米ジョー・バイデン大統領は8月22日、学生ローン負担を軽減するため、「SAVE(Saving on a Valuable Education))」プランの正式開始を発表した。連邦政府が運営する学生ローンのみが対象となる。
学生ローンに関しては、新型コロナウイルス・パンデミックによる経済的打撃により、返済に苦しむ元学生が少なくない。米バイデン政権は、以前、返済免除プログラムを発表し、個人所得が125,000米ドル以下、もしくは世帯所得が250,000米ドル以下の債務者は、10,000米ドル分の債務を帳消しにするとともに、一般的に経済的な必要性が高いペル・グラント受給者は、合計20,000米ドルの債務が帳消しにする政策を発動していた。帳消しになる債務は、今後30年間分で、4,000億米ドル(約60兆円)に上る。
しかし、連邦予算の増大を懸念する共和党が反発し、連邦裁判所に提訴。最終的に共和党派判事が多数の連邦最高裁判所は7月、連邦議会での立法を経ずに発動された同制度に関し、賛成6、反対3で、バイデン政権の越権行為とし、制度を廃止させている。連邦政府側は、2003年国家緊急事態法(HEROES法)を根拠法としていたが、連邦最高裁判所は、同法には依拠しない行為と判断。バイデン大統領は、別の手段で学生ローンの負担軽減策を打ち出すと表明していた。
今回発表された「SAVE」プランは、所得に基づく支払い能力に応じて元本と金利の返済額を決め、一定年数経過後に残債を帳消しにする従来の「REPAYE」プランの返済条件を債務者に有利に改訂したもの。学部時の学生ローンに関しては、返済額を所得の10%から5%に半減。返済が免除される低所得水準を引き上げ、1人世帯では月収概ね3,000米ドル以下、4人世帯では月収概ね6,000米ドル以下であれば、返済が免除される。免除所得水準は、調整後総所得(AGI)と、米国保健福祉省が貧困ガイドライン額として定めれている225%との差として定義された。
(出所)米教育省
加えて、上記の免除を受けている期間中は、残債に対する利子を停止。これにより雪だるま式に借入額が増えていくことも防ぐ。IDRプランでは、たとえ1学期しか学校に通わなかった人でも、残債の免除を受ける前に、すべての借り手が少なくとも20年または25年間ローンを返済することが義務付けられている。返済終了期間に関しても、従来の制度では、20年から25年の返済をすると残債が帳消しなっていたが、少額の債務者にも同様のルールが適用されていた。SAVEプランでは、元金残高が12,000米ドル以下の債務者に対しては、10年を期限とし、それ以上1,000米ドル毎に1年分が追加される方式とした。
SAVEプランでは、340万人が対象となり、債務が帳消しになる額は1,160億米ドルとなる。すでに前身の「REPAYE」プランを利用している債務者は、自動的にSAVEプランに登録され、本人が何もしなくても支払いが自動的に調整される。教育省は、民間団体と提携し、SAVEプランの認知拡大キャンペーン「SAVE on Student Debt」も開始する。
SAVEプランや前身のREPAYEプランは、返済条件が低所得者層に有利に設計されているため、高所得者層にとっては条件が悪化するケースもある。バイデン政権は、低所得者層向けに返済条件をさらに良くする一方、同プランの活用は任意とすることで、実質的に全ての所得者層が損をしない制度設計となっている。当然その分、連邦政府財政の負担は増える。
【参照ページ】FACT SHEET: The Biden-Harris Administration Launches the SAVE Plan, the Most Affordable Student Loan Repayment Plan Ever to Lower Monthly Payments for Millions of Borrowers
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