スイス食品大手のネスレは11月23日、同社のシーフードのサプライチェーン上における強制労働や人権侵害などに対する懸念の高まりを受けて、同社がタイから調達しているシーフードに関わる違法労働の撲滅に向けたアクションプランを公表した。
同プランには労働者を虐待や酷使から保護し、労働条件の向上や児童・未成年者の労働に関する容認できない慣行への対処するための一連の行動規範が盛り込まれている。
アクションプランの公表について、ネスレの業務担当副社長を務めるMagdi Batato氏は「ネスレはタイのシーフード・サプライチェーンにおいて強制労働を排除することにコミットしている。他のステークホルダーと共にこの深刻かつ複雑な問題に取り組んでいる。今回のアクションプランは、許しがたい実態により被害を受ける可能性のある人々の生活の向上のために有益だと確信している。迅速な解決策も容易な解決策もないが、数か月後に大きな進展が見られることを期待している」と語る。
今回のアクションプランには、ILO(国際労働機関)が定めた国際労働基準の第29条や105条等の関連条約、そして「ネスレ・サプライヤー行動規範」、「ネスレ責任調達ガイドライン」の遵守を基本的な方針に据え、具体的には以下のような項目が設定されている。
- 緊急対応チーム:漁業労働者を強制労働から保護し、必要とされる支援の実施
- 苦情処理制度:労働者が外部の支援者にアクセスし、匿名でレポートできるシステムの確立
- 漁船内の監査プログラム:第三者によりランダムに選んだ漁船の労働環境を調査すると共に、労働者にインタビューを行い、これまでの経験、労働環境、生活状況等についての実態を把握
- 漁船の所有者や船長に対するトレーニング:シーフードのトレーサビリティ、労働者の雇用や契約、労働条件や給料等についての意識改革や注意喚起を促す教育・訓練を他の企業やNGOとの協働で実施
- 労働者への啓発キャンペーン:主として漁業現場で働く労働者に対し、人権や労働基準についての意識向上を目指す取り組みを実施
ネスレは今年の8月、奴隷労働を行っているタイの業者から調達したシーフードであることを知りながらそれらを同社の販売するキャットフード、"Fancy Feast"の原材料に使用したとして、消費者らから米ロサンゼルスの連邦裁判所に集団代表訴訟を起こされていた。
今や消費者は、自身が手に取るものが「何」で作られているかだけではなく、「誰」の手によって「どのように」作られているかも気にかけるようになってきている。サプライチェーン上の人権問題を自社の課題と捉えて解決に取り組むことは、企業の社会的責任であるだけではなく、消費者から選ばれるブランドになるための必須要件となりつつある。
今回のアクションプランにより、今後タイにおける労働慣行がどこまで変革できるのか、真価が問われるのはこれからだ。
【アクションプランダウンロード】Actiom Plan
【参照リリース】Nestlé takes action to tackle seafood supply chain abuses
【企業サイト】Nestlé
(※写真提供:gnomeandi / Shutterstock.com)
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