米大統領府(ホワイトハウス)は7月26日、石油・ガス部門でのメタン漏出を大幅に削減する政策を発表した。すでに指導しているプログラムも含め、新たに毎年1万人の新規雇用にもつなげる。
米政府は2021年11月、国連気候変動枠組条約第26回グラスゴー締約国会議(COP26)の場で、EU欧州委員会と協働で「グローバル・メタン・プレッジ(Global Methane Pledge)」を発足。2030年までに2020年比で30%のメタン削減を掲げ、105カ国・地域が発足時加盟国となった。同11月には「米国メタン排出削減行動計画」を、2022年1月には詳細アクションプランも発表している。
【参考】【国際】グローバル・メタン・プレッジ、105ヶ国・地域で正式発足。2030年に30%以上減(2021年11月3日)
【参考】【アメリカ】バイデン大統領、メタン削減計画発表。ガスから再エネ・原発への転換も(2021年11月5日)
【参考】【アメリカ】バイデン政権、メタン漏出対策で詳細政策発表。放置油井・ガス井や酪農対策でも(2022年2月6日)
今回の発表では、ホワイトハウスに「メタン・タスクフォース」の新設。イノベーションを通じたメタン漏出検知と、データの透明性に関する連邦政府機関の横断のアプローチを牽引する。検知技術では、国際宇宙ステーションにある米航空宇宙局(NASA)のEMIT測定器を通じ、人工衛星からのモニタリングを実施。石油・ガスインフラに関連する数百の大規模なメタン漏出事象が2022年中に特定された。都市部での検出では、商務省の国立標準技術研究所(NIST)の都市部GHG測定テストベッドシステムが作動している。特定されたデータは、原則公表していく考え。
市民向けの情報開示では、NASA、米環境保護庁(EPA)、NIST、米海洋大気庁(NOAA)が、オープンアクセス・ポータル「米国温室効果ガスセンター」を開発中。2023年1月には、NOAAとNISTは、石油・ガス部門からのメタン排出を含む温室効果ガス排出の測定とモデル化を長期的な目標とし、温室効果ガス・大気汚染物質排出システム(GRAAPES)も立ち上げている。
廃鉱山や廃油井・ガス井からのメタン排出の対策では、インフレ抑制法により、すでに47億米ドルの予算が投下された。特に内務省は13億米ドルを用意し、数十万ヶ所の油井・ガス井を密閉するプログラムを開始。この作業により、大幅な雇用創出が期待されており、米シンクタンクのブルー・グリーン・アライアンスは、7,250人の雇用創出効果があると見積もっている。米運輸省所管の米連邦パイプライン・危険物安全管理局(PHMSA)は、連邦政府によって規制されている米国史上初めて、全てのパイプライン、液化天然ガス、地下天然ガス貯蔵施設の事業者を一斉査察した。
またEPAは目下、新規および既存の石油・天然ガス施設からのメタン排出を制限するための最終規則を2023年中に公表することに向けた作業も進めている。同規則は、2021年11月に提案された規則案とその2022年補足文書に基づいており、石油・ガス事業者が、革新的なメタン削減技術を早期導入するよう奨励している。同規則が提案通りに最終化されれば、全ての石油・ガス施設に対し定期的な監視を義務化。スーパーエミッター(大規模排出者)向けの対応プログラムを確立し、承認された事業者が「スーパーエミッター」事象を報告、追跡調査、是正することも義務付けられる。
国際協議では、エネルギー省が中心となり、天然ガス・サプライチェーンからの二酸化炭素排出量の算定・監視・報告・検証(MMRV)の枠組みを固める国際ワーキンググループを主導する考え。
【参照ページ】FACT SHEET: Biden-Harris Administration Hosts White House Methane Summit to Tackle Dangerous Climate Pollution, while Creating Good-Paying Jobs and Protecting Community Health
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