持続可能な稲作を推進しているサステナブル・ライス・プラットフォーム(以下、SRP)は10月27日、世界初となる持続可能な米に関する国際基準を公表した。SRPは、UNEP(国連環境計画)およびIRRI(International Rice Research Institute:国際稲研究所)が主導する農業研究機関、農業関連企業、公的機関、市民団体らによる協働イニシアチブだ。
今回公表されたSRP Standard for Sustainable Rice Cultivation(持続可能な稲作に関するSRP基準)は、小規模稲作農家による米生産の維持、稲作による環境負荷の削減、そして消費者の安全かつ高品質な食品ニーズへの対応を目的とするもので、稲作に関わる環境・社会・経済面の基準が設定されている。
基準の開発を主導したのはSRP会員およびUTZ Certified、環境NGOのAidenvironment、そしてIIRIだ。サトウキビや綿、コーヒー、パーム油などこれまでの世界の持続可能な農産物に関する基準開発の経験を踏まえて策定された。
基準の中身は生産性や安全性、農作業者の健康、労働者の人権、生物多様性など46の要件から構成されており、農家や市場のサプライチェーン関係者が米を取り巻くシステム全体のサステナビリティを評価、モニタリングし、進捗を測定するための一連の定量的な評価指標が用意されている。
現在、米は世界の食糧確保に重要な役割を果たしており、途上国に暮らす1.4億人以上の農家の生計を支えている。一方で、稲作が環境に大きな負荷を与えているのも事実だ。稲作は世界の真水の30~40%を使用しており、人為的な温室効果ガス排出の5~10%を占めている。さらに、農薬など農業関連製品の非効率な使用も長期的なサステナビリティ課題の一つだ。
今後、新たなSRP基準および指標は複数地域の農家において試験運用され、政府機関や研究機関、多国籍企業らによる検証を経てSRP およびIRRIによる調整が行われる予定だ。最終的には、付加価値の高い持続可能な米の第三者認証として、さらに政策立案者にとってのベンチマークとなることが目指されている。
UNEPアジア・太平洋地域事務局の代表者を務めるKaveh Zahedi氏は「米はアジア・太平洋地域に住む大部分の人々にとっての主食となっている。米は社会構造の一部であり、経済、社会、宗教など、我々の生活の多くの側面に影響を及ぼしている。今回設定されたSRPの基準および指標は、米という必需品の生産がより持続可能になり、人々や地域、そして地球全体への恩恵を確かなものにする手助けとなるだろう」と語る。
米は世界的にも重要な農作物の一つでありながら、これまで信頼性の高いサステナビリティ基準が存在していなかった。今回のSRP基準は米を取り巻くサプライチェーン全体のサステナビリティを向上させる大きな第一歩となる。
【基準ダウンロード】SRP Standard for Sustainable Rice Cultivation
【指標ダウンロード】SRP Performance Indicators for Sustainable Rice Cultivation
【参照リリース】New UN-Supported Rice Management Standard Sets Benchmark for Environmentally Sustainable and Socially Responsible Rice Cultivation
【団体サイト】UNEP
【参考サイト】International Rice Research Institute
【参考サイト】Sustainable Rice Platform
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