルギーおよびエネルギー効率化による温室効果ガス削減量の測定・報告支援を行っている国際フレームワークの1 Gigaton Coalitionは12月7日、パリで開催されたCOP21の中で初めてとなる年次報告書、"Narrowing the Emissions Gap: Contributions from renewable energy and energy efficiency activities(排出ギャップを埋める:再生可能エネルギーとエネルギー効率化の貢献)"を公表した。  同団体はノルウェー政府の支援のもと、UNEP(国連環境計画)が取りまとめている自主的な枠組みで、データ収集や測定手法の開発などを通じて特に各国のエネルギーセクターにおける温室効果ガス削減の測定及び報告を支援している。  今回公表された報告書によると、開発途上国における再生可能エネルギーとエネルギーの効率化を目的とする6,000プロジェクトを調査した結果、2020年までに1.7ギガトンのCO2排出量を削減できることが分かった。これは、2005年から2012年の間に実施されたプロジェクトを現在のレベルで活動を継続することを前提としたもので、今後、更なる投資により削減量はさらに拡大する可能性があるという。  ノルウェーの外務大臣Børge Brende氏は「1 Gigaton Coalitionが初めて発表した報告書は、エネルギーセクターから削減される排出量を数値化する重要なステップとなった。これはパリ会議での推進力を得て継続的に再生可能エネルギーとエネルギー効率を促進すればどのような成果が得られるのか、多くの政府組織とイニシアチブに示すことになった」と述べた。  また、UNEPのエグゼクティブ・ディレクターを勤めるAchim Steiner氏は「気候変動に取り組む開発途上国の再生可能エネルギーとエネルギー効率の潜在力を過小評価してはならない。今回対象になった数々のプロジェクトは単に排出ギャップを埋めるだけではなく、その国の社会と経済の発展に欠かせないものだ」としている。  COP21での合意を受けて、今後は先進国から開発途上国に対するクリーンエネルギー関連の投資や資金援助も加速することが予想されるが、それらの支援が継続・拡大するためには、投資の成果が目に見える形で定量的に測定・報告されることが重要だ。  開発途上国の低炭素経済へのシフトは世界全体の気候変動対応の鍵を握るテーマでもある。今後、1 Gigaton Coalitionの支援を受けてさらに各国の取り組みが進展することを期待したい。 【レポートダウンロード】Narrowing the Emissions Gap: Contributions from renewable energy and energy efficiency activities 【参照リリース】Actions on Renewable Energy and Energy Efficiency in Developing Countries Could Reduce Emissions by 1.7 Gt/year by 2020 【団体サイト】1 Gigaton Coalition

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