米エネルギー大手ドミニオン・エナジーは7月5日、全てのガス輸送・貯蔵事業を、バークシャー・ハサウェイ子会社のバークシャー・ハサウェイ・エナジーに売却すると発表した。売却額は97億米ドル(約1兆円)で、同事業の関連負債57億米ドル分も売却資産に含まれる。脱炭素化を進めるドミニオン・エナジーと、化石燃料に可能性を抱き続けるバークシャー・ハサウェイとの姿勢の違いが浮き彫りとなった。
ドミニオン・エナジーは、バージニア州に本社を置く全米有数の電力・エネルギー会社で、ニューヨーク証券取引所に上場している。主力事業の一つ発送電では、バージニア州とノースカロライナ州北東部、サウスカロライナ州で合計380万世帯に電力を供給。もう一つの主力事業はガス輸送・貯蔵と小売で、保有しているガスパイプラインは総長1.7万km、オハイオ州、ユタ州、ノースカロライナ州、ウェストヴァージニア、ワイオミング州、アイダホ州の300万世帯にガスを供給している。
ドミニオン・エナジーは2月、2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)、及びその実現方策の一つとしてガス事業でのメタンガス漏出を2030年までに2010年比65%減、2040年前に80%減を宣言。同社は以前には、2050年までに発電での二酸化炭素排出量を2005年比80%減、2030年までに天然ガス事業でのメタンガス漏出を2010年比50%減を掲げていたが、目標を前倒し達成できそうな見通しとなり、2月にはカーボンニュートラルを全面的に目指す新計画をスタートさせた。同社は原子力発電所も保有しているが、近年では、太陽光発電や風力発電、農場廃棄メタンガスを活用した再生可能ガスの開発を強化している。
また、ドミニオン・エナジーが本社を置くバージニア州政府は3月、2045年までに全電源をカーボンニュートラルにする州法案可決しており、ドミニオン・エナジーは法的にも電源の脱炭素化を迫られていた。
【参考】【アメリカ】バージニア州議会、2045年までに全電源をカーボンニュートラルにする州法案可決(2020年3月14日)
今回の売却対象は、ガスパイプライン1.2万kmと255億m3のガス貯蔵設備。ドミニオン・エナジーは今回の決定の理由について、サステナビリティのためと説明。売却益推定30億米ドルは自社株買いに回すとともに、今後と15年間で、再生可能エネルギー、再生可能ガス、バッテリー、小売用のガス管工事のために550億米ドルを投資していく計画も合わせて強調した。
バークシャー・ハサウェイ・エナジーは、バークシャー・ハサウェイが90%の株式を保有。本社はアイオワ州。2014年まではミッド・アメリカン・エナジーの名で事業をしていた。
【参照ページ】Dominion Energy Agrees to Sell Gas Transmission, Storage Assets to Berkshire Hathaway Energy-- Strategic Repositioning Toward 'Pure-Play' State-Regulated, Sustainability-Focused Utility Operations
【参照ページ】Dominion Energy Sets New Goal of Net Zero Emissions by 2050
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