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【環境】プラスチック・リサイクルの今 〜分別回収したプラスチックは「リサイクル」されているのか〜

 使い捨てプラスチックストロー廃止が世界的に広がる様子が日本でも話題になることが増えてきました。所謂「廃プラ」が海洋プラスチックごみの大きな原因となり、また陸上でもごみ問題が大きな公害となってきているためです。一方で、日本では、プラスチック用のごみ箱が設置されていたり、家庭用ごみでもプラスチックごみの分別回収が実施されている自治体も増えてきます。先行して始まった缶やビンの分別回収では、缶やビンが素材としてリサイクルされています。一方、ペットボトルを含めプラスチックごみは、素材としてリサイクルされているとのはごく一部。ほとんどは人々がイメージするような「リサイクル」はされていません。今回は、プラスチック・リサイクルの現状を見ていきましょう。

日本の廃プラスチック量


(出所)プラスチック循環利用協会

 図の青のラインが、日本でのプラスチック生産量です。毎年約1,000万t生産されています。一方、廃プラスチックもほぼ同量の899t。そのうち企業等の事業活動から出る産業廃棄物廃プラスチックが約500万t、家庭から出る一般廃棄物廃プラスチックが約400万tです。日本の過去15年間のごみの総量は、産業廃棄物はほぼ横ばい、一般廃棄物は約20%減という状況なのですが、廃プラスチックのみでは、産業用も一般用も10%減。特に2010年以降では微減という状況です。

日本の廃プラスチック量の内訳


(出所)プラスチック循環利用協会

 廃プラスチックの内訳では、包装・容器系が45.3%と約半数を占めています。残りは電気・電子部品系20.2%、建材7.0%、衣類・家具・玩具系6.7%。素材別では、ビニール袋やラップ、食品トレイ、シャンプーボトル等の原料のポリエチレン(PE)が最も多く33.0%。ストロー、電子機器の筐体、透明フイルム等の原料のポリプロピレン(PP)が22.4%。プラモデルやスーツケース、家具等の原料のポリスチレン類が12.2%。ホース、パイプ等の塩化ビニル樹脂(AVC)が7.7%。その他樹脂が24.7%で、この中にペットボトル原料のポリエチレンテフタレート(PET)も含まれます。

廃プラスチックのリサイクル手法

プラスチックのリサイクル方法は、「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」の3つに分けられます。

  • マテリアルリサイクル:廃プラスチックを粉砕した後に溶解し、同じ化学物質のまま再び成形し製品にする
  • ケミカルリサイクル:廃プラスチックを化学的に分解し、原料やモノマーに還元。再び製品加工したり、他の用途として用いる
  • サーマルリサイクル:廃プラスチックを焼却し、熱エネルギーとして回収。発電や温水燃料等に用いる


(出所)プラスチック循環利用協会のデータを基に筆者作成

 日本での廃プラスチック・リサイクル率は、現在84%。そのうちサーマルリサイクルが58%(517万t)と大半を占めています。過去推移でも、「単純焼却・埋立」からサーマルリサイクルへのシフトが進んできたことがわかります。ケミカルリサイクルはほぼ横ばいで、わずか4%(36万t)。マテリアルリサイクルは23%(206万t)ですが、そのうち国内でリサイクルされているものは68万tとわずか8%で、残りの138万t(15%)は海外への輸出。海外輸出先の多くは中国で、マテリアルリサイクル用途として輸出されていますが、投棄されているものが多いのが現状です。

 続いて、各リサイクル手法の詳細を見ていきましょう。

 マテリアルリサイクルは、廃プラスチックを8mm角ほどに粉砕した「フレーク」や、廃プラスチックを溶かして小さな粒状に加工した「ペレット」と呼ばれるものにされた後に、再び成形加工されていきます。

 最もマテリアルリサイクルされているものは、ペットボトルで206万tのうち50万tを占めています。残りは包装用フィルムや家電等。また、マテリアルリサイクルで再生されたプラスチックは、必ずしもリサイクル前と同じ製品に戻るわけではなく、容器、ベンチ、プラスチックカード、下敷き、ごみ箱等幅広い用途で使われています。

 マテリアルリサイクルを実施するための肝は、分別回収です。マテリアルリサイクルは、そのまま原料を活かしたままリサイクルをする手法のため、異物が混入するとリサイクルが難しくなり、一方、均一の廃プラスチック材料になればなるほどリサイクルしやすくなります。そのため、マテリアルリサイクルされやすいものは大きく3つに限られます。まず、産業廃棄物系の廃プラスチック。事業社により排出される廃プラスチックは、同一素材同一製品のものが多いのが特徴です。もう一つが、家電リサイクル法で分別回収されている家電。最後が、容器包装リサイクル法(容リ法)により、分別回収が行き届いてるタイプの一般廃棄物で、ペットボトルが代表例です。しかし、異物が混入するものは適さないため、残飯や油ものが付着したプラスチックボトルは、マテリアルリサイクルされていません。

 マテリアルリサイクルには欠点もあります。マテリアルリサイクルされたものを「再生プラスチック」、そうでないものを「バージン・プラスチック」と言いますが、バージン・プラスチックに比べ、再生プラスチックは、品質が劣化します。専門的には、分子切断のような一次構造の劣化や、高次構造の分子配列の劣化が起こるため、何度もマテリアルリサイクルをすると、製品の強度等が落ちてしまいます。そのため、再生プラスチックには継続性に難点があります。

ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルは、非常に幅広い概念で、化学的に分解し、原料を活用する手法は全てこの範疇に入ります。

  • 原料・モノマー化:化学的に廃プラスチックを還元し、再度プラスチック製品にする。基本的に品質劣化がない。
  • 高炉・コークス炉原料:プラスチックに炭素が含まれていることに着目し、製鉄高炉でコークスに一部混入させて燃焼使用する
  • ガス化:廃プラスチックを水素、メタノール、アンモニア、酢酸等の化学工業原料に分解する
  • 油化:高分子状態の廃プラスチックを石油に近い低分子状態に還元する

 ケミカルリサイクルは、廃プラスチックの分子を分解し、原料に近い状態に戻して活用する手法です。そのためえ、工場での分解プロセスに大きなコストが発生し、まだ現状では採算が難しい状態です。ガス化や油化の技術は2000年代に日本でも技術的に確立されましたが、不採算により事業撤退。原料・モノマー化もペットボトルを中心に実用化が進みましたが、同様に事業撤退。現在、高炉・コークス炉原料として、製鉄所で石炭代替材として還元剤として燃焼活用されているのが主な手法です。製鉄の主要プロセスは、自然状態では酸化している鉄(酸化鉄)に、炭素を化合させることで、純粋な鉄分子を抽出し、副産物として二酸化炭素が発生するというものです。通常、炭素には安価な石炭が用いられますが、廃プラスチックに含有する炭素を、高炉の熱を利用して抽出し、酸化鉄還元用炭素として用いるというものです。そのため、人々が一般的に想像する「リサイクル」とは程遠いかもしれません。

 このように、将来期待される原料・モノマー化については、マテリアルリサイクルと異なり品質劣化しないという利点がありますが、現在開発されている主な手法が高温高圧下でないと還元できないという課題があります。そのため、リサイクルのために新たに電力等のエネルギーが必要になり、逆に環境負荷がかかってしまうためです。

サーマルリサイクル

 サーマルリサイクルは、ごみとして燃焼させた熱を有効利用しようというものです。一般的には、ごみ焼却熱利用、ごみ焼却発電、セメント原料・燃料化、固形燃料化(RPF、RDF)等があります。廃プラスチックは燃焼させると、紙や草木よりも発熱量が多く、灯油等に匹敵します。日本でも、かつては不燃物として埋立られていた廃プラスチックを、焼却炉で燃やし熱回収する取り組みが2000年頃からスタート。結果、「単純焼却・埋立」から「サーマルリサイクル」にシフトしてきました。ごみ発電の発電設備容量も、2003年度の1,441MWから2016年度には1,981MWまで伸長しました。こちらも同様に人々がイメージする「リサイクル」からは程遠いかもしれません。

 廃プラスチックを燃焼させることについては、ダイオキシン問題が話題となりました。現在は、焼却炉の排ガスフィルターでの有害物質除去が進み、ダイオキシン類の排出量も1997年の6,500g-TEQ/年から、2015年はわずか43g-TEQ/年へと大幅に状況が改善しています。

まとめ

 日本での廃プラスチックの有効利用率は84%まで上がりました。しかし実態としては、人々がイメージしている「リサイクル」とは大きく乖離しています。市民がプラマーク等を識別し分別回収の努力をしているもののうち、国内でマテリアルリサイクルされているものはわずか8%。海外輸出されているものが15%で、中国が今年から輸入を禁止した結果、東南アジア等に流れているようです。残りの61%のほとんどは、ケミカルリサイクルとして製鉄所で、サーマルリサイクルとしてごみ焼却施設で燃焼されています。

国際比較


(出所)プラスチック循環利用協会

 これまで紹介した「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」は、実は日本での呼び方で、海外では違う言葉を用いています。マテリアルリサイクルは「メカニカルリサイクル」、ケミカルリサイクルは「フィードストックリサイクル」。サーマルリサイクルは、「エネルギーリカバリー(エネルギー回収)」の用語となっており、もはや「リサイクル」という単語は付いていません。

米国



(出所)EPA

 米国の特徴は、ほとんどの廃プラスチックが埋め立てられているという点です。焼却もされずに埋立場に捨てられている状態で、日本の1980年代までの状況と言えます。最近ではようやく、エネルギー回収やリサイクルも進んできましたが、非常に遅れている、もしくは国土が広大な米国ならではの危機感の薄さと言えます。

欧州


(出所)Plastic Europe

 欧州の特徴は、埋立が27.3%と米国より遥かに低く、エネルギー回収も41.6%と日本より低く、リサイクルが31.1%と高い点にあります。

 欧州の国別では、廃プラスチックの埋立が規制されている赤枠の国では、エネルギー回収が進んでいることがわかります。このうち、エネルギー回収からリサイクルへのシフトをしていこうというのが、昨今のEU加盟国や欧州委員会の取り組みです。グローバル企業も、その動きを強く後押ししています。

【参考】プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識2018

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 使い捨てプラスチックストロー廃止が世界的に広がる様子が日本でも話題になることが増えてきました。所謂「廃プラ」が海洋プラスチックごみの大きな原因となり、また陸上でもごみ問題が大きな公害となってきているためです。一方で、日本では、プラスチック用のごみ箱が設置されていたり、家庭用ごみでもプラスチックごみの分別回収が実施されている自治体も増えてきます。先行して始まった缶やビンの分別回収では、缶やビンが素材としてリサイクルされています。一方、ペットボトルを含めプラスチックごみは、素材としてリサイクルされているとのはごく一部。ほとんどは人々がイメージするような「リサイクル」はされていません。今回は、プラスチック・リサイクルの現状を見ていきましょう。

日本の廃プラスチック量


(出所)プラスチック循環利用協会

 図の青のラインが、日本でのプラスチック生産量です。毎年約1,000万t生産されています。一方、廃プラスチックもほぼ同量の899t。そのうち企業等の事業活動から出る産業廃棄物廃プラスチックが約500万t、家庭から出る一般廃棄物廃プラスチックが約400万tです。日本の過去15年間のごみの総量は

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 使い捨てプラスチックストロー廃止が世界的に広がる様子が日本でも話題になることが増えてきました。所謂「廃プラ」が海洋プラスチックごみの大きな原因となり、また陸上でもごみ問題が大きな公害となってきているためです。一方で、日本では、プラスチック用のごみ箱が設置されていたり、家庭用ごみでもプラスチックごみの分別回収が実施されている自治体も増えてきます。先行して始まった缶やビンの分別回収では、缶やビンが素材としてリサイクルされています。一方、ペットボトルを含めプラスチックごみは、素材としてリサイクルされているとのはごく一部。ほとんどは人々がイメージするような「リサイクル」はされていません。今回は、プラスチック・リサイクルの現状を見ていきましょう。

日本の廃プラスチック量


(出所)プラスチック循環利用協会

 図の青のラインが、日本でのプラスチック生産量です。毎年約1,000万t生産されています。一方、廃プラスチックもほぼ同量の899t。そのうち企業等の事業活動から出る産業廃棄物廃プラスチックが約500万t、家庭から出る一般廃棄物廃プラスチックが約400万tです。日本の過去15年間のごみの総量は

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 使い捨てプラスチックストロー廃止が世界的に広がる様子が日本でも話題になることが増えてきました。所謂「廃プラ」が海洋プラスチックごみの大きな原因となり、また陸上でもごみ問題が大きな公害となってきているためです。一方で、日本では、プラスチック用のごみ箱が設置されていたり、家庭用ごみでもプラスチックごみの分別回収が実施されている自治体も増えてきます。先行して始まった缶やビンの分別回収では、缶やビンが素材としてリサイクルされています。一方、ペットボトルを含めプラスチックごみは、素材としてリサイクルされているとのはごく一部。ほとんどは人々がイメージするような「リサイクル」はされていません。今回は、プラスチック・リサイクルの現状を見ていきましょう。

日本の廃プラスチック量


(出所)プラスチック循環利用協会

 図の青のラインが、日本でのプラスチック生産量です。毎年約1,000万t生産されています。一方、廃プラスチックもほぼ同量の899t。そのうち企業等の事業活動から出る産業廃棄物廃プラスチックが約500万t、家庭から出る一般廃棄物廃プラスチックが約400万tです。日本の過去15年間のごみの総量は、産業廃棄物はほぼ横ばい、一般廃棄物は約20%減という状況なのですが、廃プラスチックのみでは、産業用も一般用も10%減。特に2010年以降では微減という状況です。

日本の廃プラスチック量の内訳


(出所)プラスチック循環利用協会

 廃プラスチックの内訳では、包装・容器系が45.3%と約半数を占めています。残りは電気・電子部品系20.2%、建材7.0%、衣類・家具・玩具系6.7%。素材別では、ビニール袋やラップ、食品トレイ、シャンプーボトル等の原料のポリエチレン(PE)が最も多く33.0%。ストロー、電子機器の筐体、透明フイルム等の原料のポリプロピレン(PP)が22.4%。プラモデルやスーツケース、家具等の原料のポリスチレン類が12.2%。ホース、パイプ等の塩化ビニル樹脂(AVC)が7.7%。その他樹脂が24.7%で、この中にペットボトル原料のポリエチレンテフタレート(PET)も含まれます。

廃プラスチックのリサイクル手法

プラスチックのリサイクル方法は、「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」の3つに分けられます。

  • マテリアルリサイクル:廃プラスチックを粉砕した後に溶解し、同じ化学物質のまま再び成形し製品にする
  • ケミカルリサイクル:廃プラスチックを化学的に分解し、原料やモノマーに還元。再び製品加工したり、他の用途として用いる
  • サーマルリサイクル:廃プラスチックを焼却し、熱エネルギーとして回収。発電や温水燃料等に用いる


(出所)プラスチック循環利用協会のデータを基に筆者作成

 日本での廃プラスチック・リサイクル率は、現在84%。そのうちサーマルリサイクルが58%(517万t)と大半を占めています。過去推移でも、「単純焼却・埋立」からサーマルリサイクルへのシフトが進んできたことがわかります。ケミカルリサイクルはほぼ横ばいで、わずか4%(36万t)。マテリアルリサイクルは23%(206万t)ですが、そのうち国内でリサイクルされているものは68万tとわずか8%で、残りの138万t(15%)は海外への輸出。海外輸出先の多くは中国で、マテリアルリサイクル用途として輸出されていますが、投棄されているものが多いのが現状です。

 続いて、各リサイクル手法の詳細を見ていきましょう。

 マテリアルリサイクルは、廃プラスチックを8mm角ほどに粉砕した「フレーク」や、廃プラスチックを溶かして小さな粒状に加工した「ペレット」と呼ばれるものにされた後に、再び成形加工されていきます。

 最もマテリアルリサイクルされているものは、ペットボトルで206万tのうち50万tを占めています。残りは包装用フィルムや家電等。また、マテリアルリサイクルで再生されたプラスチックは、必ずしもリサイクル前と同じ製品に戻るわけではなく、容器、ベンチ、プラスチックカード、下敷き、ごみ箱等幅広い用途で使われています。

 マテリアルリサイクルを実施するための肝は、分別回収です。マテリアルリサイクルは、そのまま原料を活かしたままリサイクルをする手法のため、異物が混入するとリサイクルが難しくなり、一方、均一の廃プラスチック材料になればなるほどリサイクルしやすくなります。そのため、マテリアルリサイクルされやすいものは大きく3つに限られます。まず、産業廃棄物系の廃プラスチック。事業社により排出される廃プラスチックは、同一素材同一製品のものが多いのが特徴です。もう一つが、家電リサイクル法で分別回収されている家電。最後が、容器包装リサイクル法(容リ法)により、分別回収が行き届いてるタイプの一般廃棄物で、ペットボトルが代表例です。しかし、異物が混入するものは適さないため、残飯や油ものが付着したプラスチックボトルは、マテリアルリサイクルされていません。

 マテリアルリサイクルには欠点もあります。マテリアルリサイクルされたものを「再生プラスチック」、そうでないものを「バージン・プラスチック」と言いますが、バージン・プラスチックに比べ、再生プラスチックは、品質が劣化します。専門的には、分子切断のような一次構造の劣化や、高次構造の分子配列の劣化が起こるため、何度もマテリアルリサイクルをすると、製品の強度等が落ちてしまいます。そのため、再生プラスチックには継続性に難点があります。

ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルは、非常に幅広い概念で、化学的に分解し、原料を活用する手法は全てこの範疇に入ります。

  • 原料・モノマー化:化学的に廃プラスチックを還元し、再度プラスチック製品にする。基本的に品質劣化がない。
  • 高炉・コークス炉原料:プラスチックに炭素が含まれていることに着目し、製鉄高炉でコークスに一部混入させて燃焼使用する
  • ガス化:廃プラスチックを水素、メタノール、アンモニア、酢酸等の化学工業原料に分解する
  • 油化:高分子状態の廃プラスチックを石油に近い低分子状態に還元する

 ケミカルリサイクルは、廃プラスチックの分子を分解し、原料に近い状態に戻して活用する手法です。そのためえ、工場での分解プロセスに大きなコストが発生し、まだ現状では採算が難しい状態です。ガス化や油化の技術は2000年代に日本でも技術的に確立されましたが、不採算により事業撤退。原料・モノマー化もペットボトルを中心に実用化が進みましたが、同様に事業撤退。現在、高炉・コークス炉原料として、製鉄所で石炭代替材として還元剤として燃焼活用されているのが主な手法です。製鉄の主要プロセスは、自然状態では酸化している鉄(酸化鉄)に、炭素を化合させることで、純粋な鉄分子を抽出し、副産物として二酸化炭素が発生するというものです。通常、炭素には安価な石炭が用いられますが、廃プラスチックに含有する炭素を、高炉の熱を利用して抽出し、酸化鉄還元用炭素として用いるというものです。そのため、人々が一般的に想像する「リサイクル」とは程遠いかもしれません。

 このように、将来期待される原料・モノマー化については、マテリアルリサイクルと異なり品質劣化しないという利点がありますが、現在開発されている主な手法が高温高圧下でないと還元できないという課題があります。そのため、リサイクルのために新たに電力等のエネルギーが必要になり、逆に環境負荷がかかってしまうためです。

サーマルリサイクル

 サーマルリサイクルは、ごみとして燃焼させた熱を有効利用しようというものです。一般的には、ごみ焼却熱利用、ごみ焼却発電、セメント原料・燃料化、固形燃料化(RPF、RDF)等があります。廃プラスチックは燃焼させると、紙や草木よりも発熱量が多く、灯油等に匹敵します。日本でも、かつては不燃物として埋立られていた廃プラスチックを、焼却炉で燃やし熱回収する取り組みが2000年頃からスタート。結果、「単純焼却・埋立」から「サーマルリサイクル」にシフトしてきました。ごみ発電の発電設備容量も、2003年度の1,441MWから2016年度には1,981MWまで伸長しました。こちらも同様に人々がイメージする「リサイクル」からは程遠いかもしれません。

 廃プラスチックを燃焼させることについては、ダイオキシン問題が話題となりました。現在は、焼却炉の排ガスフィルターでの有害物質除去が進み、ダイオキシン類の排出量も1997年の6,500g-TEQ/年から、2015年はわずか43g-TEQ/年へと大幅に状況が改善しています。

まとめ

 日本での廃プラスチックの有効利用率は84%まで上がりました。しかし実態としては、人々がイメージしている「リサイクル」とは大きく乖離しています。市民がプラマーク等を識別し分別回収の努力をしているもののうち、国内でマテリアルリサイクルされているものはわずか8%。海外輸出されているものが15%で、中国が今年から輸入を禁止した結果、東南アジア等に流れているようです。残りの61%のほとんどは、ケミカルリサイクルとして製鉄所で、サーマルリサイクルとしてごみ焼却施設で燃焼されています。

国際比較


(出所)プラスチック循環利用協会

 これまで紹介した「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」は、実は日本での呼び方で、海外では違う言葉を用いています。マテリアルリサイクルは「メカニカルリサイクル」、ケミカルリサイクルは「フィードストックリサイクル」。サーマルリサイクルは、「エネルギーリカバリー(エネルギー回収)」の用語となっており、もはや「リサイクル」という単語は付いていません。

米国



(出所)EPA

 米国の特徴は、ほとんどの廃プラスチックが埋め立てられているという点です。焼却もされずに埋立場に捨てられている状態で、日本の1980年代までの状況と言えます。最近ではようやく、エネルギー回収やリサイクルも進んできましたが、非常に遅れている、もしくは国土が広大な米国ならではの危機感の薄さと言えます。

欧州


(出所)Plastic Europe

 欧州の特徴は、埋立が27.3%と米国より遥かに低く、エネルギー回収も41.6%と日本より低く、リサイクルが31.1%と高い点にあります。

 欧州の国別では、廃プラスチックの埋立が規制されている赤枠の国では、エネルギー回収が進んでいることがわかります。このうち、エネルギー回収からリサイクルへのシフトをしていこうというのが、昨今のEU加盟国や欧州委員会の取り組みです。グローバル企業も、その動きを強く後押ししています。

【参考】プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識2018

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