科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)は8月16日、2022年のモニタリング・レポートを発行。アジアでの目標承認企業が急増していると伝えた。
SBTiは、2014年に創設された際に世界100社の企業が科学的根拠に基づく削減目標を設定することを組織目標として掲げてきたが、2022年末の設定企業(金融機関含む)は1,097社にまで達した。コミットメントを提出した企業まで含めると4,230社。現在の組織目標は、2025年までに各地域及び各セクターでの目標設定もしくはコミットメント企業数を20%以上にすること。20%とした背景は、20%を超えるとクリティカル・マスを超え、それが「普通」になっていくと考えているため。
現時点での状況では、世界の時価総額全体の34%をカバーするところまできた。地域別で、S&P500では42%、FTSE100では69%、CACでは88%, DAXでは70%、FTSE MIBでは43%、S&P/TSX 60では22%、フォーチュン・グローバル500では38%となった。欧州はすでに54%となっており、北米が15%で20%を下回っている。
一方、2022年に急増したのがアジアで、地域での企業カバー率は24%にまで上昇。企業数では127%増の526社となった。そのうち日本企業が2022年単年で承認された企業が201社となり、英国の181社、米国の109社を上回って世界トップとなった。日経225企業では、目標承認済みが31%、コミットメントが9%。
目標承認上昇率では、中国が194%増で世界一。累計の目標設定及びコミットメント企業数では、英国722社、米国585社で、日本は398社で3位。中国が266社で4位となり、ドイツ246社、フランス209社を上回った。その後をインド107社、オーストラリア78社が追う。EU全体では857社。
最も新しいネットゼロ・スタンダードでの承認企業は2022年末時点で130社となり、そのうち中小企業が40%を占める。日本企業で時点までにすでに承認された企業は、ソニーグループ、三菱地所、大和ハウス工業、キリンホールディンス、資生堂、J.フロントリテイリング、TIS。加えて、中小企業カテゴリーでは、日本都市ファンド投資法人、野村不動産プライベート投資法人、ケネディクス・オフィス投資法人、日本プライムリアルティ投資法人、DBJプライベートリート投資法人、大和ハウスリート投資法人、アスエネ、ウフル、ナンバースリー、イードア、日本ゼルスが承認されている。合計で18社。
ネットゼロ・スタンダードにコミットメントを提出済みの日本企業は、味の素、アサヒグループホールディングス、イオン、ケイミュー、日本国土開発、JESグループ(ジャパンエレベーターサービスホールディングス)、岩崎通信機、伊藤忠テクノソリューションズ、飯田グループホールディングス、不二サッシ、EIZO、ベルシステム24ホールディングス、ベイカレント・コンサルティング、アズビル、アスクル、アシックス等。1.5℃目標のコミットメントと同時にネットゼロ・スタンダードのコミットメントをしている企業が多く、今後2年以内の期限までに目標承認まで進めるかどうかに注目が集まる。
【参考】【国際】SBTi、コミットメント後の目標未提出企業はリストに不名誉掲載。ウォッシュ防止(2023年8月1日)
セクター別では、目標設定及びコミットメントの企業数で、サービスセクター1,320社、製造業セクター856社、インフラセクター349社で全体の6割以上を占める。伸び率では素材セクターが160%増となり最大。一方、承認が遅いのが、発電、バイオ・医薬品・ヘルスケア、ホスピタリティの3セクター。
SBTiは、金融機関向けのネットゼロ・スタンダードのルール案も6月に公表している。パブリックコメントの受付締切は8月14日だったが、延長希望が多く、8月23日まで延長された。
【参考】【国際】SBTi、金融機関向け基準改定案発表。石炭は例外なく新規ファイナンス禁止。保険も対象(2023年6月16日)
【参照ページ】Corporate climate action accelerated in 2022, with an 87% increase in companies setting science-based targets
【参照ページ】Everything you need to participate in the extended SBTi finance public consultation
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