欧州委員会は11月15日、EU域外から人材を獲得しつつ、EU域内の人材流動化を促進するための政策「スキル・人材流動化パッケージ」を発表した。EU域内で不足している職種の人材確保を急ぐ。EUは、2023年5月9日から2024年5月8日までを「欧州スキル年」と位置づけ、人材スキル開発を重視している。今回発表の政策は、今後EU理事会と欧州議会との調整に入る。
欧州委員会が11月14日に発表した調査によると、EUの中小企業にとってスキル不足が深刻な課題となっている。スキル不足と回答したのは、従業員9人以下の零細企業で53%、49人以下の小規模企業で65%、249人以下の中規模企業で68%に上る。さらに過去2年間を振り返り、零細企業の61%、中堅企業の80%%、適切なスキルを持つ人材の発掘・採用が困難と回答している。特に研究者やエンジニアが足りない。
必要としている政策支援では、零細企業では財政的インセンティブ(39%)と直接補助金(28%)が最も多かった。中堅企業ではスキルアップのための研修が38%で最も多かった。
欧州委員会の今回の政策では、グリーン&デジタル・トランジションのためには、スキル人材の獲得・開発が不可欠との認識から始まっている。
まず、EU域外からの人材獲得では、欧州委員会主導で「EUタレント・プール」を構築し、EU域内の雇用主とEU域外のタレントの人材マッチングを支援する。さらに、EU非加盟国政府と連携し、EU域外での人材開発も促進。タレント・パートナーシップのもとで技能を開発した求職者は、スキル資格を証明する「タレント・パートナーシップ・パス」を受け取り、合法的な移住が容易になる。EUタレント・プールには、EU加盟国が任意に参画する。
さらに、欧州委員会が、EU域外で発行されたスキル認証や資格のレベルを評価し、EU加盟国が迅速に承認できるようにする体制も整備する。これにより、他国の資格人材をEU域内でも早く働けるようにする。
学習移動(ラーニング・モビリティ)とは、出身国以外の国で学習活動に参加する教育者と学習者の双方を指す概念。欧州委員会は、2030年までに、移動経験の割合を、高等教育卒業生では25%以上、機会の少ない学習者では20%以上、専門学校卒業生では15%以上に引き上げることを目標として掲げている。今回、EU加盟国に対し、同目標を達成できるような国内アクションプランの策定を求めていく。
【参照ページ】Commission proposes new measures on skills and talent to help address critical labour shortages
【参照ページ】Skills shortages are a serious problem for majority of EU SMEs, Eurobarometer shows
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