米国や日本等13ヶ国政府は1月3日、紅海航行中の商船を攻撃しているフーシ派に対し、さらなる攻撃を中止するよう警告する共同声明を発表した。現在、フーシ派の攻撃により、紅海航路が大幅に混乱している。
今回の共同声明に加わったのは、米国、日本、カナダ、英国、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、韓国、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、バーレーン。
フーシ派は、イエメン北部を拠点に活動するイスラム教シーア派の一派ザイド派の武装組織。現在、首都サヌアを含むイエメン北部及び中部を実効支配している。現在の指導者は、フーシ派の初代指導者フセイン・バドルッディーン・フーシの弟アブドルマリク・フーシとみられている。フーシ派は、2023年10月のハマスによるイスラエル攻撃に端を発したパレスチナ・イスラエル戦争の後、イスラエルに関係する船舶に攻撃を行うことを表明。紅海上で船舶の拿捕や襲撃を始めた。イエメンでは、スンナ派とシーア派の代理戦争の様相も帯びており、シーア派に属するフーシ派はイラン政府が支援しているとも見られている。
フーシ派問題では、2023年11月19日、フーシ派がヘリコプターで日本郵船が英ギャラクシー・マリタイムから傭船した自動車専用船「ギャラクシー・リーダー号」を急襲し、拿捕。乗員25人を拘束した。2023年12月1日には、国連安全保障理事会議長のホセ・ハビエル・デ・ラ・ガスカ・ロペスドミンゲスが声明を発表し、フーシ派による商船襲撃を強く非難。攻撃や行動を直ちに停止するよう要求した。
12月3日には、さらに紅海南部で商船3隻が拿捕。それを受け、12月19日には、北大西洋条約機構(NATO)の他、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール等44カ国政府が共同声明を発表し、フーシ派に対し、ギャラクシー・リーダー号の乗員と船舶を直ちに解放し、同地域の重要な水路における商船への追加攻撃を停止するようあらためて要求した。さらに同日、米国防総省は、カナダ、英国、フランス、イタリア、スペイン、オランダ、ノルウェー、バーレーン、セイシェルの9ヶ国とともに、集団安全保障枠組み「プロスペリティ・ガーディアン」作戦を発動。フーシ派への反撃を開始した。
しかし、その後も、フーシ派の攻撃は止まらず、12月末には商船に対する初の対艦弾道ミサイルの使用も開始。ドローンや小型ボート等での攻撃も実行された。目下、紅海航路は、世界の穀物貿易の8%、石油海運の12%、液化天然ガス(LNG)貿易の8%を占めており、世界の海上貿易の約15%が紅海を通過している状況にある。
海運世界大手A.P.モラー・マースクに関しては、12月30日に同社のシンガポール船籍のコンテナ船「Maersk Hangzhou」がフーシ派の攻撃を受け、同船からの遭難信号で米軍ヘリコプターが出動。銃撃を受け、応戦し、フーシ派のボート3隻が沈没し、乗員が死亡。それを受け12月31日、1月2日まで紅海通航を停止を発表。さらに1月2日、時期を定めず、当面の間通航を中止すると発表した。
日本郵船、商船三井、川崎汽船の日系海運大手3社の共同コンテナ船事業会社オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)も12月20日、紅海航路を喜望峰経由に切り替える等の一時的な措置を発表している。
1月3日には、国連安全保障理事会でも再びフーシ派問題が議論された。12月30日に米軍がフーシ派ボート3隻を沈没させたことを受け、イラン政府は紅海に軍艦を派遣した模様。緊迫感は高まっている。これに伴い、海運運賃が上昇しており、エネルギー価格や食料価格の上昇が予見される。
【参照ページ】A Joint Statement from the Governments of the United States, Australia, Bahrain, Belgium, Canada, Denmark, Germany, Italy, Japan, Netherlands, New Zealand, Republic of Korea, Singapore, and the United Kingdom
【参照ページ】Security Council Press Statement on Houthi Threats to Security at Sea
【参照ページ】Joint Statement on Houthi Attacks in the Red Sea
【参照ページ】Maersk Operations through Red Sea / Gulf of Aden
【参照ページ】紅海区域の高まる緊張に対する弊社対応について
【参照ページ】Security Council meets over Red Sea attacks amid growing threat of spillover from Gaza war
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