大手機関投資家や企業らの支援を受けて化学物質の使用に関する国際的な基準策定を進めているケミカル・フットプリント・プロジェクト(以下、CFP)は6月19日、化学物質の使用・管理状況のモニタリングおよびベンチマークを可能にするChemical Footprint Project Assessment Tool(ケミカル・フットプリント測定ツール)を公表した。
同プロジェクトは環境NPOのClean Production Action、米国マサチューセッツ大学ローウェルのThe Lowell Center for Sustainable Production、そしてサステナビリティコンサルティング会社のPure Strategiesが設立した国際イニシアチブで、アビバ・インベスターズ、BNPパリバ、ボストン・コモン・アセット・マネジメント、トリリウム・アセット・マネジメント、カイザーパーマネンテ、ステープルズら数多くの大手機関投資家、企業らが署名しており、これらの機関、企業の投資資金・調達資金は合計1.1兆米ドルにも相当する。
現在世界各地で化学物質の使用に関する規制強化が進んでいるが、一方で未だに多くの企業がホルムアルデヒドや毒性タフル酸など環境や人体への悪影響が懸念される化学物質を使用し続けているのが現状だ。既に多くの企業が安全な代替物質の移行や有害化学物質の段階的廃止に自主的に取り組んでいるものの、これまで投資家や企業らはそれらの取り組みを客観的に把握、評価する透明性の高い基準を確立してこなかった。
こうした状況を受け、CFPは今回初めて世界共通でベンチマーキングが可能な化学物質の使用・管理に関するアセスメントツールを開発した。同ツールは幅広い業界の大手企業と環境NGOらの数年間におよぶ協働の上開発されたもので、評価項目は4つの分野、20の質問で構成されている。4分野は下記の通りだ。
- マネジメント:化学物質に対する方針と戦略
- インベントリ:自社製品に含まれる化学物質の把握状況
- フットプリント:自社のケミカル・フットプリント、毒性化学物質からより安全な代替物質への移行に向けた段階的取り組み状況
- 情報開示:化学物質に関する情報開示状況
CFPの特徴は、同業他社との相対評価ができ、業界内のリーダーを明らかにできる点だ。化学物質の使用に関する自己評価もできるため、製品ラインの分析への活用も期待されている。また、同ツールを活用する企業はCFPの評価を公表するか自社内にとどめるか否かを選択できる。
Clean Production Actionの共同役員を務めるMark Rossi氏は「CFPにより、投資家や調達企業、小売企業らは企業に対してより安全な化学物質の使用に取り組むよう声を上げることができる。実際に幅広い業界の大手企業らは既に彼らのステークホルダーに対し、より安全な化学物質の使用にむけた進捗の測定と改善のためにCFツールを利用するよう求めている」と語る。
化学物質の使用に関する取り組み状況を客観的に示すことができるツールがあれば、サプライヤーへの働きかけや消費者、株主とのコミュニケーションなど、幅広いステークホルダーエンゲージメントに活用することが可能だ。どこまでCFPが企業の間で普及していくか、今後の展開に注目が集まる。
【参考サイト】Chemical Footprint Project
【団体サイト】Clean Production Action
【参照リリース】‘Chemical Footprint Project' Takes First Step Toward New International Consensus
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら