年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は6月28日、「投資におけるESG及びSDGsの考慮に係る俯瞰研究に関する報告書」を発表した。ESGやSDGsに関する学術論文のメタ分析を行った。
同報告書は、GPIFが2022年3月に委託した「投資におけるESG及びSDGsの考慮に係る俯瞰研究」の成果報告書。みずほ第一フィナンシャルテクノロジーが受託していた。
今回の調査では、1991年から2023年までに発表された合計300本の論文を分析対象とした。論文選定は、被引用数の多さを軸に108本、定性的判断で107本、最新の話題の提供視点で67本、日本固有の話題を提供するかを軸に18本を選んだ。
サステナビリティ分野と投資のパフォーマンスに関する研究のうち超過リターンに関する分析は 31%と数が多く、さらに増加傾向にあった。約70%の論文が超過リターンの存在を肯定しており、その割合は近年増加していた。気候変動に特化したパフォーマンス分析では、現状では気候変動リスクは超過リターンをもたらす投資情報というよりも、満たすべきリスク制約であるという見方が強いと評価した。
リスク抑制に関する研究は、サステナビリティ分野と投資パフォーマンスに関する研究全体の6%に留まり、近年では減少傾向にあった。その中で、約90%が肯定的な結果を示していた。リスク抑制効果はシステマティックリスクと銘柄固有リスクに分解して整理され、特に近年の研究ではどちらについてもダウンサイドリスクに関する効果検証が精力的に行われていることがわかった。
エンゲージメントに関する研究は、サステナビリティ分野と投資のパフォーマンスに関する研究全体の6%に留まるが、近年は増加傾向。投資パフォーマンス影響で、否定的な結果は見られず、一部の中立的な結果を除いた約94%が肯定的な結果を示していた。
また、市場全体の底上げ効果についても、スピルオーバー効果やサプライチェーン効果により企業全体のESG意識が向上することや、マーケットリスクを抑制する効果の観点から、有効性が確認された。
気候変動緩和に関し、最小分散ポートフォリオ戦略とカーボン排出量の抑制のためのスクリーニング戦略は互いの長所を損なうことなく併用可能であることもわかった。ポートフォリオ効率性を落とさずにカーボンフットプリントを削減するポートフォリオ構築技術は、実務における幅広い活用が期待されると評価した。
【参照ページ】「投資におけるESG及びSDGsの考慮に係る俯瞰研究に関する報告書」を掲載しました。
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