世界保健機関(WHO)は8月24日、新型コロナウイルス感染症ワクチンの国際的な調達・分配枠組み「COVAX」に80ヶ国が参加への関心を示したことを表明した。またCOVAXに参加する製薬会社のワクチンもすでに9種が参加し、現在追加で9種が審査中であることも明らかにした。
【参考】【国際】WHO、先進国に新型コロナワクチン供給枠組み「COVAX」への参加要請。指定薬物確保でも協力を(2020年8月20日)
現在、ワクチンの確保については、各国政府の競争状態にあり、政治的・経済的影響力のある先進国が、直接製薬会社と協議を始め、個別にワクチンを確保する動きに出ている。一方、影響力の小さい国は、感染予防対策が相対的に弱くワクチンの必要性が高いにもかかわらず、確保が後回しになりやすい状況が生まれている。そのためWHOは、財政力のある国にCOVAXに参加し、国際的なワクチンの分配に自主参加するよう呼びかけている。
COVAXは、WHO、GAVI、疫病対策革新のための連合(CEPI)の3者が発足。先進国は同プログラムからワクチンを購入し、一方、後進発展途上国92ヶ国は資金援助が得られるという富の配分とワクチン普及を同時に進めるスキームとなっている。ワクチン供給は、2つのフェーズを用意しており、第1フェーズでは、全参加国に対し、人口の20%をカバーできる分のワクチンを均等に供給。第2フェーズでは、感染リスクの高い国に重点供給する。
COVAXへの参加をこれまでにWHOに伝えた80ヶ国は、自力でワクチンを購入する財政力がある国で、そのうち43ヶ国は国名公表を許可した。43カ国は、日本、韓国、シンガポール、カナダ、英国、スイス、アイルランド、ポルトガル、ルクセンブルク、チェコ、エストニア、ギリシャ、クロアチア、モンテネグロ、北マケドニア、モナコ、サンマリノ、アンドラ、ノルウェー、フィンランド、アイスランド、メキシコ、ドミニカ共和国、ブラジル、アルゼンチン、チリ、コロンビア、ベネズエラ、イスラエル、ヨルダン、レバノン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、イラク、クウェート、アルメニア、南アフリカ、ボツワナ、モーリシャス、セーシェル、ニュージランド、パラオ。これにより、後進発展途上国92カ国を含めた172ヶ国がCOVAXに参加できそうな気配が出てきた。但し、参加への関心を示した80ヶ国は、まだ正式参加を決めた段階ではないため、今後、参加を見合わせる可能性もある。
COVAXへの参加が決定しているワクチンは、疫病対策革新のための連合(CEPI)が開発資金を支援している9種のワクチン。具体的な製薬会社と臨床試験のフェーズは、
- アストラゼネカとオックスフォード大学(英国):フェーズ3
- モデルナ(米国):フェーズ3
- ノヴァヴァックス(米国):フェーズ1/2
- イノビオ・ファーマシューティカルズ(米国):フェーズ1/2
- CureVac(ドイツ):フェーズ1
- クイーンズランド大学とCSL(オーストラリア):フェーズ1
- Clover Biopharmaceuticals(中国):フェーズ1
- 香港大学(中国):前臨床
- Institut Pasteurとメルク・アンド・カンパニー(MSD)とThemis(フランス・米国・オーストリア):前臨床
また目下、審査中の9つのワクチンは、米国法人2社、中国法人2社、韓国法人1社、英国法人1社、国際チーム1社等。そのうち2つはフェーズ1の臨床試験まで進んでいる。
COVAXの運営は、CEPIが担っており、最終的に3種のワクチンの完成にまで漕ぎ着けたい考え。現状では、製薬会社の独自R&D投資以外に、政府や企業、個人、団体から14億米ドルがワクチン開発に投じられているが、それでもまだ10億米ドルの資金が必要だという。
[2020.9.6追記]
EUの欧州委員会も8月31日にCOVAXへの参加関心を表明した。
【参照ページ】172 countries and multiple candidate vaccines engaged in COVID-19 vaccine Global Access Facility
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