米内務省は12月19日、石炭採掘が地表水や地下水に与える影響を最小限に抑えることを義務化する規則を公表した。米国では石炭採掘が、森林や河川に甚大な環境被害を引き起こしていると非難が多く、対策が求められていたが、経済界やその意を受けた連邦議員らが規制強化に反対していた。しかし今回、数年間の審議を経て、内務省地表鉱山局(OSMRE)はついに、33年間改正されてこなかった河川保護規則(Stream Protection Rule)の改正を実現させた。
今回の改正により、採掘企業は、恒久的な河川汚染、飲料水源の破壊、洪水リスクの増大、森林破壊を伴うような資源採掘が禁止される。また採掘企業には、現地の土地利用計画に抵触しない限り、採掘活動後の河川の復旧、石炭採掘地の原状回復、石炭採掘地での植林や緑化などが義務化される。さらに採掘企業がこれらの規則を遵守するよう、採掘前、採掘中、採掘後の3時点において、影響を与えるおそれのある河川の状態を計測および状況測定することも義務化される。内務省は、これら規則の制定により、石炭採掘事業者は大きな影響を受けるだろうと話している。
また内務省は、この改正による環境への影響として、2020年から2040年までの21年間で、毎年合計約35kmの河川の保全と復旧、毎年採掘地の下流水系約420kmでの水質改善、毎年採掘地約10km2の森林回復が見込む。21年間の合計では、河川水系9,600kmでの水質改善と、約210km2の森林回復が期待できることになる。水系と森林を保護することで、魚や野生生物、その他自然環境の保護にもつながっていくという。
石炭は、エネルギー源として燃焼させることによる温室効果ガス排出量の点だけでなく、採掘活動それ自体がもたらす環境破壊についても長年批判されてきている。任期満了間近のオバマ政権がまたひとつ石炭採掘を抑制する規則の制定を成し遂げたことで、石炭採掘のコストはさらに高くつくことになった。しかしながら、次期トランプ政権は環境規制を大幅に弱める姿勢を見せており、政権移譲後に「河川保護規則」が維持されるかにも関心が集まっている。
【参照ページ】Interior Department Finalizes Stream Protection Rule to Safeguard Communities from Coal Mining Impacts
【参照ページ】Building a Stream Protection Rule
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