欧州委員会は7月6日、「2023年戦略フォーサイト報告書」を発表。社会のサステナビリティと人々のウェルビーイングを欧州の開かれた戦略的自律の中心に据えるため、10の具体的アクションを提示した。
戦略フォーサイト報告書は、欧州委員会が2020年から毎年発行。欧州委員会の優先事項、作業計画、複数年計画策定のために将来見通しを固める役割を担っている。2020年以降のテーマは、2020年が「レジリエンス」、2021年が「開かれた戦略的自律性」、2022年が「グリーン&デジタルでのトランジション」であり、いずれもその後の世界的アジェンダに大きな影響を与えた。
今回の報告書では、現状認識として、多くの課題を示した。まず、地政学的な動向が世論を形成し、気候変動やエネルギー転換等のグローバル課題に対する国際的協力が難しくなってきている中で、経済成長と資源利用のデカップリングを実現し、持続可能な生産と消費へのシフトを成功させなければならないとした。そのためには、グリーンとデジタルでの人材育成と、官民双方からの投資促進の2つが、重要な鍵を握るとした。
打ち出した10のアクションは、
- 福祉政策を刷新し、質の高い社会サービスに焦点を当てた、新たな欧州社会契約を確保する
- 開かれた戦略的自律と経済的安全保障に焦点を当て、レジリエンスのあるカーボンニュートラル経済を支持するために欧州単一市場を深化させる
- グローバルな場でのEUの提案を強化し、主要パートナー国との協力を強化する
- 持続可能な生産と消費へのシフトを支援するため、規制を強化し、バランスのとれたライフスタイルを醸成する
- 2つのトランジションに必要な資金フローを促進するため、公的行動を通じ、「投資の欧州」に向かう。
- 効率的な税の枠組みと公共支出を通じ、公共予算をサステナビリティに適したものにする
- GDPを様々な要因で調整することを含め、政策および経済指標をサステナブルでインクルーシブなウェルビーイングへとさらにシフトさせる
- 労働市場への参加を増やし、将来スキルに焦点を当てることにより、すべての欧州人がトランジションに貢献できるようにする
- 世代間の公平性を政策決定の中心に据え、民主主義を強化し、トランジションへの支援を強化する
- 準備と対応に関するEUのツールボックスを強化し、「市民予防」を市民保護で補完する
欧州委員会は今後、今回の報告書を7月10日の外相級のEU理事会に諮り、10月の非公式欧州理事会にも提示し、EU加盟国首脳級からの支持を得に行く。その後、11月には欧州議会とともに、欧州戦略・政治分析システム(ESPAS)の年次会合を共催し、各EU機関が共同作成した2024年版の国際的動向に関する報告を検証・議論し、今後の政策に盛り込んでいく。
【参照ページ】2023 Strategic Foresight Report: sustainability and wellbeing at the heart of Europe's Open Strategic Autonomy
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