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【国際】睡眠不足の社会人が多い。企業に大きな損失。英臨床心理学カルピン教授

 アシュリッジ・エグゼクティブ・エデュケーションのヴィッキイ・カルピン教授は、近著「The Business of Sleep」の中で、「かつてないほど多くの成人勤労者が睡眠不足に陥っている」と警告した。その具体的な内容が注目を集めている。同教授は睡眠・記憶を研究対象とする臨床心理学者で、アシュリッジでは組織行動学部に所属。・今回出版した著著でも睡眠を個人的な行動であると共に社会的、組織的な行動としてアプローチしている。

 同教授は英国人が睡眠不足という流行病に罹っていると指摘し、企業が提供する健康促進プログラムに「睡眠衛生」が組み込まれて来ているにも拘わらず、睡眠不足や質の低い睡眠が、健康、記憶、意思決定、創造性、気分等への深刻な悪影響を及ぼし、経済的な損失にも繋がることに多くの人が気付いていない現代を「愚かな時代」だと断言している。

 本書がデータを引用している米国立睡眠財団(National Sleep Foundation)の2013年の調査によると、英国の成人勤労者の労働日の平均睡眠時間は平均で6時間49分で、一般的な基準点とされる7時間に近い。しかしこの中で18%の人が6時間未満がであり、21%の人が6時間以上7時間未満だったことが特に問題視されている。ちなみに同調査による日本人の睡眠時間は平均が6時間22分で、19%が6時間未満、47%が6から7時間と、英国より遥かに短い。米国人も平均が6時間31分で、21%が6時間未満、32%が6から7時間と、やはり英国より短い。

 同教授の推計によると、英国では睡眠不足による欠勤で年間20万日分に相当する労働日と367億米ドル(約3.9兆円)から500億米ドル(約5.3兆円)に相当する損失が出ているという。この金額は同国におけるGDPの1.36%から1.86%に相当する。

 さらに睡眠不足は健康面への影響も大きい。米疾病管理予防センター(CDC)は2014年に睡眠と疾患との関係を18歳以上の米国国民を対象に調査を行っている。その結果を睡眠時間が7時間以上のグル―プと7時間未満のグループに分けて統計処理を行ったところ、調査項目である心疾患、脳卒中、喘息、慢性閉塞性肺疾患、がん、関節炎、うつ病、慢性腎疾患、糖尿病の全てで7時間未満のグループの方が有意に高い有病率を示した(年齢は調整済み)。また同調査では、睡眠不足が肥満、身体不活動、喫煙、過度の飲酒とも関連性のあることが解明されている。

 睡眠不足の原因としては(シフト勤務や深夜残業等を含む)時差ぼけ、アルコール、運動、カフェイン、騒音、乳幼児、夜中の大騒ぎ、電子メディア等が挙げられる。しかし「主犯」はプレゼンティーズムを重視し、長時間勤務のカルチャーを誇り(直訳すると名誉章→名誉のバッジ)とする「組織のマッチョな姿勢」だと批判する。プレゼンティーズムとは、体調不良や病気等、仕事が十分にできない状態でも、とにかく出勤することを指し、実質的に本人にとっても組織にとってもマイナスになっている状況のことで、「疾病就業」と表現されることもある。

 質のよい睡眠をとるには、就寝の2,3時間前からはスパイスの効き過ぎた食べ物を避ける、遮光ブラインド(カーテン)やアイマスクを利用する、夕方5時以降にはうたた寝をしないといったことに加え、週末を含め毎晩ほぼ同時刻に就寝する、寝室にパソコンやスマホを持ちこまないという方法で緊張をほぐす時間の確保をルーティン化させることが効果的だという。

【参照ページ】Britons told to get a good night's sleep
【参照ページ】2013 International Bedroom Poll:Summary of Findings
【参照ページ】Sleep and Sleep Disorders:Short Sleep Duration Among US Adults

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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