欧州委員会は6月20日、戦略的産業分野へEU予算を集中投下する政策を発表した。今後、政策の迅速化のために、EU理事会と欧州議会との協議に入る。
今回発表した政策は、「欧州のための戦略的技術プラットフォーム(STEP)」。EUの既存制度を改善し、戦略的産業分野の振興に予算を振り分ける考え。予算総額の変更ではなく、予算配分の変更を打ち上げた点が大きな特徴。これにより、グリーンとデジタルでのトランスフォーメーションを通じた産業競争力強化を狙う。
集中投下額は100億ユーロ(約1.6兆円)。予算効果は1,100億ユーロ(17兆円)。具体的には、
- InvestEUに30億ユーロ。補助金割合40%とし、平均マルチプル10倍とすると、750億ユーロの予算効果
- ホライゾン・ヨーロッパに5億ユーロ。21億.3ユーロの再配分と未執行額の活用を加え、平均マルチプル5倍で130億ユーロの予算効果
- イノベーション基金に50億ユーロ。過去実績を考慮すると、200億ユーロの予算効果
- 欧州防衛基金に15億ユーロ。最大20億ユーロの予算効果
さらに、結束基金に、プレ融資と協調融資の制度を設け、EU加盟国にも再度の予算投下を奨励。STEP優先事項への再予算投下の5%毎に、189億ユーロの資金が利用可能となる。公正な移行(Just Transition)基金からも60億ユーロが支払われる。復興基金の中核を占める「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」の上限も引き上げ、InvestEUの対象分野にも予算投下を可能とした。これらも合わせると今後数年間で最大1,600億ユーロの予算効果となる見込み。
戦略的産業分野と位置づけたのは、
- ディープテック&デジタルテック:マイクロエレクトロニクス、高性能コンピューティング、量子コンピューティング、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、AI、サイバーセキュリティ、ロボット工学、5Gおよび高度なコネクティビティ、バーチャルリアリティ等
- クリーンテック:再生可能エネルギー、電力・熱貯蔵、ヒートポンプ、グリッド、非生物起源の再生可能燃料、持続可能な代替燃料、電解槽・燃料電池、炭素回収・利用・貯留(CCUS)、省エネ、水素、スマート・エネルギー・ソリューション、浄水・海水淡水化、ナノ材料、複合材料、将来のクリーン建材、重要な原材料の持続可能な抽出・加工技術等
- バイオテクノロジー:生体分子と応用、医薬品、医療技術、作物バイオテクノロジー、バイオ製造業等
【参照ページ】EU budget: Commission proposes Strategic Technologies for Europe Platform (STEP) to support European leadership on critical technologies
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