再保険世界大手スイス再保険は、メキシコ・カンクンのカリブ湾沿岸に生息しているサンゴ礁に対する保険商品を開発していることがわかった。誕生すると、環境価値や生態系に対する世界初の保険となる。保険契約者はサンゴ礁に近い沿岸部のホテルとメキシコのキンタナ・ロー州政府。ハリケーン等でサンゴ礁が破壊された場合に、ビーチとサンゴ礁の修復用の給付金を支払う。同保険の開発では、国際環境NGOのザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)が支援し、メキシコ政府も後押ししている。
同地のサンゴ礁保護は目下、州政府の責任下にあり、自然災害時の対応は州政府が税金によって賄っている。州政府は緊急出動時の財源としてサンゴ礁破壊に備えた特別税をホテル等の事業者に課税を開始。しかし特別税の使途が不明確であるため納税者は実効性に懐疑的。そのため、ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)は、事業者が納税による政府対応ではなく、より確実性の高い保険スキームを関係者に提案していた。
カリブ海地域のハリケーンは近年、気候変動等の影響を受け規模が拡大しており、サンゴ礁保護が急務になっている。また、サンゴ礁は周辺地域の観光業にとっても貴重な資源となっており、サンゴ礁保護は自然環境保護だけでなく、経済価値も大きい。2005年にカンクンを襲った大規模台風では75億米ドル(約8,000億円)の被害をもたらした。サンゴ礁が消失すればるするほど、ハリケーンがもたらす経済的被害も大きくなる。気候変動リスクを顕著に受ける保険業界は長い間、政府に気候変動対策を訴えかけてきたが、世界の災害損害の3分の2は保険でカバーされておらず、国民が税金で負担していると言われている。スイス再保険はこの状況に目を付け、保険スキームを活用した気候変動リスク管理という新たなビジネス機会を作り出そうとしている。
検討中の保険では、約60kmのビーチと沿岸のサンゴ礁に対し、ホテル等の観光産業事業者は100万米ドルから750万米ドルの間の保険料を支払う。一方、サンゴ礁が嵐により大規模にダメージを受けた場合に、スイス再保険が保険加入者に対し2,500万米ドルから7,000万米ドルの保険金を支払う。保険金は、人工的なサンゴ礁の保護施設の建設等のサンゴ礁の修復に用いられる。また、ダメージを受けたサンゴ礁は、一旦安全な場所に移植され育成された後、もとのサンゴ礁に戻される。
すでに関係者の間では契約作業が進んでおり、今年9月にはメキシコ州政府も資金拠出のための契約を取り交わす見込み。その後、複数の契約作業を終え、順調に行けば翌2018年1月には保険が開始する。
保険スキームは、ホテル事業者にとって保険料減額ため日常的に被害を最小限に留めるようとするインセンティブも生む。同保険スキームは、経済価値が大きい他の26カ国のサンゴ礁でも活用できるのではという声がすでに出ている。さらに、マングローブや湿地帯などにも活用することが期待されている。
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