英機関投資家36機関は8月28日、英リシ・スナク首相に対し、公開書簡を送付。最近の英政府の方針が、カーボンニュートラルに向けた投資を遅らせるリスクがあると批判し、政策の長期的一貫性を要求した。
今回の公開書簡に署名したのは、LGPS Central、Brunel Pension Partnership、BT年金スキーム(BTPS)、USS、ジュピター・アセット・マネジメント、スコティッシュ・ウィドウズ、エイゴンUK、ロイヤル・ロンドン等、36機関。運用資産総額は1.5兆ポンド(約280兆円)。英ESG投資推進団体UK SIFが書簡をとりまとめた。
スナク政権では、政府と北海移行局(NSTA)が7月、北海での石油・ガス採掘ライセンスの申請手続きを簡素化し、第33回海洋石油・ガス・ライセンス・ラウンドでは、合計100以上のライセンスが授与される見込みと表明。2050年でも英国のエネルギー需要の約25%は石油とガスとなる予測し、英国内での石油とガスの国内生産を急速に減少させないようにすると宣言していた。
また、カーボン市場改革が遅れていることにより、英国内の二酸化炭素排出量取引市場(UK ETS)の排出量価格が、今年だけで1t当たり40.50ポンドから、22ポンドへと約42%減少しており、EU ETSで比較しても半額程度となっている状況にある。また、民間賃貸不動産の省エネ基準引上げの政策が遅延していることも批判を招いている。
今回の書簡では、英国のカーボン市場の改革、民間賃貸セクターの省エネ基準、北海での新規石油・ガスライセンスの発行計画は、全て、英国の短期及び長期の気候変動目標に対する政府のコミットメントに不確実性を投げかけていると言及。さらに、2030年までにガソリン・ディーゼル車の新車販売を段階的に廃止し、2035年にガスボイラーを段階的に廃止するという政策にも揺らぎが見えていることも指摘し、「ネット・ゼロ関連投資を遅らせる可能性があることを懸念する」と伝えた。
今回の書簡では、「投資家及び金融機関として、我々は、我々地震や投資先企業が、英国の持続可能な未来の経済に数十億ポンド規模の投資を行うためには、この課題に対する政府の長期的なコミットメントに対する信頼が必要」との立場を明確にした。また、「政府による長期的な明確化がなければ、ネットゼロ達成に必要な年間500億ポンドから600億ポンドの投資は実現しない」と警告した。
同書簡は、英政府が掲げる「革新的な英国企業やインフラに資本を誘導し、英国全体に繁栄をもたらし、生産性や賃金を向上させ、170万人のグリーンカラー雇用を創出する」ことを支持しつつ、そのためには、「英国がサステナブルファイナンスで世界をリードし、革新的な英国企業に資本を誘導し、国内全域で雇用とスキルを創出することが可能であり、またそうすべき」と伝えた。
【参照ページ】Letter from UKSIF: Finance industry warns Rishi Sunak of consequences of climate wavering
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