米連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、財務省通貨監督庁(OCC)は7月27日、総資産1,000億米ドル(約14兆円)以上の銀行に対し、自己資本規制を強化する方針案を発表した。11月30日までパブリックコメントを募集する。
今回の政策案は、シリコンバレー銀行、シグナチャー銀行、ファースト・リパブリック銀行が経営破綻としたことで、スイスのクレディ・スイスの信用リスクが高まり、UBSとの合併が決まったことを受け、協議を開始した対策の一環。銀行システム全体を強化することを目指している。また、バーゼルIIIの最終段階とも呼ばれるバーゼルIII合意の実施の意味合いもある。
【参考】【アメリカ】ファースト・リパブリック銀行が経営破綻。JPモルガン・チェースが資産買取り通常営業(2023年5月2日)
【参考】【スイス】クレディ・スイス、UBSと合併。AT1債市場に新たな懸念。株主も対応苦慮(2023年3月22日)
今回の規制案は、信用リスク、市場リスク、オペレーショナルリスク、金融デリバティブリスクに関連する自己資本の枠組みを標準化。さらに、特定の有価証券の未実現評価損益を自己資本比率に含めることを義務付ける。また、レバレッジの補完比率と、発動された場合には反循環的な資本バッファーの対象にもなる。
対象となる銀行は、総資産1,000億米ドル(約14兆円)以上の銀行。地域金融機関は対象外。試算では、影響を受ける銀行持株会社の普通株式Tier1資本要件は、合計で16%増加する。他方、対象となる大半の銀行は、新規制をクリアする自己資本を有しているという。
同規制案には、一定の時間的猶予を与える移行条項も盛り込まれており、大銀行は2025年7月1日から移行を開始し、2028年7月1日に完全適用となる。パブリックコメントで収集した意見やデータを踏まえ、スケジュールは最終判断する。
またFRBは別途、大規模銀行に対する資本サーチャージの計算に一定の調整を加える案も発表。こちらもパブリックコメントを募集している。同案では、銀行のシステミックリスク・プロファイルを、期末値のみではなく、通年で平均したシステミックな重要性を測定することで、サーチャージを各銀行のシステミックリスク・プロファイルにより合致することを提案している。
さらにFRBは今回、10月1日から適用する自己資本規制内容についても発表した。最低所要自己資本は4.5%を維持。ストレステストの結果から決定されるストレス資本バッファー要件は最低2.5%。グローバルにシステム上重要な銀行(G-SIBs)に対する資本サーチャージは別途毎年第1四半期に発表する。
加えて7月28日、FRB、FDIC、OCC、全米信用組合監督庁(NCUA)は、流動性リスクと危機管理計画(BCP)に関するガイダンスも改訂。預金取扱機関に対し、連銀貸出(Discount Window Lending)を緊急時資金調達計画の一部に組み込むことを勧告した。
【参照ページ】Agencies request comment on proposed rules to strengthen capital requirements for large banks
【参照ページ】Federal Reserve Board announces the individual capital requirements for all large banks, effective on October 1
【参照ページ】Agencies update guidance on liquidity risks and contingency planning
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