英政府は3月30日、「グリーンファイナンス戦略2023」を発表。2019年の同戦略を改訂した。2021年の国連気候変動枠組条約第26回グラスゴー締約国会議(COP26)で気候変動に関する機運は歴史的転換点を迎えたと認識。気候変動だけでなく、ネイチャーポジティブの自然資本の双方を対象とし、英国のリーダーシップをさらに確固たるものにしにいく。
【参考】【イギリス】政府、「グリーンファイナンス戦略」発表。気候変動対策で経済成長を推進。TCFDでも目標設定(2019年7月7日)
今回の戦略は、財務省、エネルギー安全保障・ネットゼロ省、環境・食糧・農村地域省、ビジネス・エネルギー・産業戦略省の4省が合同で発表したもの。グリーントランジションは、英国にとって成長の機会であり、カーボンニュートラルに関連した財・サービスの提供は2030年までに英国企業に最大1兆ポンド(約170兆円)の価値をもたらすとした。さらに、低炭素および再生可能エネルギー産業での輸出は2020年から2021年に67%増加し、全体の輸出の伸び率6%を大幅に上回ったとした。
グリーンファイナンス戦略2023年は、戦略目的として5つを掲げた。まず、英国の金融機関の成長と競争力。銀行、運用会社、ベンチャーキャピタルの全てで牽引するとした。
2つ目は、グリーン経済への投資。3つ目は、金融安定化。4つ目は、昆明・モントリオール生物多様性枠組も踏まえた自然資本金融。5つ目は、気候変動と自然資本の双方で、国際的なパートナーと協力し、世界的な金融枠組みの調整を支援し、資本需要が最も高い新興国や発展途上国への投資促進。
具体的な政策としては、あらためて金融業界主導の政策レビューを外部に委託して実施。包括的な金融政策との整合性では、金融行動監督機構(FCA)が、上場企業と大手運用会社に対し、「コンプライ・オア・エクスプレイン」ベースで移行計画の開示を要求し、移行計画タスクフォース(TPT)が開示ルール作りを担うと説明。さらに、IFRS財団の国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)の活動を引き続き支援し、最終基準が公表され次第、英国での採用是非を即検討するとした。スコープ3排出量については、自主ガイダンスとして「環境報告ガイドライン」を改訂する予定。さらに、2024年には気候変動適応に関する開示ルールも整備しにいく。
また、UKタクソノミーの策定計画も明らかにした。原子力発電を含める考えにも言及。UKタクソノミーの完成、大企業は最初2年は任意開示、3年目からは義務開示となる予定。ESG評価機関に対する規制も検討する。グリーンファイナンス教育センターも設立する。
個別分野では、エネルギー分野に関し「パワーアップ・ブリテン」を発表。重点分野として、浮体式洋上風力、原子力発電、水素、省エネ、炭素回収・利用・貯留(CCUS)の5つに言及した。2024年にセクターのロードマップを発表する。企業の気候変動と自然資本に関する研究開発では2023年4月1日から2026年3月31日まで実施する全額費用化で減税措置を採る。
グリーンファイナンスの加速では、保険会社からの資金導入を促進するための「ソルベンシーUK」規制の導入、UKスチュワードシップ・コードの見直し、労働年金省によるフィデューシャリー・デューティ(受託者責任)に関するガイダンス発行を挙げた。
国際関係では、G7、G20、「気候変動対策に取り組む財相連合」で英国リーダーシップを引き続き発揮するとともに、英国の政府開発援助(ODA)とパリ協定の整合性確保等を掲げた。
【参照ページ】Green finance strategy
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