欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)は6月25日、新型コロナウイルス治療薬として期待されるギリアド・サイエンシズ製ベクルリー(一般名:レムデシビル)について、酸素吸入が必要な12歳以上の肺炎患者への使用を条件付きで認可する製造販売承認(CMA)を出した。CHMPとして初の推奨新型コロナウイルス治療薬となる。
【参考】【国際】ギリアド、新型コロナ治療薬レムデシビルを5社にライセンス無償提供。途上国127ヶ国向け(2020年5月15日)
CHMPは、パンデミックの状況を踏まえ、レムデシビルの新薬承認申請書(NDA)の提出日の6月5日よりはるかに前の4月30日より審査を開始。品質や製薬に関するデータ、非臨床データ、コンパッショネート使用(CU)によるデータ等を評価した。コンパッショネート使用(CU)とは、命に関わる疾患を抱えた患者の向けに例外的に効能や安全性が科学的に確認されていない未承認薬の使用を認めるもの。今回レムデシビルには、製薬会社が用意する審査用資料を、全体の完成を待たず、完成したセクションから審査する「逐次審査」を適用することで、例外的に短期間での承認となった。
同審査では、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)によるNIAID-ACTT-1試験データを参照。新型コロナウイルスでの入院患者1,000人以上を対象に、10日間治療薬の有効性評価を行った。有効性の主な測定基準は、患者の回復までの期間。
NIAID-ACTT-1試験の結果、新型コロナウイルス感染症患者にダミー薬を投与した場合、全体傾向としては、回復までに15日間要したのに対し、レムデシビルでは11日間での回復が見られた。サンプルの90%を占める重症患者では、レムデシビルで12日間、ダミー薬で18日間で回復。ただし、レムデシビル投与を開始した患者がすでに人工呼吸器または体外式膜型人工肺(ECMO)を使用していた場合には、差分が見られなかった。また、軽度から中程度の症状の患者でも差分が見られず、いずれも5日間で回復した。治療開始後28日以内に死亡した患者の割合に関するデータは、現在、最終分析に向け収集中。
CHMPは、NIAID-ACTT-1試験に加え、その他のレムデシビルに関する試験結果も参照。メリットとリスクを勘案し、綿密に監視可能な医療施設と限定した上で、酸素吸入が必要な肺炎を併発している重症患者に対するレムデシビルの使用を認めるとの結論に至った。CHMPは、同治療薬の評価にあたり、COVID-19 EMAパンデミックタスクフォース(COVID-ETF)の専門家を支援も受け、EU加盟国と欧州の医薬品規制ネットワークから高度な専門知識を収集した。
製薬会社は今後、レムデシビルの有効性と安全性を明確化するため、8月までに同治療薬の品質や死亡率に関する追加データを、12月までに同治療薬に関する研究の最終報告書を米食品医薬品局(FDA)に提出しなければならない。
【参照ページ】First COVID-19 treatment recommended for EU authorisation Share
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